#4 COI-NEXT(共創の場形成支援プログラム)

イノベーション拠点推進部
地域共創グループ

髙野主査

2019年入職

岩瀬主査

2020年入職

久保主査

2019年入職

バックキャストによる研究開発と拠点形成を促進するプログラム

 JSTの数多くの研究支援プログラムの中でも、共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)は、最も新しいものの一つです。その大きな特色は、先端的な研究・技術シーズに基づく「シーズ指向」型のアプローチではなく、バックキャスト型(*1)の研究開発の促進を目指していること。つまり、未来のありたい社会像を先に決めて、そのために必要な産学連携の研究開発と拠点形成を推進するというプログラムです。
 イノベーション拠点推進部の久保主査は、こう説明します。
 「このプログラムでは、社会構造が急速かつダイナミックに変化するVUCA(*2)の時代において、未来のありたい社会像を掲げ、その実現のために研究開発と拠点形成を進めてもらうことを制度趣旨としています」。
 「本プログラムで掲げる『共創の場』とは、生活者・市民を含むステークホルダーや研究者・企業・地方自治体等が未来のありたい社会像を徹底議論・共有した上で、その実現に協働して取り組む『場』を指します。例えば大学が代表機関を務め、他の大学や企業、地方自治体などが集結して拠点を形成し、研究開発と拠点形成を進めていただきます」(久保)。
 前身事業の一つであるセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムがコンセプトとして掲げていた「ビジョン主導・バックキャスト型研究開発」を基軸として制度設計を行ったことから、 本プログラムの愛称を「COI-NEXT」としています。COI-NEXTはCOIプログラムと異なり、毎年公募を行ってきました。

プログラムの運営体制(令和3年4月1日時点)

※上の図は横にスワイプするとスクロールします

進行中のプロジェクト拠点(令和4年10月25日時点)

  • =共創分野・本格型
  • =共創分野・育成型
  • =地域共創分野・本格型
  • =地域共創分野・育成型
  • =政策重点分野・本格型

詳細はこちら(https://www.jst.go.jp/pf/platform/site.html

地域の社会課題の解決も重要なミッション

 久保主査は2019年の入職以来、COI-NEXTの制度設計、立ち上げなどに携わってきました。その後、岩瀬主査、髙野主査が加わり、共に同じ地域共創グループで仕事をしています。
 岩瀬主査は2020年に入職し、COIプログラムの広報担当として成果集の制作やシンポジウムの企画などを担当してきました。「COIプログラム終了にあたり、各拠点が今後も継続的に発展できるよう、蓄積している多くの成果を整理して広く周知し、さらなる産学連携の促進に貢献することを目指しました」(岩瀬)。
 髙野主査は2019年に入職して国際部で3年間、文部科学省や大使館からの問い合わせ対応、JST役員の国際会議への出席や海外要人との会合の調整、JSTの海外事務所との連絡・調整などに携わり、2022年に現部署に異動しました。「国際部での業務では、各案件の背景や目的、相手方の関心事項等を踏まえて必要な対応・調整を行うことが日々求められていたので、その都度臨機応変に対応してきた経験が自分の強みになっていると思います」(髙野)。
 COI-NEXT 地域共創分野では、地域課題(地域の社会的・経済的な課題)を、科学技術を活用して解決します。髙野主査は学生時代から地方創生に関心が高く、地域の課題に取り組む人々をプログラムの推進を通じて支援できることが喜びになっていると言います。
 「地域の範囲について、JSTからは特に指定をしていません。市町村単位や、複数の市町村にまたがるもの、都道府県単位など、拠点となるエリアはさまざまですが、時には、とある市の社会課題の解決を目指すプロジェクトに対し、市だけでなく県も巻き込んだ実施計画にした方がよいといったアドバイスをプログラムオフィサー・アドバイザーが行うこともあります」(髙野)。地域の課題を解決するためには、行政の関与が不可欠であり、地域に根付く真の課題がどこにあるのかを見定めることは重要なポイントになります。

