村田脂質活性構造プロジェクト

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プロジェクト概要

研究領域

ヒトを構成する細胞の一つひとつは、外部と内部を隔てる膜に包まれています。この膜は脂質二重層と呼ばれる構造を取っており、構成成分の多くは脂質 であることが知られています。この脂質の機能を詳細に解析するためには生体内で活性を保った状態の脂質の構造を調べる必要がありますが、タンパク質と相互作用している脂質の結晶化が困難であること、また極低温下での測定では常温下の姿を捉えられないことが従来のX線結晶構造解析法だけでは解決できない問題となっています。それを解決すべく我々のプロジェクトでは、新たな手法の開発も含め、固体NMR、超精密X線結晶構造解析そして計算科学や精密有機合成化学など最先端の技術を駆使し研究を行っています。それら得られた結果を総合的に解析し、膜タンパク質と周辺脂質の構造を推察したいと考えています。これはあたかも窓枠の形から窓の形を予想するようなものであり、これまで構造決定が困難であった膜タンパク質の構造を知る新しい手法の創出となります。  

具体的な戦略として我々は、まず脂質二重膜を溶媒のような二次元流体としてではなく、生体分子複合体の構成要素という視点から捉え直し、立体構造と分子間相互作用の精密解析を通じて、膜脂質機能の分子基盤の解明に取り組んでいます。そのためには、脂質二重膜自体の分子基盤(マイクロドメイン)と明らかにすることに加えて、タンパク質と特異的に結合している脂質性リガンド分子(タンパク質内部脂質)、および膜構成成分でタンパク質構造の安定化に寄与している脂質分子(膜タンパク質周辺脂質)が関わる相互作用の解明をおこなっています。現在までに、幾つかの興味深い結果が得られています。 詳細は、研究成果をご覧ください。

本研究領域は脂質分子の構造解析を通じて、機能分子である膜脂質や膜タンパク質の構造や動態を解明するための学術的基盤を作ることを目指しており、JST戦略目標「生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出」に資するものと期待されます。