IT社会ともいわれる21世紀型情報社会に必須の、情報ストレージ技術の根幹をなす磁気記録技術のさらなる発展を目指し、垂直磁気記録方式による平方インチあたりテラビット級の情報蓄積を可能とし、一方で、高次脳医療に不可欠な超偏極多機能MRI技術を開発し、脳病巣診断に画期的進歩を促し、さらにはその映像医療画像の解析情報のデータベースと個人医療情報カードを組み合わせた未来型ネットワーク医療の基盤技術を確立することを目的とするものである。キーワードは『情報と医療』の連携機能の創出である。
本事業には秋田県内外の企業も参画しており研究の進捗にあわせ成果を逐次産業技術として技術移転を図り、県内企業の独自製品の開発を促し、新産業の創成を図る。さらに、産学官連携のネットワークを構築して研究開発体制の継続的発展を目指す。
本事業の成果となる要素技術は、県内企業のニーズと対応する薄膜製造技術・超微細加工技術・超精密制御技術・真空技術・画像処理技術・高周波回路技術などナノテクノロジーから製造技術まで多岐にわたるものである。事業と関連する研究会の設立と合わせて、地域COEの構築を図り、科学技術基盤の形成に寄与することを目標とする。
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1)地域COEの構築
本事業は、垂直磁気記録方式による大容量情報記録システムを開発し、より鮮明な画像が得られる偏極希ガスを使用したMRIシステムの大容量脳画像情報記録に適用を図る他、電気電子産業等に展開するものである。
秋田県高度技術研究所内にコア研究室を設置し、世界最先端の情報記録技術の研究を推進するとともに、秋田県脳血管研究センターにおいては、大容量情報記録技術を用いた鮮明な脳画像処理技術を確立し、相互に連携しながら、脳診断情報システムの革新を目指すものである。このような、情報と医療の連携機能の創出は、技術立県秋田のシンボルとして、持続的に発展させるネットワーク型地域COEと位置付け、事業終了後も本県がその機能を一層充実させつつ、継続的に管理・運営する。
秋田県においては、本事業シーズの具体化を支援するため、現在、高度技術研究所、工業技術センターに設置されている開放研究室、開放実験室等のインキュベータ施設の積極的活用を図るとともに、「試作支援室(貸し工場)」の整備を検討する。また、平成14年度に供用開始された秋田情報ハイウェーにより、高度情報ネットワークシステムを確立する。
本事業の推進にあたっては、国や県の各種事業化支援制度の活用を図り、企業の技術開発の促進を図るとともに、特に、次代を担うベンチャー企業育成のため、県が単独事業で実施している「ベンチャービジネス総合支援事業」等を積極的に活用し、新産業・新事業の創出を促進する。さらに、平成12年度に開設した「秋田県産業振興プラザ」を拠点とし、県内企業の新事業創出のための総合的支援を実施する。
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2)新技術・新産業の創出
垂直磁気記録関連では、記録媒体の開発に加えて、磁気ヘッド、及び高速・高精度制御機構などの周辺デバイスの開発を行う。脳医療応用関連では、偏極希ガス発生・精製装置の開発、MRI信号に含まれる種々の情報の高速解析技術の開発を行う。また画像情報の圧縮・完全復元機能を有する高速転送技術の開発を行い、上記技術開発成果と統合し、脳診断情報システムとする。
秋田県高度技術研究所で培われてきた高密度情報記録技術と秋田大学、秋田県立大学が持つ情報記録の基盤技術との有機的な結合を強め、日立中央研究所やTDK等の有力企業の協力の下にテラバイト級大容量情報記録技術の開発を行う。従来技術は限界が見えはじめており、本事業では日本のオリジナル技術である垂直磁気記録方式を応用して開発を行う。また、脳血管研究センターではPETやMRIによる脳医療画像情報化による脳医療技術の開発を行っており、本事業では特に国立循環器センターと共に、最近海外でも注目されている高偏極希ガスを用いたMRI装置を率先して開発する。従来の一桁以上の高感度でMRI信号の測定が期待でき、偏極希ガス信号やプロトンなどとの相互作用による信号の解析と画像化により、大容量の脳画像情報が得られる。これらの脳画像情報を高速に読み出し書き出しを行うと共に、転送時に圧縮・復元を完全に行うことが可能になれば、脳疾患情報の統計処理にも多大な貢献が出来る。このシステムではさらなる大容量化にも十分対応できるよう、テープ記録システムを付加した階層型記録システムの検討も行う。これにより医療での大容量映像情報の利用が格段に促進され、医療診断技術に革新的な進歩がもたらされると期待される。
一方、産業的には大容量情報記録技術が従来のコンピュータ用途だけでなく、TVや電話機等の情報家電への応用が始まり、情報記録産業の今後の爆発的な発展が期待される。これに伴い、秋田県の電気・エレクトロニクス、精密機械産業の発展と集積はさらに進むことが期待される。また、大容量医療映像情報記録システムという従来にないシステムの開発は、脳医療分野に止まらず、大容量映像情報記録システムというハードウエア的にもソフトウエア的にも新しい産業を創出することが期待され、秋田県のシステム産業とソフトウエア産業の発展への大きな貢献が期待される。さらに、新規な高偏極希ガスMRI装置の開発からは、この装置に直接関わる技術だけでなく、脳医療に関連した多くの新技術の創出が期待される。
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