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地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業
(ネットワーク構築型)

平成14年度終了地域事後評価報告書


平成15年10月
独立行政法人 科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会

3. 地域ごとの事業展開および評価

  福島県  長野県  島根県  山口県  徳島県  佐賀県

(1) 福島県
拠点機関 財団法人 福島県産業振興センター
科学技術コーディネータ 長嶋 直之
事業実施期間 平成11~14年度
no1地域ニーズ、研究シーズの調査状況と研究情報の整備状況
 企業150社のニーズ調査、研究者855名のシーズ調査に基づきデータブックを作成し、ホームページでの公開、更新も適切に頻度高く行われている。研究会は技術分野別に、継続的に、延べ約100回開催され、活発な活動と評価出来る。会津大学、日本大学工学部、いわき明星大学の3大学連携を継続し、福島県立医科大学、福島大学からのシーズ発掘と、地域における更なる企業ニーズ調査が推進されることを期待する。
no2可能性試験の実施状況および試験結果の活用状況
 27件の可能性試験から商品化に進んだもの4件、特許申請が16件ある。可能性試験「県産農産物を利用した機能性食品の開発」から発展して、福島県産官共同研究研究事業に橋渡しされ、イソフラボンを多量に含む大豆(東北125号)が開発された具体的成果や、研究者がベンチャーを起こした事例もある。他事業への展開を促進するためには、地域における産学連携を更に緊密にすることが求められる。結果として、研究成果へのベンチャーからの引き合いも盛んになることを期待する。
no3コーディネート活動の公開状況
 福島県企業データブックに7,044社、研究者データブックに590名を収録し、CD-ROM、ホームページで公開する他、新技術フォーラムが9回開催され(毎回参加者約100名前後)、着実なコーディネート活動・公開状況と評価できる。
 今後も公開情報の維持・更新が継続して実施されることを期待する。
no4地域におけるコーディネート機能の構築状況および波及効果
 新技術フォーラムと技術分野別研究会の2本立ての事業実施により産学間の垣根が低くなった他、コーディネータ2名の常駐が実現した。3大学研究連絡会議、東北地区RSP連絡会議、県内大学等に配置されたコーディネータ15名の事務局といったネットワーク構築への取組と、他事業への展開事例14件は評価できる。都市エリア産学官連携促進事業等での今後のコーディネート活動の継続発展と、産学連携共同研究や他事業への展開が更に活発になることを期待する。
no5総合評価
 コーディネータを先頭に事業が推進され、シーズ発掘、他事業への橋渡し等で成果も生まれているが、地域にコーディネート機能が根ざしたかという点で不安が残る。経験あるコーディネータが引き続き地域で活動されることが望ましい。
(2) 長野県
拠点機関 財団法人 長野県テクノ財団
科学技術コーディネータ 田草川 信雄
事業実施期間 平成11~14年度
no1地域ニーズ、研究シーズの調査状況と研究情報の整備状況
 ヒアリング調査を主体にニーズ・シーズ調査が行われ、時間をかけた面談を通して企業ニーズを拾い上げた努力は評価されるが、地域の高い技術ポテンシャルを考慮すると、ニーズ調査の230件、シーズ調査の190件、計54回の研究会開催は十分とは言い難い。今後は、技術レベルの高い、地域の企業にあるシーズの発掘や、長野県で得意な地域医療、農村医療、長寿の面を積極的に調査し、企業ニーズに結びつけることも期待する。
no2可能性試験の実施状況および試験結果の活用状況
 41件の可能性試験から他事業への展開13件、商品化前段階24件といった活用が見られる点は評価できる。可能性試験のレベルを基礎技術から実用化に近いものまで4段階に分けて実施する工夫が見られる。今後は、ニーズの大きさを調査しながら積極的に企業化に繋げて行くことを期待する。
no3コーディネート活動の公開状況
