レポート

ジェンダーサミット14(Gender Summit 14 Africa 2018)参加レポート

日時:2018年3月19日(月)~20日(火) 場所:ルワンダ・キガリ
参加者:ダイバーシティ推進室 川端、渡辺

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ルワンダ・キガリにて第14回となるジェンダーサミット(Gender Summit 14)が開催されました。アフリカでの開催は2015年に南アフリカで開催された第5回に続き、2回目のジェンダーサミットです。

“Climate Change through the Gender Lens: Focus on Africa”をテーマに開催された今回のサミットでは、気候変動がアフリカに与えている影響、特に農業へのインパクトと、打開策が議論されました。

主要なプログラムの一つ、パネルセッションの話題は次のような内容でした。

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「農業はルワンダの主要産業です。農業従事者の66%が女性で、その約80%が1ヘクタール以下の小規模農業です。近年の気候変動による干ばつ、洪水、暴風雨、熱波、地すべり、感染症の蔓延などはこうした小規模農家に大打撃を与えており、多くの女性が被害を受けています。気候変動を含む地球規模課題がもたらす影響に関して、男女別のデータ解析はほとんど成されていません。被害の種類、深刻度を男女別で調査分析し、アフリカ各国政府はこのデータに基づいて然るべき解決法を見出す必要があります。気候変動の最たる被害者である女性への救済が進むことを期待します」

また、JST渡辺美代子副理事・ダイバーシティ推進室長は「日本の女性研究者数は依然少なく、特に産業界における工学分野では顕著です。傾向として男子学生は工学やコンピュータサイエンスを、女子学生はライフサイエンスを志向しますが、ライフサイエンスのニーズは比較的小さい状況です。また、男女それぞれの得意分野を融合し混合チームで研究開発を進めることが効果的と言われています。例えば女性単独より男女混合の研究チームによる論文の方が被引用回数が多いという調査結果や、男性単独より男女混合チームが発明者である特許の方がより高い経済的価値を生み出しているという調査結果があります」と日本の女性研究者の状況や男女混合チームに関する調査結果などを発表しました。

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その他の登壇者からは次のような発表がありました。

  • 今やジェンダー不平等の現状打破は男性任せにしていては進まない。女性自らが声をあげ、率先して取り組むべき。同時に政策立案者は政治優先の思考から今一度「people-centered:何よりも人を優先に物事を進める概念」に回帰する必要がある。
  • 女子の理系進路選択促進にあたって教師が担う役割は大きい。教師たちは自らの影響力を自覚するとともに、無意識のバイアス排除に向けた教育を受けるべきだ。
  • 現在アフリカにはサイエンティスト、政策立案者、産業界、一般市民が対話出来るプラットフォームがほとんど存在しない。気候変動からジェンダー不平等まで、社会全体が問題意識を共有し、協働しなければ打開は難しい。
  • アフリカの女性は大学を卒業すると、専業主婦になるか、独身のままキャリアを追求するか、の二者択一を強いられる。家庭を持ち、育児が一段落した後に大学に戻り、修士・博士課程を修了すると40歳代になるが、大半の公的資金には年齢上限が設けられており、研究を続けることが困難になっている。欧米の公的資金にはこのような年齢制限は無く、結果として欧米へのブレイン・ドレインが生じている。
  • 昨年1年の間、気候変動によってもたらされたアフリカ大陸での農業被害額は25兆~30兆円に上る。農業はルワンダの主産業であり、それを支えているのが女性。また女性は農業のみならず家族を養うために飲用水を汲みに行く役割をも担っている。気候変動により干ばつが起こると、女性たちはより遠くまで飲用水を汲みに歩かねばならない。ここでも一番の被害を受けているのは女性なのだ。
  • 家庭内において女性が食卓を守り、農業を担い、家族をまとめるリーダーを務める事が出来れば、子供はおのずとそれに続く。決して容易ではないが女性が家庭でリーダーシップを取ることが社会全体をも変えるであろう。
  • 農業のみならず、食卓を支える女性は食料安全保障においても非常に敏感。日々の生活の中から気候変動を含む環境学や作物学、栄養学の知識を習得している。男性は論理先行で目の前の食卓の事など熟考することはめったに無い。サイエンスと食卓を結び付けられるのは女性が持つ特性であろう。女性はSDGsの一つである飢餓撲滅に必ずや貢献できると考える。
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自らが日々直面している諸課題が正面から提起、議論され、欧米やアジアで開催されるジェンダーサミットとは違った切迫感と熱意を強く感じました。時間を超過しても議論を続ける彼らにとって、本サミットのテーマ「ジェンダーというレンズを通して見る気候変動」は、生きる上で解決を要する課題である事を痛感しました。