未来を拓くイノベーションのために
もっと多様で柔軟な科学研究を実践していきます

 多様性はイノベーションに何をもたらすでしょうか。 様々な背景や考え方、異なる視点を持つ仲間との協働は、 社会の諸課題に対する適切で的を射た研究成果につながります。 また、一人一人が限られた環境の制約を越え、国内外の企業やアカデミアなど 様々な環境を経験できれば、新たな視野と知見を得ることができるでしょう。さらに、研究に集中しながらも、家事や介護、子育てなど個人の事情に合わせた働き方が可能になれば、それぞれの人の能力を十分に発揮して社会の力にすることができます。これらの利点は、研究そのものを柔軟にし、社会のニーズにより合ったイノベーションを生み出すだろうとJSTは考えます。私たちの活動は、研究者のみならず、研究活動を支える人々についても向けられています。より良い政策につなげるための国への提言も行いながら、最終的には日本社会が柔軟で暮らしやすくなり、社会全体に恩恵が生まれるよう、JSTはダイバーシティを推進し、科学技術イノベーションを促進していきます。

科学研究分野で必要な3つの多様性

人材の多様性の画像

年齢や性別、国籍の差別なく、全ての人材が互いを尊重し合い、視野を広く保ちながら力を発揮できる環境を作ります。

キャリアの多様性の画像

一人一人が持つ様々な職種や業種での経験や資質を活かし、科学技術イノベーションに貢献します。

働き方の多様性の画像

子育てや介護、転勤などに左右されない柔軟でストレスのない働き方により、個々の力を最大限に発揮できる体制を目指します。

なぜ科学技術イノベーションに人材の多様性が必要なのか

 3つの多様性の中でも、特に人材の多様性が基本となります。なぜならキャリアも働き方も人がつくり、決めるものだからです。科学技術イノベーションの推進のためには、多様な人々がそれぞれの視点を大切にして参画していくことが重要です。多様な人々の参画とは、性別、国籍、年齢、人種、障害の有無などを意識してそれぞれが関与していくことです。これまで、それぞれの違いを明確にすることは差別につながるという考えのもとに、明確にしないことが求められる傾向がありました。しかし最近では、むしろその差異を明確にして、社会のすべての多様な人々が参画することにより、誰一人取り残さない社会を目指すことが求められるようになってきました。

 多様な人々の要素として、その典型は性別です。これまでの科学技術の多くは男性によって研究開発され、女性の参画は男性に比べて少ないという事実がありました。しかし、男女が共に研究開発することにより、経済的価値の高い特許を出せるようになり、また融合領域分野の論文がより広く使われるようになることもデータで示されました。研究開発の成果がより社会の役に立つようにするためには、男女がともに研究開発することが求められようになりました。また、研究開発においては、性差による特性などの違いを明確にすることによってより広い社会の人々のためになることが求められる動きも活発になってきました。このように性別によらずすべての人が社会のあらゆる場面に参加することを「ジェンダー平等(英語ではGender Equality)」という言葉で表し、主に女性の参画を促す動きが世界で活発になっています。

性別をめぐる社会の変化と表現

 性別を表す言葉として、「ジェンダー」という言葉が近年ではよく使われるようになりましたが、ジェンダー(Gender)は社会的、文化的な性を表します。一方、生物学的な性を英語ではSexと言いますが、日本語では単に「性別」という言葉がこのSexを表す言葉と理解する見方が一般的でした。従来は生物学的性別を「男性」と「女性」だけに分けてきましたが、近年はそのどちらにも属さない性(LGBT注1)やSOGI注2))があることも明確になり、社会的にも認知されるようになりました。そして、これらについての配慮がない場合、大きな社会的問題になることが多々あります。例えば、アンケートなどで性別を質問する際、選択肢に「男性」と「女性」しかない場合は問題で、「どちらでもない」と「回答しない」が必要です。性別を回答しないという自由も人権の観点から必要ですので、「回答しない」という選択肢が必要になるのです。
 このように生物学的性と社会学的性が必ずしも明確に分けることができず、相互に影響することへの理解も深まりつつあります。そして、これらの総称として「ジェンダー」という言葉が一般的に使われるようになっています。
 また、ジェンダーを議論する際、「男性らしい(マスキュリン)」や「女性らしい(フェミニン)」という概念がジェンダー平等の弊害となるとも言われています。これらの概念は古くから長い間社会で浸透してきましたが、無意識の偏見あるいは思い込み(アンコンシャスバイアス、英語ではUnconscious Bias)によるものであり、これは男性だけにあるものではなく、すべての人に多少なりともあるものですが、それを意識することが重要です。ただし、この無意識の偏見や思い込みと性差を科学的に理解することは別のことで、思い込みをなくしながら性差を考慮することが必要とされます。

