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地域結集型共同研究事業

平成11年度事業開始地域中間評価報告書

平成14年3月
科学技術振興事業団地域振興事業評価委員会

4. 地域別評価
4−2 岐阜県
課題名 知的センシング技術に基づく実環境情報処理技術開発
事業総括 星野 鉄夫 ((株)岐阜車体工業会長)
研究統括 山本 和彦 (岐阜大学工学部教授)
新技術エージェント 嵯峨 芳文((財)ソフトピアジャパン)
中核機関 (財)ソフトピアジャパン
1*事業進捗状況及び今後の見通し
 本事業は、画像処理技術を中心に、これを実環境における認識技術へと展開しようとするものであるが、研究テーマとしては応用範囲も広く、新産業の創出が期待できる分野である。
 事業の進捗状況であるが、フェーズ1で予定されていた研究は概ね達成しており、一部の研究テーマについては、フェーズ2の研究計画である「インタラクション(人と環境の関係理解)」の段階に入っており、良好に進捗しているものと判断される。
 フェーズ2に向けて、本事業の目標を「未来型福祉システム」の実現としているが、福祉分野が主要な応用分野であることは認めるものの、本研究テーマは応用範囲が広いことから、現段階では「未来型福祉システム」に特化するのではなく、広く成果の活用を図るべきである。
 研究テーマの多くがコア研究室において行われているのでこの充実を図るとともに、本事業は共同研究事業であることから、中核機関と大学との共同研究を積極的に進めるなど、産学官のなお一層の連携を図る必要がある。
 また、今後、応用研究が中心となるフェーズ2においては工学分野の研究者ばかりではなく、心理学や医療、福祉分野など、より快適なインターフェースを実現するために必要な研究者等の加入を検討する必要がある。

2*研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)
 マルチカメラシステムなど独創的で世界的にも非常にレベルの高い研究成果が生まれている。
 マルチカメラシステム以外の要素技術は、世界中に類似の研究が見られることから、これらの研究との差異化を図ることが必要である。
また、以上のことから、従来技術との比較検討や文献の徹底的調査などをとおして常に自己の研究の、世界における位置付けを把握した上で、新技術の開発や産業化を検討する必要がある。
 産学官の連携については、特に地元の企業との共同研究や技術移転が活発に行われており、新産業の創出が期待される。
 研究の推進に当たっては、技術偏重とならないよう、企業やコンシューマーの実際のニーズを十分に把握する努力が望まれる。
 フェーズ1では、要素技術の確立ということで一般化した研究を行ってきたが、フェーズ2においては、より具体的な目標を定めて研究を推進することが望まれる。

(サブテーマごとの留意事項)
サブテーマ名 留 意 事 項
A 頭部領域検出技術の研究 ・「個人の識別技術」は、様々な機関で研究開発されているの で、具体的な開発目標を設定し、他の研究との差別化を図 ることが必要である。
・「性別、年代の推定技術」は、特に年代の推定に独自性が認 められる。300人の顔データベースは、非常に貴重なデータ であり、「情場」のよい例となる。
・「注視方向の検出技術」も国内外で競合しているテーマであ る。他のテーマとの連携を図ることにより、独自性を保つこと が必要である。
B 手部領域検出技術の研究 ・ ジェスチャ制御テレビシステムや高齢者用ジェスチャ制御シ ステムの開発は高く評価できるが、ユーザ中心の思想からはもう少し気軽さ、手軽さを提供する工夫が必要である。
・ また、常に他センサーによる代替案を意識して進める必要がある。
C 画像計測及びモデル生成の研究 ・ 「マルチカメラを用いた画像取得」は、小型軽量の全方向カメ ラの開発に成功しており、世界的にも高水準の成果を挙げている。本研究はさらに充実強化して、推進すべきである。
・ また、例えば胃カメラ向けなど、幅広い分野での応用展開を考える必要がある。
・ 「形状モデル生成手法」については、かなり広範囲に研究テーマが散在しており、それぞれのテーマの関連も必ずしも明確ではない。
・ また、進捗状況もそれぞれの細目により異なるが、概してこれからというところである。テーマによっては独自性があり成果も期待できることから、フェーズ2に向けて絞り込みを図る必要がある。

3*成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し
 研究テーマごとに検討グループを設置し、定期的にミーティングを行うなど、成果移転に向けたしくみ作りを工夫し、積極的に取り組んでいることは評価できる。
 また、(株)中部コンピュータによる「ジェスチャーによる家電制御ソフト」、「ジェスチャー入力によるロボット等制御パイロットシステム(宇宙開発事業団)」の開発や大日コンサルタント(株)の「市街地GIS(地理情報システム)モデル化」など、企業への技術移転が具体化し、実用化に向けた取組みが生まれている。
 一方で、研究成果が出るまで待つという姿勢が感じられることから、能動的に企業やユーザーのニーズを把握し、研究者へフィードバックする努力が必要である。これにより、さらに多くの企業との共同研究が一層推進されることを期待する。

4*都道府県等の支援状況及び今後の見通し
 岐阜県では早くから、近年の情報通信技術・コンピュータ技術の発展が産業・経済・行政・国民生活などの各般に渡り大きな変革をもたらすとの認識の下に、「高度情報基地ぎふ(情場)」の形成・育成を図ってきており、本事業もその主要な取組みの一環として県を上げた支援を行っている。この基本的スタンスは評価できるものである。
 特に、平成13年度からは「IT応用商品開発支援事業」を創設し、本事業の研究成果の商品化開発に対する年間6千万円の補助を実施するなど、インフラや人的支援に加えて成果移転を図るための支援を行っていることは評価できる。
 ただし、県のトータルな施策や産業創成のビジョンと本事業の研究内容を結びつける具体的なイメージあるいは本事業の位置付けが今ひとつ明確でないB

◆(参考1)事業の目標・概要

◆(参考2)フェーズI における学術的、技術的、対外的活動実績

◆(参考3)フェーズI における研究項目と実施体制

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