研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
核内受容体・共役因子複合体と内分泌かく乱物質
2.研究代表者
研究代表者 名和田 新 九州大学医学部 教授
3.研究概要
 現在その内分泌かく乱作用が疑われている化合物の多くは、核内受容体と相互作用し、標的遺伝子の転写活性に影響を及ぼす事が知られている。 転写活性への影響を正確に理解するためには、核内受容体・共役因子複合体を始めとする、転写調節機構全般に対する作用を解析する必要がある。
 本研究では、内分泌かく乱物質が胎生期、出生後の高次内分泌調節機構に及ぼす広範な影響を解明する事を目標とし、核内受容体・共役因子複合体への作用を中心に、転写調節機構全般に対する作用を解析する。その結果に基づき、作用機構の観点から、内分泌かく乱物質の分類を検討する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 核内受容体・共役因子複合体を可視化する共焦点顕微鏡画像三次元構成法を確立し、内分泌かく乱物質の影響を解析する等、極めてユニークな進展が見られる。同法の応用により、内分泌かく乱物質の作用は様々であり得る事を示すと共に、有機スズの作用機構を解明する等、アンドロゲン・レセプター(AR)、アロマターゼに関する研究で国内外をリードする成果を挙げており、今後に大いに期待出来る。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 性ステロイドホルモン受容体/転写共役因子複合体の核内三次元分布解析法を確立し、鋭敏な抗アンドロゲン物質探索法である事を確認すると共に、新規抗アンドロゲン物質として3種の化合物を同定した。画像解析によるアンドロゲン様物質のスクリーニング法は、利用価値が高く、他の物質のスクリーニング法への応用が期待される。
 また、エストロゲン受容体(ER)AF-1領域に結合する新規転写共役因子を取得し、ERα、ERβの両者を活性化する化合物と、各々を特異的に活性化する化合物を同定した。内分泌かく乱物質と考えられている物質でも、その作用はまちまちであることを明らかにしてきており、今後作用の詳細が明らかにされて行くと共に、作用に基づくグループ分けが可能になる事が期待される。
 さらに、ヒト卵巣顆粒膜細胞株(KGN)を樹立し、内分泌かく乱物質のアロマターゼ活性への影響を評価した結果、転写段階で作用する有機スズ2物質を同定した。今後の展開が期待される。
4−3.総合的評価
 研究成果を挙げている点で高く評価する事では一致している。研究目的が絞り込めていないと言う意見もあるが、内分泌かく乱物質というこれまで判然としない物を扱う時には当然の事であり、寧ろ思いがけない成果を期待させるという意味で高く評価すべきであろう。
 核内受容体複合体、クロマチンとの関連で、核内 event についての新しい解釈を可能にし、近年提唱されている Transcription-splicing coupling の概念においてAR、ERが関与する事を示唆する成果を挙げており、ビンクロゾリン、ニトロフェン、ベノミル等の作用を明らかにするなど、想定外の望ましい展開となった。
 なお、多くの化合物を使用しているが、純度や、実験に当たっての安定性等に充分配慮する必要がある。
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This page updated on April 1, 2003
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