
JSTにて育休を取得した男性お二人に、実際に育休を取得した方ならではの体験談をお伺いしました。これから取得を考えている方必見です。(文中敬称略)
-まずはどんなお仕事をされているか、簡単にご説明下さい。
古賀:産学連携展開部の古賀です。研究機関である大学と産業界の企業とが共同研究等のマッチングに繋がっていくよう、産学連携の出会いの場を創出する仕事をしています。主に「イノベーションジャパン」「JSTフェア」を担当しています。育児休業は、5ヶ月間(2014年4月~8月)取得しました。
中村:中村です。古賀さんの次に育休を取得しました。イノベーション拠点推進部で実施している産学連携拠点形成事業にて、主に、契約書のひな形や事務処理要領を作成する契約関連の業務を行っています。取得期間は3ヶ月(2015年1月~3月)でした。
-JST職員アンケート(2014年実施)にて育休に対する不安をお聞きしたところ、周囲への負担、収入面、復帰、人事評価、という点を多く回答頂きました。お二人はどうでしたか?
古賀:忙しい時期でしたので、周囲への負担は気になりました。しかし、周囲に本当に理解があり、背中を押してもらいました。齊藤執行役(当時)から「育休取らないの?そういう制度は是非使うべきだよ」と言って頂きました。上司の後押しや職場の皆さんのサポートが非常にありがたかったです。
中村:私も取得したのは1月~3月で、年度末にかけて忙しい時期なので気になりました。育休を取るかどうか悩んでいたとき、近くの先輩職員に男の育休について聞いたところとても好意的で、上司に相談後、トントン拍子で手続きが進みました。執行役から育休に入る直前に「産学連携部門で二人も実績ができてくれて嬉しい」と言って頂きました。
-収入面の不安ではどうだったでしょうか?
古賀:育休中は無給になりますが、国から給付金があり、住民税を除いて税金も免除されます。それまで給与の2分の1だったところ、その年の4月より特例措置で約3分の2の給付(※)になったこともあり、「稼ぎ頭の男が休んでしまっては!」というような心理的な負担はありませんでした。
中村:私も同じです。感覚としては元々の給与の手取額とそう変わらないように思いました。
(※パパ・ママ育休プラス制度)詳しくはこちらとこちらをご覧ください。また、制度は変更になる可能性もありますので育児休業取得時はご自身でよく御確認下さい。
-その他の点ではどうでしたか?
古賀:人事評価には不安感がありました。人事に話を聞いたうえで、最終的には「育休を取得しても基本的には不利になることはない」という結論に至りました。仮にキャリア面でデメリットの心配があったとしても、育休という経験を得るチャンスであり、充分にメリットがあると考えました。
中村:私は人事評価への不安はありませんでした。共働きでどちらかだけが負担を負う考えには違和感があったので仕事よりも家庭のことを優先させました。
-お子さんと二人きりでご自宅にいる生活はいかがでしたか。
古賀:育休前は自由な時間がたくさんあると思っていました。周囲からは、語学学習や少しだけなら仕事もできるのでは?という事も言われていましたが、実際にはそのような時間はありませんでした。想定外でした。
-近隣の方からの見られ方はどうでしたか?
古賀:近所のママさん達からの反応は良かったです。子どもを連れて遊びに行くと、子連れの男性が自分しかいないこともあり、私が育休中であることが分かると歓声があがっていました。
中村:私もそうでした。地域のコミュニティで親子が集まる場に何度も行ったのですが、たいてい男一人なのでよく感心してもらいました。とはいえ少し肩身は狭かったです。(笑)
-お休みしていたあいだ、お仕事のことは気になりましたか?
