第8回 輝く女性研究者賞(ジュンアシダ賞) 受賞者

輝く女性研究者賞(ジュンアシダ賞)

写真:高木 里奈さん
高木 里奈

東京大学 物性研究所 准教授

専門分野

物性物理学、磁性、強相関電子系

経歴
・2014年
東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 博士課程 修了
・2014年
理化学研究所 創発物性科学研究センター スピン創発機能研究ユニット 特別研究員
・2019年
東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻/同 総合研究機構 助教
・2023年
東京大学 物性研究所 准教授(現職)
受賞歴
・2020年
日本物理学会若手奨励賞
・2020年
科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞
・2023年
日本物理学会米沢富美子記念賞
・2026年
船井学術賞
・2026年
大学女性協会守田科学研究奨励賞
受賞理由

 高木里奈氏は、電子相関・対称性・トポロジーに由来する電子物性を開拓し、既存の常識を覆すインパクトの高い研究を推進している。反強磁性体でありながら、室温で情報の不揮発な保持・書き込み・電気的読み出しが可能な物質を実証し、次世代の情報技術に新たな道を示している。さらに、従来は試料依存性として扱われてきた結晶性のわずかな違いを物性制御因子として捉え、新たな物質設計原理の構築に挑んでいる。
 欧州の研究機関との継続的な連携など国際性も高く、ダイバーシティ推進、一般向け講演、女子中学生の職場訪問受け入れなど、アウトリーチと次世代育成にも積極的に取り組んでいる。独創性、国際性、社会貢献を兼ね備えた研究者である。

磁石の性質がほとんどないのに情報を記録できる? ― 電子の並び方が開く次世代メモリー

学会での研究発表

 ハードディスクなどの記憶装置では、物質の中にある小さな磁石の向きの違いを利用して情報を記録しています。しかし、記録する部分を小さくして密集させると、磁石同士が影響し合い、さらに多くの情報を記録することが難しくなります。
 私は、電子が作る小さな磁石が反対向きに並び、全体としては磁石の性質がほとんど現れない物質を研究しています。このような物質は高密度な情報記録に適していると考えられていますが、情報の読み書きが難しいという課題がありました。私たちは、硫化鉄という物質で、室温でも情報を保ったり書き換えたりして、その状態を電気的に読み出せることを示しました。
 さらに、結晶のわずかな成分の違いや欠陥、時間とともに起こる変化にも着目しています。
 これらを上手に制御することで物質の働きを変え、将来の高密度で高速な次世代メモリーの実現を目指しています。

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輝く女性研究者活躍推進賞(ジュンアシダ賞)

画像:大阪公立大学
岡山大学

(学長 那須 保友)

受賞理由

 岡山大学は、2009年に全国に先駆けて「ウーマン・テニュア・トラック(WTT)制」を導入し、女性研究者の採用から育成、昇任、リーダー育成までを一貫して支援する仕組みを構築した。WTT制により42名の女性特任助教を採用し、その後11名が准教授、6名が教授へ昇任するなど、女性研究者を継続的に育成し上位職への登用につなげてきた。また、女性講師・准教授を教授へ登用する上位流用制度や、研究・教育・管理運営能力を体系的に養うリーダー育成プログラムを整備し、将来のリーダー育成を推進している。さらに、WTT制は他大学にも展開される先進モデルとして全国的な波及効果を生み出しており、全国ダイバーシティネットワークなどを通じた知見共有・発信も高く評価される。
 女性研究者の活躍を組織全体で支える同大学の継続的な取り組みは、他大学・研究機関の模範となるものである。

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輝く女性研究者賞(科学技術振興機構理事長賞)

写真:高木 悠花さん
高木 悠花

東京大学 大気海洋研究所 准教授

専門分野

海洋生物学、微古生物学、進化生態学

経歴
・2016年
早稲田大学 大学院創造理工学研究科 博士課程 修了
・2016年
東京大学 大気海洋研究所 特任研究員
・2017年
日本学術振興会 特別研究員(PD)
・2021年
千葉大学 大学院理学研究院 地球科学研究部門 助教
・2024年
東京大学 大気海洋研究所 海洋生態系科学部門 准教授(現職)
受賞歴
・2016年
早稲田大学小野梓記念学術賞
・2020年
地球環境史学会奨励賞
・2022年
日本海洋学会岡田賞
・2024年
東京大学卓越研究員(公募型)
・2024年
日本古生物学会研究奨励賞
受賞理由

 高木悠花氏は、海洋プランクトンである浮遊性有孔虫を対象に、「光共生」を切り口として生命進化と地球環境の相互作用というスケールの大きな課題に挑み、地球科学と生命科学を融合した独創的な研究を展開している。世界各地での観測調査や飼育実験、同位体分析、遺伝子解析を駆使し、光共生の進化史や環境適応機構を世界に先駆けて解明している。
 筆頭著者として多数の優れた研究成果論文を発表し、異なる分野の複数学会から表彰されるとともに、国際共同研究や招待講演を通じて高い国際的評価を獲得してきた、地球生命科学分野を国際的にリードする研究者である。中高生への啓発活動や、アートやデザインを通じても活躍し、成果を広く社会へ発信している。

小さなプランクトンは、なぜ藻類と暮らすのか ― 海の共生から進化と温暖化を考える

船上でのプランクトン調査

 海にすむ「浮遊性有孔虫」は、目に見えないほど小さな単細胞生物です。種類によっては、体の中に小さな藻類をすまわせ、藻類が光合成で作る栄養を受け取っています。私は、この異なる生物同士が助け合って暮らす「光共生」の仕組みや進化を研究しています。
 世界各地の海で有孔虫を採集し、飼育実験や遺伝子解析、殻に残る化学情報を分析することで、どのような種類が共生し、その関係がどのように進化してきたのかを調べています。その結果、光共生は進化の過程で何度も生まれ、長い時間をかけて受け継がれることで、より強い結び付きへ発展してきたことが分かってきました。
 さらに、共生する藻類は有孔虫の体内にいることで高温に強くなる可能性も明らかになりつつあります。こうした研究は、海の生態系が温暖化などの環境変化にどう応答するのかを理解し、将来の海の姿を予測する手掛かりになると期待されています。

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