 パンフレットRSPnagano Reportを毎年発行し、新技術プレゼンテーション10回とシーズ紹介講演会1回を通して、コーディネート活動を公開した。また、県内大学等の研究者が技術移転を希望する研究シーズ集を財団のホームページに公開している。
 長野県内5地域の公設試にテクノコーディネータを配置して、科学技術コーディネータに協力するといった若手コーディネータの育成を図った。今後は、育成されたコーディネータの具体的な活動事例が、地域で認知されることを期待する。
no4地域におけるコーディネート機能の構築状況および波及効果
 長野県にある研究と技術の高いポテンシャルを思うと、研究会の開催回数、産学共同研究件数の推移を、コーディネータの活動状況として、具体的な数値で示して欲しかった。
 長野県内を5地域に分けたコーディネート機能の構築や、公設試の若手研究者をコーディネータに育成する等、取組に広がりが見られる。今後、地域に密着したコーディネート活動が期待されるが、地域にある大学、特に信州大学との連携を更に緊密にすることを期待する。
no5総合評価
 可能性試験の活用は評価できる。さらに、ニーズを研究の現場につないで、実効のある研究が開始された実例があると良かった。事業の連携では、長野県の公設試が中心になっているように見える。今後は、信州大学の地域共同研究センターとの連携や、県内に存在する研究開発型企業等の技術ポテンシャルの活用が更に進むことを期待する。また、ビジネスにつながるコーディネート活動を工夫することも望まれる。
(3) 島根県
拠点機関 財団法人 しまね産業振興財団
科学技術コーディネータ 酒井 禮男
事業実施期間 平成11~14年度
no1地域ニーズ、研究シーズの調査状況と研究情報の整備状況
 元々県内の研究開発ポテンシャルの蓄積が不足しているため、シーズ・ニーズについては研究会等を通して活発に探索・整理・活用がなされたとは言い難いが、「しまね・つくばネットワーク」他県外との連携拡大への試みは評価できる。また、シーズ183件・ニーズ243件の数は必ずしも多くないが、コーディネータの努力が感じられる。県の実情を踏まえた上で、県外との協力を含め努力の姿勢が見えるが、掘り起こしたシーズ・ニーズをさらに厳選調査し、マッチングに努めることを期待する。
no2可能性試験の実施状況および試験結果の活用状況
 可能性試験の件数は23件と相応の数をこなしているが、これまでは思うような成果をあげるには至っておらず、引き続き実用化に向けてのフォローが必要といえる。理工系大学が少ないという不利を、県外から補うなどの努力を行っており、また、ニーズの発掘でも努力している点、外部研究資金につながったものがいくつもある点を評価したい。
no3コーディネート活動の公開状況
 新技術フォーラムは相応に開催されているが、その他のコーディネート活動はややアピール不足のように見えるものの、ネットワークの構築としては見るべき成果があった。データベース化については調査結果を表示するだけでなく、さらに細かいアフターケアが必要である。
no4地域におけるコーディネート機能の構築状況および波及効果
 科学技術コーディネータが活動されている様子であり、工業技術センターを巻き込んだ形で組織的に実施する体制を構築する必要性がある。以前の交流の乏しい状況からは、ネットワーク構築によるコーディネート活動の改善が認められる。今後、県単独の「しまね産学官協働推進(Shimane Collaboration Promotion Program:SCP)事業」等に引き継がれて発展することを期待したい。県のバックアップもあり、波及効果にもそれなりの実績が出来つつあるが、より地域性を発揮しながら、成果の発信と企業化に努力して外部資金の獲得に努めて欲しい。
no5総合評価
 県の産業振興の歴史において、企業単独では不足しがちな技術力を学官のサポートにより強化しようと取り組んだこのRSP事業は、タイムリーで有効に活用されていると思われるが、取り進め方にやや未熟さが見られる。人口60万という県の特殊性をも考慮すべきであるが、RSP事業のタイミングとしては良かったと評価する。また、行政(島根県・松江市)、産業界が一体となって国に要望し、島根大学総合理工学部が平成7年10月に設置されたこと、平成8年5月に島根大学地域共同研究センターが設置されたことは、本事業の実施と今後の展開に大きく寄与している。