中村:実際に仕事に携わることがなくても、メールを確認するなど仕事の情報に常に触れているほうが安心できたと思います。仕事の心配もありますが、戻ってきた時に浦島太郎状態になるのが怖いという気持ちも大きかったです。PC端末1台借りることができれば随分違うかもしれません。
古賀:職場が一切仕事についての連絡を遮断するとの考えを徹底してくれたのは、個人的には本当にありがたかったです。しかし、一切遮断するよりも、PCで情報だけ見る、週1日のみ出勤するとか、そういう多様性があれば育休取得に対するハードルは下がるのではと思います。
-さて、職場復帰後、ブランクを感じられる部分はありましたか?
古賀:私が復帰した時は直後に一大イベント(イノベーションジャパン2014)があったのでブランクを感じる暇もありませんでした。ただ、それを乗り越えた後は、さほどブランクは感じませんでした。
中村:古賀さんの状況とは違いますが、私もあまり大変さは感じませんでした。
-今までの働き方と育休後の現在では働き方に変化ありましたか?
中村:以前は退社時間が早くて19時、20時21時は当たり前のような生活でしたが、今は、妻の家事負担の軽減と、帰宅前に子どもが寝てしまい会えなくて辛くなるのを防ぐ意味もあり18時過ぎには退社しています。
-育休後は業務量が減り、早い時間に退社できるようになったということですか?
中村:そうかもしれません。周囲が配慮してくれて仕事が回ってこない傾向があるかもしれません。
-古賀さんはいかがでしょうか?
古賀:私は繁忙期でもなるべく早く帰るようにしています。帰って子どもと遊ぶ、お風呂に入れるなどコミュニケーションを取るのは単純に楽しいですし、妻も子供から解放され、自分の時間が取れるので感謝されています。また、子どもが病気の時にどちらが休むか、という話になった時、以前は妻が休むのが当たり前だと思っていましたが、育休後は均等に休むという意識に切り替わりました。
-家事や育児の苦労を体験したことが大きく影響しているのでしょうか?
古賀:育児と家事の大変さについて身をもって実感したことで、妻の苦労が理解できたことが大きいと思います。
-育休後、職場における周囲からの見られ方に変化はありましたか?
中村:子育てされている職員の方からの見る目は明らかに変わったように思います。
-次の機会があったら同じように育休を取りたいと思いますか?
中村:実は迷っています。何度も仕事で周囲に負担をかけるのは申し訳ないですし、自分の都合だけではわからない事もあります。ただ、妻は育休取得を希望していますので、周囲への負担といった点で心配がなければ積極的に取りたいです。
古賀:私は取りたいと思います。実際取ってみて非常に良かったと思っています。そう思うのと同時に、子育てを言い訳に仕事をおろそかにしたくないですし、周囲からもそう思われたくないと思っています。
-そこは男女関係無く大事なポイントですね。お話を伺って、お二人が仕事も家庭も両方に責任感を持って、主体的に向き合われていることがよくわかりました。最後に育休取得の可能性がある方にメッセージを一言ずつお願い致します。
中村:育休にはメリットもあればデメリットもあって、仕事の引継が上手くいくとは限らないし、上手くいったとしても周囲の人に負担を掛けてしまうのは避けられませんから、育休取得に二の足を踏む気持ちもよくわかります。ですが、育休を取ることによって得た家事育児の経験と妻からの信頼はかけがえのない財産になりましたし、育休を取って本当に良かったと思っています。このインタビューを読まれた皆様が仕事も家庭も充実した日々を送られることを願っています。
古賀:育児に関して印象的な夫婦の会話があります。子どもが生まれて育児に掛かりっきりだった頃の妻から、「あなたにとっては毎日大変な満員電車の通勤時間かもしれないけど、それでも一人になれる時間があって、私には羨ましいわ」と言われた言葉です。まだ、育休なんて想像していないときでした。今なら妻が言わんとしていたことがわかります。育児は楽しかったですが、やはり大変でした。育休をとるかどうかは、各ご家庭の考えによると思いますが、もし検討されている方がいて、その方の疑問や不安の解消に少しでもお役に立つことができていれば幸いです。