学校法人立命館 立命館高等学校

  

 

  理系グローバル人材育成に向けて ~国際舞台での経験を日本中の高校生へ~ 


        紹介者名:学校法人立命館 立命館高等学校 SSH推進機構長 廣松光一郎

 

 

   1.学校の概要 

 

 立命館は建学の精神を「自由と清新」、教学理念を「平和と民主主義」とする学園で、2大学、4中高、1小学校を擁しています。本校は立命館学園内の附属校として、同じ理念のもと、創立118年の歴史を持ちます。SSH事業の初年度である平成14年度から指定をいただき、現在は、先導的改革期(第2期)に入っています。SSH事業の中で、主対象生徒の課題研究を全校的に拡大し、新しい教育の充実を図り、平成26年度にキャンパスを長岡京市へ移転しました。新キャンパスにおいては、小中高の連携を強化するとともに、科学教育、国際教育の環境を整えました。

 

   2.取組の概要・ポイント

        

 研究開発の中心は、課題研究による探究型学力の伸長にありますが、そのための手段として、高大連携や国際交流が有効と考えてきました。立命館学園の恵まれた高大連携環境と多くの海外理数教育重点校との協力で様々な実践に取り組んできました。最も中心的な取組は、次の2つです。

 

  ① Japan Super Science Fair(JSSF)

 海外校約30校、国内校10数校の参加で、毎年11月に開催しています。参加生徒の課題研究発表が中心ではありますが、国や学校の枠を超えた科学交流の場を多く企画し、参加生徒が「世界のために科学の力で貢献する使命感」「将来の活躍のためのネットワーク」「未来に向けての大きな夢」を得ることを願って開催しています。令和5年度が21回目となり、多くの日本の高校生へ、国際舞台で研究発表を行う場を提供してきました。


JSSF2023の集合写真 JSSFで国際的な小グループで
科学討論をしている様子

  ② 国際共同研究プロジェクト

 海外校の生徒と国際共同研究を行うプロジェクトです。令和5年度の取組には、国内校22校、海外校19校が参加しています。参加校を立命館高校でマッチングし、研究が動き出す最初の部分を中心にサポートしています。取組はすべてオンラインで行い、1月に開催するInternational Collaborative Research Fair(ICRF)において、共同発表を行います。



相手校とオンラインミーティングを行って
いる様子
ICRFで日本と韓国の生徒が共同発表を
行っている様子

   3.工夫のポイント

 

JSSFについては、単に良いFairにすることだけでなく、生徒による実行委員会を組織し、Fairの企画・運営を行う中での学びを大切にしています。生徒実行委員長を選出し、6~7程度の部署に分かれて、部署長を中心に約80名による生徒実行委員会が組織され、生徒の主体性を大切にしながら活動を進めます。
4月もしくは5月頃から活動は始まります。コアメンバーと呼ばれる委員を募集し、今年度のJSSFをどのようなものにするかの議論を開始します。コアメンバーには、例年、3年のSSH主対象クラスであるSSGクラスから10数名の生徒が立候補し、前年度の経験を活かして、自分達の代のJSSFをどうしたいのか、熱心に議論が展開されます。6月頃には、その年度のJSSFの目標、スローガン、スケジュール、企画の概要などを決定して、クラスへ提案します。毎年度、コアメンバーはJSSFへ熱い思いを持って議論を行いますが、大切なのは、これがクラス全体で同じ思いとして共有されることです。一部の生徒達だけが熱心に素晴らしい計画を考えても、他の生徒と温度差があれば、決して良いFairにはなりません。教員が最も注意するところです。クラス全体が、お互いを高め合い、学び合える集団として機能しないと何事も成し遂げられないということを、提案する生徒にも、提案される生徒にも理解されるよう導くことが教員の重要な役目です。このような生徒実行委員会の活動を通して生徒が大きく成長することを実感しており、将来、科学者や技術者として必要な非認知能力の育成に役立つと考えています。今後、オンラインを活用して、他校生徒にも実行委員に加わってもらい、このような成長の輪を広げることを計画しています。
国際共同研究は、将来、「世界中の誰とでも一緒に仕事のできる人」に成長する人材育成に有効だと考えています。長期間にわたる海外生徒を含むグループでの調整や新しいアイデアの実践を通じて、上記と同様の非認知能力を育むことができると考えます。
国際共同研究は未だ多くの海外校・国内校にとって未知の分野でもあり、その普及のために次のような2つの工夫をしてきました。まず一つ目は、国際共同研究を身近に感じ、興味を持ってもらえるよう、その成果や重要性、生徒の成長などについて、JSSFや海外のサイエンス・フェアの教員セッションなどの機会において、本校教員から積極的に発表を行ってきたことです。二つ目は、JSSFで通常各校1本に制限している口頭発表について、国際共同研究に限って追加で発表を認めるということを数年間続けてきたことです。それらの結果、国際共同研究に関心を示し、自分の学校でも取り組んでみたいと希望する学校が次第に増えてきました。
コロナ禍の2年間はJSSFをオンラインで開催し、さらに多くの学校との交流が始まり、国際共同研究プロジェクトへの新規参加校の獲得にも成功しました。しかしながら、対面で開催するJSSFに招待できる学校には限りがあります。国際共同研究の発表会であるICRFというオンライン・フェアを開催することで、国際共同研究をJSSFから上手く切り離すことができ、独立した新しい企画に生まれ変わりました。それによって、さらに大きな輪へ発展させていく可能性が高まったといえます。
これらの取組において重要なのは「連携」です。校内においては、教員間の連携、特に、理数科目の教員と英語科の教員の強い連携が成功の鍵であったと考えます。国内校とは、長年、科学技術人材育成重点枠で培ってきた連携校間の強い協力関係があげられます。何度も連携校会議を持ち、国際科学教育の方法を共有し、多くの議論を積み重ねてきました。国際共同研究プロジェクトを共に創り上げてきたといえます。また、多くの海外校と強い連携関係を維持するためには、日常的な教員間の交流が求められ、教員全員で長年にわたって努力を積み重ねてきました。

 

   4. 取組を通じた生徒の姿など取組の成果

 

生徒が3年間取り組んだ課題研究を英語で世界中の高校生へ発表することをゴールとしていることで、生徒のモティベーションは大きく上がり、課題研究の充実につながっています。その中で、将来、世界のために貢献する意欲を持つ生徒が多数育っています。卒業生調査からは、大学での留学や、就職後も海外へ目を向けている者が多くいることが確認されており、大学や企業で研究者として活躍している卒業生も、高校時代の経験が、世界的な視野を持って活動することの基盤になっていることが窺えます。
20年以上の研究開発の中で、毎年、SSH主対象クラスから博士号取得者が輩出されています。今次SSH研究開発では、上記の非認知能力の育成がそのことに関わっているという仮説を立て、その検証を行います。