プログラム趣旨を正確に伝え、反映してもらうための苦心

 COI-NEXTは2020年度から公募を開始しました。予算が大きく、研究分野の範囲も広く、ステークホルダーも多岐に渡るため、研究推進だけでなく、公募要領の作成や運営ルール、支援の枠組みづくりには苦労があります。
 「私は公募要領の作成をはじめとして公募選考、審査などに携わっています。まだ新しいプログラムなので確立された方針や定型的な業務がまだなく、既存の取り組みを毎回見直して改善しつつ、あるべき形を模索しながら進めています」(岩瀬)。
 応募された資料を見て初めて、プログラムの趣旨を十分に理解してもらえなかったことに気づくこともあります。
 「プログラムを運営するJSTと、情報を受け取る側の認識に食い違いが生じているわけですね。拠点の責任者であるプロジェクトリーダー(PL)がプログラムの趣旨を理解しているだけでは不十分で、周囲の研究者、自治体や企業の方々などに波及させていけるかどうかも重要です」(久保)。
 これはCOI-NEXTならではの難しさとも言えます。そもそも「ありたい社会像」は、抽象的になりやすい性格のもの。プログラムの趣旨をステークホルダーに的確に伝えるため、JSTの担当者は、文部科学省とも協働しつつ抽象的な政策意図を具体的な制度設計や公募要領に落とし込む役割を担います。
 「公募要領をあまりにも抽象的な表現にすると、いざ審査するというときに評価者がどう判断していいのかわからなくなります。審査のモノサシとなるような、具体的で明解な表現にする必要があります」(久保)。
 文章だけでは伝わりにくい部分もあるため、JSTでは説明会を開催したり、これまで採択されたケースをモデルとして紹介することもしてきました。「採択された拠点に共通するのはビジョンが明確で、具体性があることです。」(久保)。
 さらにJSTでは、採択後に評価会を行い、プロジェクトの実施中にも実施計画を見直す機会を設けています。「実施計画の練り直しは常に行っていただいています。拠点が外部のコンサルタントなどを活用して、改めて拠点構想の軌道修正をするケースもあります」(髙野)。

若手の発想やアイデアが活かされる

 JSTの仕事はプログラムや制度という“舞台”を整え、採択された研究者のパフォーマンスを最大限に引き出すことにある、と久保主査は考えています。
 「職員一人ひとりの裁量権が大きく、責任ある仕事ができること、また、科学技術の最先端を知る場に身を置いて、社会が変わる瞬間に立ち会える可能性があることが仕事のやりがいにつながっています」(久保)。
 髙野主査は、異なる意見を調整し、関係者をつなぐ役割にJSTの存在意義を感じています。「科学技術は0を1にできる強力な手段です。COI-NEXTもそうですが、特にそれを社会問題や環境問題とリンクさせる仕事に関心があります。これからも研究者と政策(立案者)の間に立ち、双方の価値観や想いを翻訳して伝えられる存在になれればと考えています」(髙野)。
 岩瀬主査は、若手でも重要な仕事を任せてもらえることに充実感を得ています。「自分の発想を仕事に反映できるのが嬉しいです。また、科学技術は次々に変化していくので飽きることがありません。JSTの仕事は多様で、ジョブローテーションもあり、ルーティン仕事にならないのも大きな魅力。好奇心旺盛で、いろいろな仕事を経験したい人にとっては居心地の良い場だと思います」(岩瀬)。
 COI-NEXTは、今後もさまざまな課題の解決を模索する社会と、最新の科学技術との間に橋をかけ、理想的な未来実現のためのプログラムとしての役割を果たしていきます。それは同時に、科学技術の新たな可能性を開くことでもあるでしょう。

(*1)ありたい社会の姿や社会ニーズから、主として科学技術が取り組むべき課題を設定、実施計画を策定して推進する手法
(*2)Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったもの。2010年頃から、従来のような予測や計画の困難な時代を表す言葉として使われている。

※所属部署および掲載内容は取材当時のものです
PAGE TOP