研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
内分泌撹乱化学物質の細胞内標的分子の同定と新しいバイオモニタリング
2.研究代表者
研究代表者 梅澤 喜夫 東京大学大学院理学系研究科 教授
3.研究概要
 内分泌かく乱作用の有無を調査すべき化合物は膨大な数に上り、動物を用いた確認試験の前に実施すべき、高速前試験法(High Throughput  Pre−Screening)の開発が必要である。高速前試験法としては、受容体結合能測定法等が利用されるようになっているが、リスクアセスメントをより効率的・効果的かつ包括的に実施出来る方法を開発する必要がある。
 内分泌かく乱の原因あるいは結果として、遺伝子発現の変動に加え、細胞内情報伝達過程のかく乱が注目されている。細胞内情報伝達過程は数が限られており、各々の過程の効率的な分析法を開発する事によって、内分泌かく乱物質による影響を体系的・包括的に解析出来る。
 本研究では、内分泌かく乱の影響を体系的・包括的に解析出来ると共に、高速前試験法に適した、細胞内情報伝達過程分析法の開発を目標とする。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 新しい内分泌かく乱物質スクリーニング系確立を目指す独創的なものであり、当初目標としていた細胞内情報伝達過程の多くが解析可能となっており、顕著な進捗が見られる。新規に開発した細胞内情報伝達過程 可視化プローブは、独創性、発展性が高く、分析化学に新しい光を当てたものとして注目されており、国内外からの技術引合いも多く国際的にも高いレベルにある。既に高速前試験法への適用の可能性も確かめられており、今後の有効性確認、実用化に期待が持てる。
 遺伝子発現変動解析に関しても幾つかの進展が見られる。スクリーニング系としては未確定であるものの、今後の進展が大いに期待される。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 細胞内情報伝達系解析用プローブとして開発した、cGMP可視化プローブ、Ca2+情報伝達系可視化プローブ、蛋白質リン酸化可視化プローブ、蛋白質間相互作用解析プローブ等は、何れも新規物質・新規解析手法であり、生細胞中での時間的・空間的解析を可能にするものである事が確認され、内分泌かく乱作用のノンジェノミックな細胞内変化解析を可能にするばかりでなく、環境有害物質評価法への応用を含め広く生化学分野に適用出来るものであり、インパクトは極めて高い。現在それらは世界各国の研究者によって様々な目的で使用されており、広範にわたる分野での知見が急速に蓄積するものと予想される。それらの知見を加味する事に依って、より効率的・効果的な高速前試験法がより早期に確立されるのもと期待される。
 遺伝子発現変動に関しても、WISP2遺伝子の発見・同定・測定、DNAチップによる肝細胞遺伝子発現変動解析等の基礎データが蓄積しつつあり、今後の簡便な体系的・包括的解析法開発に期待が持てる。
4−3.総合的評価
 従来の機器分析とは次元を異にした新しい分析法を開発しつつあり、現在までに得られた成果は独創的であり、満足の行くものである。
 広範な分野に適用可能な研究成果を、内分泌かく乱物質を含め、広く他の研究領域の研究者にも使用してもらうための枠組みを構築する必要があると考えられる。
 得られた成果を内分泌かく乱に係わる高速前試験法として早期に確立する為に、より一層のスピードアップと、細胞の安定性や感度の持続等のこれまでの研究に余り含まれていない分野の検討も加える事を期待する。
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