11月13日(金)、サイエンスアゴラにおける一企画として、米国国立科学財団(NSF)と共同で「女性参画拡大を科学する ~科学技術における多様な人材の参加~」をテーマとするフォーラムを日本科学未来館にて開催しました。
女性の活躍が期待されていますが、科学技術の分野では女性の活用が未だ十分に進んでいないのが実情です。フォーラムでは、研究開発において女性の参画を如何にして拡大し得るかについて、米国からジェンダー研究の専門家を招いて多様な立場からエビデンスをもとに講演(前半)およびパネルディスカッション(後半)を行いました。
女性参画拡大を科学する ~科学技術における多様な人材の参加~
登壇した各氏からは、自らの実験・分析結果にもとづきダイバーシティ推進の取組が却ってジェンダーバイアス(女性はかくあるべきという意識的・無意識的な決めつけや偏見)を生み出している、これらバイアスや「ステレオタイプの脅威」(女性に対する社会の否定的な固定観念が自身もそうであると思い込ませてしまうリスク)は高校生の段階で既に形成されている、等の興味深い発表がありました。初中等教育の段階からこのような固定観念を抱かせないための取組みが必要との指摘は注目に値します。また、各方面でダイバーシティを進めるための女性優遇制度が検討されていますが、この制度によって抜擢された者は「分不相応」と見なされるとの指摘もありました。一方、ダイバーシティ推進、男女共同参画のメリットとして、経済学的視点からその有効性を論ずる発表もあり、いずれも示唆に富むものでした。
後半のパネルディスカッションでは、会場から多くの質問やコメントがありました。「理工系、なかんずく工学部への女性進学率を増やすには」という問いに対して、パネリストから「父親の影響」の大きさが示唆されました。また、ステレオタイプの形成に関して、例えばものづくりにつながり得るプラモデルは「男の子の玩具」といった思い込みの存在にも気づかされました。さらに「民間企業にて女性登用を促すには経営陣に対してそのメリットを提示することが重要」、「ダイバーシティ推進としてジェンダー平等の問題ばかりを扱うのではなく他の要素も対象に」等の指摘もあり、どれも今後の取組みに反映すべきものです。
なお、今回のフォーラムには130名余りの出席がありました。アンケートから、多くの方からテーマ、内容ともに肯定的な評価をいただきました。特に、米国の2人の講演は実証心理学や脳科学に基づくもので、その視点の新しさは多くの方から支持されています。今回の趣向のイベントに対する期待も高く、本フォーラムにて提示された課題等を踏まえ、今後の企画に役立てていきたいと思います。