レポート

ジェンダーサミット(Gender Summit 7 Europe 2015)参加レポート 2015年11月6日(金)~7日(土)ドイツ

ベルリンにて第7回目となるジェンダーサミット(Gender Summit 7)が開催されました。

ジェンダーサミット(Gender Summit 7 Europe 2015)の様子その1

今回のサミットでは「Mastering gender in research performance, contexts, and outcomes」をテーマに掲げ、ジェンダーに係る様々な課題がどのように影響しているか等についての理解の共有化が図られました。

サミットには欧州を中心に約300人が参加し、75名からテーマに係る自身の研究成果等についての発表がありました。また、ドイツ連邦教育・研究副大臣、欧州研究会議(ERC)理事長、欧州大学協会(EUA)理事長等が登壇し、基調講演を行いました。

ジェンダーの問題は男女共同参画が日本より進んでいる欧州でも未だ課題は多く、客観的なエビデンスに基づく議論が極めて重要となります。多くの登壇者から男性優位となっているジェンダーバイアスの存在が科学的に示され、これが科学研究の質にも影響していること等を指摘、さらに研究開発の効率性に対してジェンダー影響分析の手法を如何に適用するか等が話し合われました。

(発表されたトピックスの一例)

  • ① 科学におけるジェンダー主流化のための取組として、まずはジェンダーバイアスの存在を自覚した上での総合的な取組が不可欠。
  • ② 研究者自身も性差を認識した上で研究の設計を行う事が求められ始めている。既にHorizon 2020ではGender Dimension(性差の幅)を考慮した研究計画を研究者に課し、その結果、研究の質の向上が認められつつある。
  • ③ EUでは「欧州ジェンダー医療(EUGenMed)プロジェクト」の樹立に着手。「ジェンダー医療」は性差に応じて適切な医療行為を行うもので、このコンセプトはEU以外にも展開・浸透し始めている。
  • ④ 「Leaky Pipeline」問題とは、女性が上位職になるほどその数が減ってしまう現象。イタリアではGARCIAプロジェクトが立ち上がり、この問題に対する実情把握と統計指標を確立。この分析結果は問題解決の鍵になり得る。
  • ⑤ EUとスタンフォード大学の共同によるGendered Innovationプロジェクトは、様々な分野の研究・調査の中に潜在するジェンダーバイアスを顕在化させ、イノベーションにつなげる取り組み。こうした取り組みが将来的にはジェンダー平等につながり得る。
  • ⑥ ERC等の研究開発資金制度における若手女性研究者の採択率は男性より有意に低い。その背景には、評価委員会における男女構成バイアス等がある。解決にはクオーター制等の導入が有効。

なお、各セッションにおいてゲーム感覚の投票システムが導入され、主催側から提示される質問に会場の参加者が自身の携帯端末から投票、結果が即座にスクリーン表示されるという趣向がありました。参加者意見の集約・共有化、可視化ツールとして興味深く感じました。

今回のサミットでは、渡辺美代子・JST副理事(兼ダイバーシティ推進室室長)も登壇し、再来年に東京にて予定されているジェンダーサミット(GS10)を見据えて、東京のアピールとともに現時点での開催企画の一部を紹介しました。

ジェンダーサミット(Gender Summit 7 Europe 2015)の様子その2

サミットに参加して、科学技術・イノベーションにおけるジェンダー平等の必要性は衆目の一致するところでありながら、その具体的な対応策とゴール(果実)の提示は未だ模索段階にあるように感じました。ジェンダーのアンバランスに起因する種々の問題点が指摘されたものの、それらに対する解決法や成功例に関する発表は一部に限られていたようです。再来年のGS10では、より具体的なアクションやベストプラクティスを多数発信できるよう、関係機関との密な連携のもと、最新の情報を収集し企画に反映していきたく考えています。