極めて多量の情報を高速度で処理・演算したり、さらには高速・大容量の伝送に至るまで、光技術は急速に進展しつつある。また、人間はほとんどの情報を目を通して取り込むことから、マンーマシンインターフェイスとしての各種ディスプレイ技術等も急速に進展しつつある。
このような光技術の大きな特徴は、新しい原理に基づく光関連機能を発現する新規材料や新規デバイスの発見・発明によって、不連続的に急展開する可能性が強いことである。
このような中、平成8年度に実施した地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業により、本県には九州大学を中心にフォトクロミック材料や(高分子/液晶)複合膜など、新しい光機能を発現する新材料や新規デバイスに関し、学会レベルでは世界に冠たるシーズが多量に蓄積されていることが確認された。
それと同時に、それを企業化していくために必要な研究開発力を有した企業群が存在していることが明らかになった。
そこで本事業では産学官の研究機関が結集することにより、そのシーズを活用して新規デバイスのプロトタイプを提示することを目標として事業を推進した。
目標としたデバイスとそのシーズについては下記の通りである。
(目標デバイス) | (シーズ及びその保有者) |
・超高密度光メモリ | <フォトクロミック材料 (入江正浩:九州大学)> |
・フレキシブル・ディスプレイ | <(高分子/液晶)複合膜 (梶山千里:九州大学)> |
・蓄光デバイス、センサー | <機能性ガラス・セラミックス (森永健次:九州大学)> |
・可変波長レーザー | <色素レーザー (前田三男:九州大学)> |
・太陽電池、センサー | <有機光電変換材料 (金藤敬一:九州工業大学)> |
・デバイス実装、ディスプレイ | <薄膜作成技術 (友景肇:福岡大学)> |
フェーズIにおいては、新技術・新産業への展開の可能性探求を含め比較的多数の研究テーマを設定したが、研究者、予算等の研究資源に一部発散する傾向がみられ、中間評価においても研究テーマの整理と研究資源の重点的な配分が指摘された。最終的には下記のような体制により研究開発を実施し、フェーズIIにおける目標を概ね達成した。
|
「新しい記録、表示に関する技術開発」
|
・メモリデバイスグループ
(薄膜光応答材料の開発) (近接場利用光記録の研究)
主な成果: |
透明で安定なアモルファス固体(フォトクロミック分子の体積密度100%、分子量分散1.0の単一成分固体、可逆フォトクロミック反応にて(>0.02)の屈折率変化を示す)の開発 |
今後の展開: |
県工業技術センター中心に、九州大学、企業と連携し、実用化3次元光記録材料への展開 |
|
・(高分子/液晶)複合膜グループ
(高性能・ノーマルモード表示膜組成物の開発) (大面積・フレキシブル表示膜の作成プロセスの開発)
主な成果: |
従来の材料より急峻性に優れた新規材料の開発およびその材料を用いた単純マトリックスによる漢字表示可能な表示素子の製作 |
今後の展開: |
県工業技術センター実用化プロジェクト事業にて応用製品開発 |
|
|
「新たなフォトニクスデバイス材料の開発」
|
・無機フォトニクスグループ
(光ファイバーセンサーの開発) (新規蓄光・蛍光材料の開発) (高強度透光性アルミナセラミックスの開発)
|
・集積型レーザーグループ
(超小型集積型可変波長色素レーザー装置の開発)
主な成果: |
4台の試作機(ラップトップサイズ、560nm〜1000nmをカバー)の完成 |
今後の展開: |
財団のフォトニクス研究開発委託事業により、高性能化を図る |
|
|
「薄膜形成技術、精密計測・評価技術等の新たな共通基盤技術の確立」
|
・デバイス実装グループ
(ダイアモンド系薄膜を用いた電解放出ディスプレイの開発)
(チタン酸バリウム薄膜の開発)
(走査型プローブ顕微鏡を用いた局所的紫外・X線光電子分光技術の開発)
主な成果: |
液晶検査用パラレルプローブの開発、製品化
液晶・PDPパネル基板用マーキング装置の開発、製品化
微細半田ボール電極技術として実用化 |
今後の展開: |
県工業技術センター実用化プロジェクト事業での応用開発 |
|
|