研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
高リサイクル性を有する森林資源の開発
2.研究代表者
研究代表者 小名 俊博(王子製紙株式会社 森林資源研究所 上級研究員)
3.研究概要
 ユーカリの樹木を用い、クラフトパルプでは乾湿リサイクルを繰り返すことによる品質の低下程度を、機械パルプでは色戻りの程度を、リサイクル性の指標に用いて定量した。この結果、高成長、高収率、かつ高リサイクル性のパルプ繊維を有する個体が見出された。また、近赤外フーリエ変換ラマン分光法を用いて、リサイクル性に関与している各種材特性を木粉の状態で迅速かつ非破壊的に定量する方法を確立した。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 パルプ繊維の同定Gではリサイクルによる紙の物理特性変化の同定、高白色度CTMP(メカニカルパルプ)の製造とその熱・光退色性、Py-GC(熱分解ガスクロマトグラフ)を用いたリグニンモノマー比の精密定量、ユーカリにおける細胞形態とパルプ特性の関係、選抜技術の開発Gでは近赤外光フーリエ変換ラマン分光法を用いた各種材特性の非破壊的定量、発生機構の解明Gでは植物K+(カリウムイオン)チャネルのイオン選択性、アカシア属の各種力学的性質の発現と肥大成長量など、樹齢の違いを化学的、物理的また生化学的に解析した。
 今後は選抜技術の対象を更に広げ新しい樹種の開発研究、樹齢により発生する特徴的な物質の解析、色戻りを防止する機構の解明を進める。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 これらの研究からリサイクル性指標の確立などの成果を挙げ、高収量、高成長、高リサイクル性のパルプ繊維をもつ個体を見いだすことに成功している。交配優良木の成果の確認が簡略化手法となったのは時間の関係でやむを得まい。各研究グループに研究代表者が参画しており、研究全体の進捗に効果を挙げている。オリジナリティのある良い成果を挙げている。科学的、技術的インパクトは大きい。
4−3.総合的評価
 リサイクル性の高い樹木の同定を目的とし、そのための評価指標を定め、更に非破壊で材特性を定量するための近赤外フーリエ変換ラマン分光法を開発し、広葉樹、特にユーカリの特性を用いてリサイクル性の高い個体を選抜する方法を見いだしたもので、この成果は広く他の紙パルプ材にも適用できるものと考えられる。少なくともユーカリに関しては、3年間でほぼ完成の域に達しており、アカシアについても同じ手法が適用できる見通しを得ている。総合して独創性に富む研究成果を挙げたと評価してよい。高リサイクル性を有する森林資源の開発というテーマは、グローバルに見ても重要な課題であり、今後は更に、メカニズム、例えば色戻り現象の解明、針葉樹への拡張、事業化への展開などを目指して、より使いやすく、且つより安価に利用できるシステムを開発してほしい。
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