平成14年度採用研究者[2期生]

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岩本 武明

東北大学大学院理学研究科 助教授

ケイ素単体表面構造をもつ配位不飽和ケイ素分子の創製

ケイ素単体表面は工業的に重要ですが、近年機能性有機材料や分子素子の基板としても注目されています。機能を持つケイ素単体表面の作成にはその構造と反応の理解と制御が重要ですが、原子・分子レベルではまだ十分なものではありません。本研究ではケイ素単体表面構造の特徴をもつ新規な配位不飽和ケイ素分子を合成します。これを用いてケイ素表面の構造と反応性を分子レベルで理解し、さらに新しいケイ素表面修飾反応につながる反応を探索します。

 

垣内 史敏

慶応義塾大学理工学部 教授

触媒的不活性炭素結合切断反応の設計・開発・展開

炭素−水素結合は、不活性なため反応に利用することは困難です。この結合を合成反応に利用することができれば、直截的な合成手法となります。有機合成化学において重要な反応である炭素−炭素結合形成を、炭素−水素結合切断を経る触媒反応を利用して行います。特に、炭素−炭素結合生成と同時に官能基導入が行える反応系の開発を目指します。また、触媒反応の鍵中間体の構造を精密にデザインし、効率の高い触媒反応系を目指します。

 

澤村 正也

北海道大学大学院理学研究科 教授

遷移金属錯体触媒の精密組織化と応用

遷移金属錯体を固体表面状に原子レベルで精密に組織化することにより、自在設計可能な触媒活性表面を構築し、これにより多金属中心による協同的触媒作用や表面形状による分子認識を利用した反応系開発を目指します。固体表面には水素終端化シリコン表面Si(111)-Hを用い、オレフィンのヒドロシリル化反応により表面修飾を行います。

 

塩見 大輔

大阪市立大学大学院理学研究科 助教授

スピン波動関数変調型有機フェリ磁性体の開拓

分子間相互作用による「スピン波動関数の量子変調」にもとづいた、新しい分子スピニクス−分子スピンの量子化学的制御−を開拓します。安定な有機ラジカルや遷移金属イオンを超分子化学的手法によって配列制御したヘテロ分子集積系を構築し、外場(圧力や磁場)による磁気スイッチングを実験的に見出します。スピン波動関数の変調というまったく新しい動作原理による磁気分子スイッチング素子・メモリ素子の基礎の確立を目指します。

 

徳山 英利

東北大学大学院薬学研究科 教授

天然物の構造モチーフを基礎とした機能性分子の開発

本研究は、光学活性チアゾリン、インドール等の複素環の繰り返し構造により形成される構造モチーフに基づいた新規機能性分子の創製を目的としています。まず、繰り返し構造の簡便かつ一般的な合成法の行い、構築した構造モチーフを基に、基質の立体化学や高次構造を認識可能な人工酵素の創製を目指します。また、ビスインドール構造をscaffoldした、新規抗腫瘍性化合物の創製についても検討を行います。

 

中村 正治

京都大学化学研究所  教授

不飽和炭化水素類を活用する精密合成反応

手に入りやすい簡単な分子から、複雑な構造の有用分子を作り出すことが合成化学の基本です。本研究では、エチレン・アセチレン類などの有機工業化学の基本的な原料を、精密有機合成に直接活用する新規の分子変換プロセスの開発を目指します。新たな有機金属活性種を創り出すことによって、これらの不飽和炭化水素類を効率的に利用する合成反応を見いだし、貴重な化石資源の有効利用に新しい道を拓きたいと考えています。

 

西川 俊夫

名古屋大学大学院生命農学研究科 助教授

次世代型天然物合成を目指した基礎的研究

天然から発見された有機化合物(天然物)の中には、優れた生理活性を示し医薬品などへの開発が期待されながら、ごく僅かしか得られないために化学合成による供給が期待されているものが数多くあります。しかしその多くは複雑な構造のため、現在なお完全化学合成による供給が極めて困難な状況にあります。本研究では天然物合成への社会的期待に応えられるような真に効率の良い合成を実現するために必要な解決策を見出す事を目的としています。

 

 

二木 史朗

京都大学化学研究所 教授

細胞を標的とする機能性ペプチドの開発と展開

アルギニンと呼ばれるアミノ酸を多く含んだペプチドを用いて、細胞内にタンパク質や薬物を効率よく導入する方法が注目されています。様々なペプチドのデザインを通して、どのようなメカニズムでこれらのペプチドが細胞内に導入されるかを理解し、高い膜透過能を併せ持った新しい細胞内薬物導入ペプチドの開発を目指します。

 

眞鍋 史乃

理化学研究所 細胞制御化学研究室 研究員

糖鎖迅速合成と多様性指向型合成への挑戦

多様性を持つ化合物群を迅速に合成する技術をつくりだすことを目的とします。生体内で重要なはたらきを持つことが知られている糖鎖を目的化合物とし、有機化学的手法による糖鎖の迅速合成の手法を展開するとともに、それらをもとに多様性を持つ化合物を創製する技術を開発します。さらにはタンパク質阻害機能を持つ糖鎖をつくり出し、薬剤開発への第一歩とします。

 

村上 啓寿

大阪大学大学院薬学研究科 客員教授

蛋白核外移行を制御する生物活性物質の合成

細胞内の核から細胞質に移動する蛋白には、エイズウィルスやガン細胞の増殖に重要な働きをするものが知られています。これらの蛋白は細胞質が働く工場となるので、細胞質への移動を制御する物質は、人類を癌やエイズの脅威から救出する可能性を秘めています。本研究では、これまでメスの入れられていない蛋白の核外への移動制御を作用メカニズムとする新たな抗エイズ薬や抗がん剤の開発に繋がるような化合物の合成・発見を目指します。

 

森田 靖

大阪大学大学院理学研究科 助教授

スピン非局在型有機中性ラジカルの創製とその電子構造・物性の解明

常温空気中でも安定な開殻有機分子の創出は、電子構造の理解や純有機物から成る強磁性体の合成を目指した研究として大いに注目されています。我々は新しい骨格・電子系を有する安定なスピン非局在型の中性ラジカルの開発に成功し、トポロジー的対称性やレドックス状態の制御に基づく諸性質を明らかにしてきました。本研究ではさらに大きな非局在型π-スピン系を有する平面および局面構造の安定な開殻分子の合成を目指します。

 

山子 茂

京都大学化学研究所  教授

新しいリビングラジカル重合による有機ナノ分子合成

有機テルル化合物を用いるリビングラジカル重合(FERP)は、我々が最近開発した新しい重合反応系であり、極めて優れた特性を持つことがわかってきています。本研究では、この反応の高次制御を行うことで、精製するポリマーの大きさとミクロな立体構造とを精密に制御し、ひいてはナノメーターサイズのマクロな構造を制御することに挑戦します。




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