羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞)は、日本の女性研究者のより一層の活躍推進に貢献することを目的に、国際的に活躍が期待される若手女性研究者に贈られる賞です。本賞を創設したJSTと駐日ポーランド共和国大使館は、5月17日に第1回受賞者を発表し、授賞式を行いました。
翌5月18日の受賞記念講演会では、それぞれの研究内容だけではなく将来に向けた展望などが語られており、受賞者をよく知っていただくことができます。続くパネル討論では、女性研究者が抱えるさまざまな課題と向き合いながら、何に向かって羽ばたいていこうとしているのか。これから研究の道を進もうとしている中高生の皆さんや、今まさに課題に直面している若手研究者の皆さんにとって心に響くメッセージとして届くことでしょう。ぜひとも動画をご視聴ください。
日時:2022年5月18日(水)13:00-15:20 会場:JST東京本部 B1大会議室
受賞者の皆様には、心からお祝いを申しあげます。
JSTは、日本の研究開発、及び科学技術・イノベーション基盤の強化を目的として運営されております。その重要な戦略のひとつにダイバーシティの推進があり、女性研究者の活躍を推進する本賞の取り組みもその一環です。
私は40年程研究者として過ごしてきましたが、20代後半から30代前半の期間は自分が何をやればいいのだろうと最もスランプに陥り、辛い時期を過ごしました。今回、その年代である受賞者の自信のある姿を見て、本当にすばらしいと思うとともに今後の活躍を祈念するものです。本日は皆さんのお話を聞けることを楽しみにしています。
研究者にとっては、30代から40代前半頃までは勝負の時期に入ります。しかし、女性研究者にとってはライフイベントなどで研究を続けていくことに苦労を強いられることも多く、常々応援したいと思っておりました。そこで30代前半で活躍したマリア・スクウォドフスカ=キュリーの名前を冠した表彰で日本の若手女性研究者を支援することでポーランド大使と意見が一致し、日本電子株式会社にも協賛を頂いて、この度、第1回の受賞者が決定しました。今日は皆さんの10年後、20年後の姿を思い描きながら、お話を聞きたいと思います。
今回は非常に多数の素晴らしい方々からご応募をいただきました。私達9名の選考委員は、書類選考(一次選考)、プレゼンテーションを含む英語面接(二次選考)を通じて、実績だけでなく将来性を重視しながら、羽ばたく女性として世界的な視野で自分の研究を進めていることや人類への貢献に向けた志を考慮して、4名の女性研究者を選びました。(4名の選考理由を紹介)
日本もアメリカも若い女性が羽を広げて自由に羽ばたける世界にはなっていません。ライフイベントに差し掛かる若手女性研究者をこの賞で少しでも勇気づけられることができればと思っています。
長期に亘り選考に携わり、本日講演会にご出席の選考委員より、一言ずつコメントをいただきました。
(左より)岩尾エマはるか委員、沼田圭司委員、原田尚美委員、Tomasz M. Rutkowski委員
「皆さんは何に向かって羽ばたきたいと思っていますか?」
「どんなことが解決されれば、もっと自由に羽ばたけますか?」
これから目指すべき方向性や乗り越えなければならない課題をリアルに語ってもらい、次の世代に向けてのメッセージをいただきました。
*パネリスト: 山下真由子(最優秀賞)、木邑真理子(奨励賞)、塩田佳代子(奨励賞)、齊藤真理恵(特別賞)、岩崎明子(選考委員長)、濵口道成(JST顧問)
*ファシリテーター: 渡辺美代子 (JSTシニアフェロー)
今回、受賞者の皆さんのお話には、「おもしろい、楽しい、知りたい」という言葉が共通していたと思います。若いときには好奇心が原動力となって物事を突き詰めていくと素晴らしい研究の成果が生まれ、自信をもって話せるのだなと改めて感じました。日本には多くの素晴らしい女性研究者がいます。皆さんにはさらに成功していただくことで、女性研究者のモデルになっていただければありがたいと思います。
受賞者の皆さん、本当におめでとうございました。
*受賞記念講演会全編
0:00:33 | 開会挨拶 | 橋本和仁(科学技術振興機構 理事長) |
0:06:14 | 本賞の創設について | 濵口道成(科学技術振興機構 顧問) |
0:14:06 | 選考について | 岩崎明子氏(羽ばたく女性研究者賞選考委員会委員長) |
0:24:01 | 講演(最優秀賞) | 山下真由子氏『代数トポロジーと場の理論』 |
0:42:57 | 講演(奨励賞) | 木邑真理子氏『多波長観測で探る、ブラックホール降着流の全体像』 |
1:04:25 | 講演(特別賞) | 齊藤真理恵氏『ゲノム進化を追いかけて -日本から北米、そしてノルウェーへ-』 |
1:19:18 | 講演(奨励賞) | 塩田佳代子氏『感染症による被害を減らすために・国際保健・ワンヘルス・疫学研究』 |
1:33:34 | 選考委員紹介 | 岩尾エマはるか委員、沼田圭司委員、原田尚美委員、Tomasz M. Rutkowski委員 |
1:40:23 | パネル討論 | 『若手女性研究者、何に羽ばたく?その課題は?』受賞研究者、岩崎委員長、濵口顧問、渡辺シニアフェロー |
2:10:30 | 閉会挨拶 | 塩崎正晴(科学技術振興機構 理事) |