(4) 山口県
拠点機関 財団法人 やまぐち産業振興財団
科学技術コーディネータ 會田 忠義
事業実施期間 平成11~14年度
no1地域ニーズ、研究シーズの調査状況と研究情報の整備状況
 山口県における21世紀県づくりの指針「産業振興ビジョン21」に基づき重点育成分野(医療・福祉、環境・エネルギー、マルチメディア)を中心に研究会・分科会の開催、「山口研究者データベース」の作成、大学等の研究室訪問155件、企業訪問183件等で、地域における科学技術に対する着実な整備・活動が見られる。企業ニーズと研究シーズのマッチング43件という実績は、提供者間の意思疎通の努力とともにコーディネート活動として実を結んでいる。今後、地域特性・優位性を掘り起こすために研究会等への地元企業の更なる参加を期待する。
no2可能性試験の実施状況および試験結果の活用状況
 可能性試験は31件と活発に行われた。一方、新規性・独自性に欠け、他事業への展開(橋渡し)及び特許・事業化に結びつくものが乏しい。
 試験分野も限定され、「産業振興ビジョン21」に基づく重点育成分野に対して均等に配分されず、地域振興と距離があるものが多いため、より広い視点で試験を実施し、成果の活用が望まれる。
no3コーディネート活動の公開状況
 フォーラム、説明会で情報公開に努めるほか、ホームページ等でもシーズ・ニーズに係る研究者、企業情報の提供を積極的に行いながら、「やまぐち研究者info」等の印刷物発行、新聞発表等の紙作りの面まで多様な公開活動の実績をあげた。今後、本事業において構築されたデータベース及び研究会等の公開情報の更新及び新規コンテンツの作成へ向けた取り組みを期待する。
no4地域におけるコーディネート機能の構築状況および波及効果
 平成14年度から県が「山口県産学官イノベーション創出推進委員会」を設置するなど、県としてのバックアップ体制に期待ができる。また、産学公連携コーディネータ・サブコーディネータ配置など、地域独自の活動が推進されていることから、今後も、継続的な発展を期待する。一方、山口県が目指す技術開発の実体が見えないため、本事業による効果を明確にする必要がある。
no5総合評価
 県として産学官連携に力を入れはじめているが、産学官連携で全国的に実績をあげている山口大学との連携が、特許及び事業・実用化の面から上手く結びつかなかった点等は惜しまれる。山口県の産・学の総合的に高い水準と行政の活動度を考えると、本事業の効果と実績が伴っていない感がある。
 産学官連携を成功させるためには、シーズ・ニーズを結合させるコーディネータ等の目利き人材が不可欠であり、公設試の職員を含めてこの役割を果たす人材の登用を期待する。
(5) 徳島県
拠点機関 財団法人 とくしま産業振興機構
科学技術コーディネータ 上田 和男
事業実施期間 平成11~14年度
no1地域ニーズ、研究シーズの調査状況と研究情報の整備状況
 アンケート調査1,172企業、ヒアリング194企業と積極的な企業ニーズの調査及び精力的に開催された106回の技術分野別研究会(32研究会)が研究シーズと結びついた点は評価される。今後、インターネットを利用してのデータベースの公開等によるシーズ・ニーズ調査の整理を期待する。
no2可能性試験の実施状況および試験結果の活用状況
 研究企画、分野別研究会、27件の可能性試験及びコーディネータが発掘した課題から、24件が提案公募型の事業に採択されている点は評価できる。
 他方、可能性試験を選択する基準が不明確で、試験結果をどのように活用するかという戦略性がみえない。その結果、特許・論文に結びつく成果がほとんど出ていない。特に、地域の資産として知的財産を蓄積し、活用するための考え方を十分に検討し整理する必要がある。
no3コーディネート活動の公開状況
 成果発表会、新技術説明会、フォーラム等計16回の開催は、可能性試験の成果公開等に繋がり積極的な取り組みが行われたが、公開活動の面においても大学との連携が必要である。
 他方、ホームページ等におけるシーズ・ニーズ情報、コーディネート活動の公開が十分でないため改善を期待する。
