レポート

2018年6月24日(日)開催 女子中高生と保護者向けイベント 「進路で人生どう変わる?理系で広がる私の未来2018」 開催レポート

日時:2018年6月24日(日)13:30~16:00 ※ブースは12:30より
会場:日本科学未来館 未来館ホール・木星ルーム・土星ルーム
主催:内閣府 文部科学省 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)
協力:講談社Rikejo

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基調講演:中島さち子氏

 2018年6月24日、JSTは内閣府、文部科学省とともに、お台場の日本科学未来館に於いて、「進路で人生どう変わる?理系で広がる私の未来2018」を開催し、女子中高生とその保護者を中心に約260名が参加した。
 最初にJST副理事・ダイバーシティ推進室長の渡辺美代子が挨拶に立ち、「今、企業が欲しいのは理系女子」「新卒の社員で元気なのは女性」と現状を示した上で「このイベントは『理系に進んで欲しい』という気持ちではなく、理系に進んだ先の姿を偏見なく見ていただいた上で、皆さんに幸せな未来を掴むための選択をして欲しいと考えて企画した」と会場に集まった未来ある女子中高生達にエールを送った。

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演奏:中島さち子氏(左)鈴木広志氏(右)

 基調講演では中島さち子氏より「21世紀に必要な創造力」について、ミュージシャンと数学者の複数の視点から、実例を交えた講演が行われた。
 中島氏は国際数学オリンピックでの海外経験により、世界には自分の知らない現実がたくさんあることを知りカルチャーショックを受けたこと、数式と音楽はグローバル言語であることを実感した経験を話し、海外とも積極的に繋がって欲しいと会場に呼びかけた。また、音楽と数学といった「かけ算」が大きな創造力を生むと話した。また、民間では業界の統合や融合が進み、最先端の学問の世界でも分野の融合が進み異分野の研究者による共同論文が増えているなど、色々な境界線が無くなってきており、これは文系・理系も同じであること、また、専門性を複数持ち(ダブルメジャー)、深掘りすることによって生まれる創造性が求められていると説いた。また、米国のテレビで初めて女性大統領を演じた女優(ジーナ・デイビス)の言葉”If girls can see it, they can be it.”(見たら、なれる。)を紹介し、意識的に女性がもっと前に出ることが大事ではないかと呼びかけた。客席からの参加を募って行った実演では、「確率」を利用した数当て、エッシャーのだまし絵と数学の関係など、多様で盛りだくさんな「身近にある数学の例」を示し、「正しいと思っている事が本当に正しいのか、それを本当に理解していることが自由になること」と、数学は決して公式と計算だけのものではなく、世界のものの見方を大きく広げる自由なものであることを伝えた。

 講演の後半ではピアノ演奏を交え、バッハとモーツアルトの音楽の規則性の実演や、会場から使用する音を募ってその場での即興演奏も行われた。最後にwebサイト数理女子や、無料でスタンフォードなどの教授の授業が受けられるMOOCSなどを紹介、来場者に向けて「様々なことにチャレンジして欲しい」と温かいメッセージを送った。

 リケジョ経験談では、その後に控える座談会登壇者が順に自己紹介を兼ねてそれぞれの経験を語り、様々なリケジョの姿を会場に示した。

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リケジョ座談会:左から所千晴氏、岡島礼奈氏、島﨑妙子氏、巽瞭子氏、依田みなみ氏

 続いて行われたリケジョのホンネ座談会は早稲田大学理工学術院の所千晴教授をファシリテーターに迎えて行われ、多様な学問分野、就職、学生生活、仕事と家庭の両立など、様々な「リケジョ人生」を引き出す場となった。
 登壇者たちが理系に進んだきっかけは、元々理系科目、コンピューターや虫が好き、或いは好きな事を突き詰めていったらそれが理系だった、など全員に共通していたのが、「好きな気持ち」を大切に持ち続けていたことであった。また本人の「好きな気持ち」と共に、それを否定せずに応援する家庭環境が今に繋がっていることが浮かび上がった。
 その他、様々な事業には理系の技術やバックグラウンドが必要であり、起業するにせよ、企画するにせよ、技術が「理解できる」のは重要、と(株)ALE岡島氏、(株)ドワンゴの島﨑氏がそれぞれ声を上げた。実際に就職活動を経験したトヨタ自動車に就職して2年目の依田氏も、理系の女子を求めている企業がとても多いと肌で感じたといい、「理系だからといっても理系の仕事しか出来ないのか、ということはなく、特許や法律の部署でも理系(科学技術)の知識が必要」と実例が説明された。所教授も、学生の就職に困ったことはない、と学生を送り出す立場の実感も伝え、世の中は理系、特に女子を求めている、と締めくくった。

 最後の質問コーナーでは客席から様々な質問が飛びだした。保護者、女子中高生らからの様々な質問に、登壇者も楽しみながらビジネスや研究の最新の傾向や実体験をベースに真摯に応えた。

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登壇者と会場の皆様

  (株)ALE岡島氏は「歴史を勉強してこなかったことで今とても苦労している。勉強は分野にかかわらず全部必要。インスピレーションにも必要」と実感を込めて伝えた。また、論文は英語が多いので英語力は重要、正しく情報を伝えるために理系でも国語力は必須など、登壇者からも様々な声があがった。また、進路決定についての質問には巽氏が、オープンキャンパスで決めたと実体験を語り、併せて所教授も、後悔しないだけの情報収集はしたほうが良い、とアドバイスを送った。
 最後に所教授は、「キャリアは直列ではなく軸が何本かあってそれをかけ算していった方が面白い。決まった進路があなたの運命です!ただ、(決めるに至るまでは)自分で後悔しないだけの情報を調べて下さい」と笑顔で締めくくった。

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ブース展示の様子

 企業・大学等のブースも会場前から列が出来る程期待が大きく、時間を早めて開場することになった。会場には熱心に質問する来場者の姿があちこちに見られた。

 アンケートからは、「理系と文系に区切りがあると感じていたイメージが変わった」「文系だと思っていたことが理系で驚いた」「理系=医療と思っていたがもっと選択肢が多かった」「自分もかけ算を取り入れた人生にします!」等、理系のイメージが広がり、未来へ繋がる感想を多く得ることが出来た。参加者アンケートの結果はこちら。

来場者アンケート結果※クリックで拡大
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