Project

プロジェクトの紹介
グループB

軽元素の原子核の状態を精密に解くことからスタート

グループA が実験と理論から正確に決めた三体核力のエネルギー状態(ハミルトニアン)をもとに、核子4個(ヘリウムの原子核)から10個(ホウ素の原子核)ほどの軽元素の原子核のエネルギー状態(エネルギーと運動の指向性=波動関数)を計算で精密に求めていくのが、肥山詠美子博士たちのグループB1です。

右上の図でいえば、核子たちが最も安定な状態となる、つまり原子核のエネルギーが最も低い基底状態の値を求めます。ここで使うのは「ガウス・ローブ関数展開法」。核子が5個以上集まった原子核をこの計算法で解くことは原理的には可能ですが、実際は計算量が膨大になるので、パワフルなスーパーコンピュータが必要になります。そこで、TOMOEプロジェクトではスーパーコンピュータ「富岳」や量子コンピュータを駆使してこの問題を解決すべく、理論物理と計算科学の専門家がタッグを組んで挑戦しています。

「計算による数値実験で、原子核のすべての状態を求められるようなインターフェースの開発を目指したい」というのが肥山博士の思いです。

重い元素の原子核の状態を明らかにする

肥山グループからのデータを受けて、核子56個の鉄、さらにより重い元素に至る原子核の状態を計算で求めていくのが、中務孝博士たちのグループB2です。ここで使うのは「密度汎関数法」。核子の密度がキーファクターで、これが分かれば基底状態の原子核のエネルギー、密度分布、半径などが求められます。

密度汎関数法は電子の多粒子系への応用から始まり、核子の多粒子系へ適用されていったので、軽元素の原子核ほど精度が落ちてしまうという課題がありました。肥山グループによる精度の高い軽元素の原子核の計算結果が、密度汎関数の改良を図る指標になるのです。反対に、原子核が重いときには、密度汎関数でどんどん理解を進めていけることになります。

「やがては、超高密度の謎の天体といわれる中性子星で三体核力がどのように効いているのかも明らかにできるでしょう。軽元素から中性子星まで一気通貫で研究できるのが理論の面白さです」と中務博士。

さらに中務グループでは、基底状態だけでなく、エネルギーがより高く励起した状態の原子核も密度汎関数によって求めています。右下の図のピエロ同士が離れている場合で、その結果は、原子核での反応を扱う緒方一介博士たちのグループB3へ渡します。

原子核反応を計算で予測する

原子核に外から粒子が入ってくると、原子核の中の陽子や中性子をたたいて散らしたりします。具体的にどんな反応が起こり、エネルギー状態がどうなるかを、緒方一介博士たちのグループB3は計算して予測します。その結果は、核データとして原子力発電や核医学などに応用されたり、宇宙の元素合成の研究に使われます。

原子核反応はさまざまで、あまり複雑にならないもの、散乱をくりかえして非常に複雑になるもの、その中間のものと、大きくは三つに分けられます。複雑でないものと非常に複雑なものとの反応時間の差は7桁、1秒と1年もの隔たりに相当します。

原子核反応が複雑でないものについては、二体核力では理論モデルがほぼ整備されています。反応が非常に複雑なものに関しては統計学的に取り扱います。中間にあるものについてはまだ確定したモデルができておらず、緒方グループでは「多重散乱理論」を用いて散乱のプロセスを段階ごとに切り分け、計算できる方程式に書き換えるという取り組みを行っています。

三体核力を考慮した原子核反応の場合は二体核力より複雑にはなりますが、「その影響が励起準位の並び方などの核構造に集約されると考えれば、肥山・緒方グループの三体核力での結果を反応プロセスに取り込むことで、反応に対する影響がきちんと把握でき、モデルの置き換えで可能となるのではないか」と、緒方博士は考えています。

また現在、日本の最大の核データベースであるJENDL-5(日本原子力研究開発機構による「評価済核データライブラリ」)は、CCONEという計算プログラムシステムを基にしており、複雑な反応に対しては実験結果をモデルパラメータを用いて説明しています。この核データと整合性を図ることも、緒方グループの研究の重要なポイントになります。

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