no4地域におけるコーディネート機能の構築状況および波及効果
 コーディネータの活発な活動がみられたが、各種事業への事業化・知財化の面でのコーディネート機能が不足している。アシスタントコーディネータを6名配置して、本事業を推進された点は評価できる。今後、アシスタントコーディネータが徳島県において中心的な役割を担うことを期待する。
no5総合評価
 32の研究会をのべ106回開催し、研究シーズを掘り起こした点は評価できる。企業ニーズの収集にあたっては、これまでに各種支援事業等でかかわりのあった企業に偏った印象があり、今後は新たな企業への接触、ニーズ発掘を積極的に行なうことを期待したい。
 将来に向けた地域主体の産業育成・事業展開を考慮すると、可能性試験の成果である特許権に対する認識を持つ必要がある。
 平成13年度から設置された産学官連携コーディネータの活動状況や、各種他事業への展開について、県としてRSP事業終了後の財団・公設試等を中心とした展開ビジョン・推進体制を一層明確にする必要がある。
(6) 佐賀県
拠点機関 財団法人 佐賀県地域産業支援センター
科学技術コーディネータ 鋤本 峻司
事業実施期間 平成11~14年度
no1地域ニーズ、研究シーズの調査状況と研究情報の整備状況
 企業訪問による地域ニーズの発掘は744社におよび、研究シーズの探索も精力的に行われた。また、調査に基づく研究データベースの構築、研究会の設置、フォーラムの開催など一定の成果が得られており高く評価できる。但し、研究シーズに関する内容に表面的な印象がある。ニーズ・シーズのマッチングにより8テーマの可能性試験を実施しているが、マッチングの成果やそのためのコーディネート活動の努力が今ひとつ見られない。環境・バイオ・セラミックス等の独自性を出すなど戦略的な活動が望まれる。
no2可能性試験の実施状況および試験結果の活用状況
 可能性試験は地域性が反映されたテーマを中心に31件が行われた。可能性試験の成果をもとに、国・県のプロジェクトに7件が採択され、また、可能性試験は実施しないものの、研究シーズの展開として提案公募型事業に10件橋渡しされたこととあわせて、ほぼ妥当と考えられる。これらの展開により実用化に近い成果が生まれている点、特許件数が22件という点は評価できる。
no3コーディネート活動の公開状況
 4年間で3人、コーディネータが交替したことは、コーディネート活動の継続性という点で疑問が残るものの、新技術フォーラム、公開セミナー、研究会の開催等は活発に行われており、その情報の公開に関しても努力や工夫が感じられ高く評価できる。しかしながら、これらの活動状況を単にデータベースとして公開するだけで不十分であり、特にシーズに関しては研究テーマとその内容の公開だけでなく、研究成果を示す等の積極的なコーディネート活動が望まれる。
no4地域におけるコーディネート機能の構築状況および波及効果
 地域産業に則した産学官のコーディネート機能およびネットワークの構築は意義が大きく、事業化を意識した特許出願が多いなど、一定の成果を生み出した。また、拠点機関における人材・組織の整備や県単独事業等におけるコーディネート業務の継続など、さまざまな活動を継承・発展させる県の姿勢は評価できる。今後は、佐賀大学地域共同研究センターをはじめ、各学部との組織的連携の強化にも期待する。
no5総合評価
 本事業に対しては、コーディネータ以外に専任スタッフ6名、県独自の非常勤サポートコーディネータを配置し、意欲的に取り組み概ね成功と評価できる。地域特有の産業集積(伊万里・有田地域のセラミック産業など)の活用や、平成16年度運用予定のシンクロトロン光応用研究施設を核とした研究開発プロジェクトの検討において、県としての戦略をより具体化する必要がある。今後の事業化を含めた展開に関しては、県内のみにとらわれず全国規模の広域的視点、他の地域政策事業への展開が望まれる。

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This page updated on November 18, 2003

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