1*事業目標の達成度及び波及効果並びに今後の展望
事業の推進にあたって、各種会議および研究会を積極的に開催し、また各研究機関間のコンピュータネットワークシステム構築を進めるなど、地域COEシステムの整備という点では一定の成果を上げていると評価できる。特に新技術・新産業の創出に対する学側の基盤は確立しつつあると考えられる。一方、狭い研究者だけのネットワークであるような印象を受け、基盤の拡がりが十分であったか疑問が残る。
シーズ先行で事業を進めてきたため、開発した技術が産業利用のニーズと整合がとれていない。その結果、これから利用先を模索する項目が多い。事業化への道程はまだ多くの未解決点を残すが、知的クラスター創成事業へつなげるという方法がとられていることはこれからの展開として期待したい。本事業実施期間中に一つでも実用化を目指した取り組みがあってもよかったと思われる。
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2*研究開発目標の達成度及び成果並びに今後の展望
九州大学を中心とする研究体制が組まれ、今後の日本に必要な研究内容によって多様な材料開発が並行して進められた。その結果、基盤となる技術の確立につながる研究成果が生まれ、集積が行われたものと判断される。100件を越える学会発表および多くの論文発表、65件にのぼる特許出願件数は評価できる。
しかしながら、これらの各技術は個別的であり関連性が薄く、それぞれの研究の相互作用によって進展をみたとは思われない。また各技術の広がりや深化が充分でないこと、特に実用化という面では遅れがみられることが懸念される。今後フェーズIIIでの地域独自の取り組みの中で、いかに産業振興という観点をもって研究者が新たな成果を生み出すことができるか期待したい。
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3*成果移転に向けた取り組みの達成度及び今後の展望
研究テーマが大学における基礎研究をシーズにしたものであり、事業開始当初より、新技術エージェントを中心として具体的な実用化目標設定のための取り組みがなされた。市場調査が行われているが、その結果新規性のある画期的な技術開発であるものの、試作品レベルでは市場が小さいこと、性能、信頼性に関するデータが不足しているとの大きな課題が課せられている。
特許65件という数字自体は評価されるものであるが、産業に結びついた技術および着手した技術がないなど、成果移転の対象となる具体例が乏しく、個別研究テーマに残された実用化への課題解決のための方策も明確ではない。フェーズIIIにおいては、実用化のためにどんなニーズがあるかを探索する積極性を発揮し、より産業界との連携を強化する必要がある。また、県のバックアップによりフェーズIIIに移行するにあたっては、これまでの大学中心の体制について思い切った再編も必要であろう。
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4*都道府県等の支援及び今後の展望
事業期間中におけるコア研究室の整備拡充やフェーズ・における県予算による地域COEの中核的施設の拡充整備、実用化や基盤的な研究開発を実施する研究プロジェクト経費負担など福岡県独自の取り組みについて、特に、九州大学と地域企業のポテンシャルをまとめあげているという点で県の支援体制は評価できる。
しかしながら、産業化へ向けた十分な活動があったとはいえず、県が新しい産業を起こす努力をすべきであろう。研究者に任せきりにするのではなく、県がフェーズIIIの責任者となり、公開の研究会の開催や企業支援など研究成果を積極的に活かす方策を考える必要がある。
フェーズIIIにおける県単独事業については、実用化に向けた体制づくりを目指した選択と集中の観点から、充分な審査を行い研究費の補助を行うことが望まれる。 |