注1)LGBT:Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、身体と心の性が一致しない)、近年ではLGBT以外にQ(クエスチョニング、自分の性別がわからない・意図的に決めていない・決まっていない人)を含めてLGBTQ、I(インターセックス、一般的に定められた「男性」「女性」どちらとも断言できない身体構造を持つ人)、A(アセクシュアル:誰に対しても恋愛感情や性的欲求を抱かない人)を含めてLGBTQIAとするなど表現も多様化
注2)SOGI:Sexual Orientation and Gender Identity (性指向と性のアイデンティティ)

ジェンダーは女子・女性だけでなくさまざまな要因と関連

 ジェンダー平等は女性や女子の問題だけでなく、それを取り巻く男性と男子、障がい者、人種、民族、文化、年齢、性的区分、地域性などと関連しています。これまで大きな問題であった女性や女子に焦点が当てられてきましたが、これからは他の要因との関連も考慮しながらすべての人のためのジェンダー平等が必要であると考えられます。この問題は2017年5月に東京で開催された国際会議Gender Summit 10で議論されましたが、ここでは、ジェンダー平等の出発点である女性と女子に焦点をあてたものを「ジェンダー平等1.0(Gender Equality 1.0)」と呼び、他の要因との関係を重視して多様性の観点に展開することを「ジェンダー平等2.0(Gender Equality 2.0)」と呼び、ジェンダー平等2.0の必要性を宣言しました。

性差分析事例

1)特許の事例(外部サイトへ移動します)

女性の活躍は企業パフォーマンスを向上させる
-特許からみたダイバーシティの経済価値への貢献度-

男性のみが発明者の特許に比較して、男女の発明者が関わっている特許の経済的価値は54%も高い。

出所:日本政策投資銀行

2)融合領域事例(外部サイトへ移動します)

融合領域研究の世界トップ10%論文は男女共同著者が男性/女性のみ著者より多い

融合領域研究と女性著者比率の関係(ドイツの2010-2013データ)
(○の大きさは論文数を表す)

出所:Mapping gender in the German research arena

3)Londa Shiebingerセミナー(レポートへ移動します)

JSTダイバーシティセミナー“Gendered Innovations in Science, Health & Medicine, Engineering, and Environment“(性差に基づく新しいイノベーション論 ~「ジェンダード・イノベーション」について~)では、研究開発になぜジェンダー分析が必要なのか、分析を行わない場合何が問題なのか、また、ジェンダー分析を行うことで広がるイノベーションの可能性について多角的に掘り下げる形で行われました。詳細については、上記の報告をご覧下さい。

私たちのアクション

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調査・提言

科学技術の発展には国や各団体の未来に向けた適切な行動指針が不可欠です。JSTは独自の立場で現状を調査し、提言を行っていきます。

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セミナー・センポジウム

科学技術を担う人財にも多様性が必要です。より多様で豊かな視点と知見を提供できるよう、セミナーやシンポジウムを通じて多様な催しを行ってゆきます。

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研究室支援

研究環境にもワークライフバランスは必要です。子育てや介護、そういった要素が研究の壁とならないよう、JSTは多様な支援制度を検討し、実施してゆきます。