
京都大学 大学院薬学研究科 准教授
生理学、神経科学一般
長谷川氏は、睡眠・覚醒を制御する神経細胞や神経回路に関する顕著な研究成果を挙げている。特に、レム睡眠の開始のメカニズムの解明に関する研究業績の独創性と世界的な注目度は非常に高く、情動脱力発作(カタプレキシー)の発症機序の理解にも大きく貢献した。今後の活躍が大変楽しみな若手研究者である。国際共同研究プロジェクトや国際学会に積極的に参加し、異なる文化や学問的背景を持つ研究者との協働の意義を幅広い交流の中で体現している。睡眠障害という人類共通の課題に対して、グローバルな研究を牽引するリーダーとしての役割も今後期待したい。
研究活動と並行して、一般の方や大学生を対象に、睡眠に関する研究の普及や、理系人材の裾野拡大を目指したアウトリーチ活動や、理系分野のキャリア教育を行っている。学内では、研究現場における女性活躍の推進にも貢献している。
(代表取締役社長 ジャン‐ピエール・シャリトン)
ロレアル財団が掲げる「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」という信念のもと、日本ロレアル株式会社は約20年の長きにわたり、「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の運営を通じて女性研究者の活躍支援を行っている。また近年においては産学官連携プロジェクトや次世代人材育成など、女性活躍支援活動の拡大・強化が図られている。
多様性を企業文化に掲げ、女性研究者のキャリア支援や多様な働き方の支援によって、自社の研究所において女性研究者比率59パーセント、管理職比率47パーセントを実現している。また、研究者以外の一般社員も含めて、科学界におけるジェンダーの課題について啓発・学習の機会を提供している。自社の本業を磨き上げるために努力することが、結果として女性の登用やキャリア・働き方の多様化につながる、という取り組みの思想は、ダイバーシティ推進の最も理想的な形の1つであり、他機関のモデルとなる。
海洋研究開発機構 地球環境部門 地球表層システム研究センター
海洋生態系研究グループ 副主任研究員
地球科学、雪氷学
永塚氏は、北極や南極などの極域や高山域における氷河・氷床の融解を引き起こす要因として、鉱物や微生物というミクロな不純物の動態に着目し、近年の地球規模での気候・環境変動の解明に果敢に挑戦している。さまざまなスケールで地球全体をとらえる視野はユニークである。国際共同研究では、金属元素の同位体比分析を始めとする高度な分析技術を基に挑戦的な研究を主導し、当該分野をけん引する研究者として活躍している。
ユニークな研究活動に加えて、雪氷・地球科学研究に関する知見の共有やアウトリーチ活動も行い、また、高度な分析技術をもって後進研究者の育成にも力を注いでいる。社会的な役割を積極的に果たそうとする次世代リーダーのロールモデルである。
賞の概要はこちらをご覧ください