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地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業
(研究成果育成型)


平成12年度開始地域中間評価報告書

平成15年3月
科学技術振興事業団地域振興事業評価委員会

4. 地域ごとの事業展開概要と評価
(1) 岩手県
連携拠点機関 財団法人 いわて産業振興センター
科学技術コーディネータ 丹野 和夫(代表)、大島 修三、阿部 四朗、猪狩 征也
事業実施期間 平成12年度~
1*事業の進捗状況及び今後の見通し
 県内広範囲に渡り主要機関を結ぶバランスのとれた連携体制が整備され、地域の実情にあった取り組みが着実に進んでいると評価できる。科学技術コーディネータ全員が積極的に研究機関、企業訪問を行なっていること、収集した研究シーズ、企業ニーズの整理とその活用について、ロジカルにとりまとめながら事業を推進している点は一つのモデルとして評価できる。今後もこれまでの取り組みをベースとして、高い目標を掲げ、より多くの成果を生み出すことができるものと期待される。
2*事業の成果及び今後の見通し
 研究シーズおよび企業ニーズの十分な分析にもとづき、育成試験を43件と多方面にわたり実施している。その結果、地に足のついた技術の成果が小物ながらも確実に現れており評価できる。首都圏のシーズ調査が多少不足気味であるが、全体としては妥当な成果と思われる。
 これまでの育成試験の成功事例およびシーズ、ニーズ情報の収集数の多さから判断すると、今後もひきつづき多くの成果が生まれるものと期待される。
3*研究成果の実用化・企業化の状況及び今後の見通し
 実用化への取り組みは、分野を特定するなど効率的なマネジメントがなされている。実用化・商品化へ至ったものが6件あり、相応の実績を出している。多数の特許が出願されており、今後は企業化へ向け工夫を凝らした展開を期待したい。
 また、インパクトのある商品開発を積極的に支援すること、実用化までのハードルが高いテーマについては全国規模での提携を考える必要があること、などが課題と考えられるので、これまでの組織的な取り組みを一層強化し、課題解決にむけて努力していくことを期待する。
4*諸事業への橋渡し実績及び今後の見通し
 育成試験の課題決定プロセスにとどまらず、日頃のコーディネータ活動において、文部科学省や経済産業省をはじめ県単独事業を含めた諸事業への橋渡しが強く意識されている。その結果、諸事業への応募が積極的に行なわれているとともに、多くの採択実績を挙げている点は高く評価できる。今後もこの姿勢を貫きながら、より多くの実用化へ向けた諸事業への橋渡し活動を推進していくことを期待する。
5*総合評価
 RSP事業およびコーディネート活動に対する考え方の基礎がしっかりしているとともに、ネットワーク構築型での成果を十分生かしていると思われる。その結果、地域のハンディキャップを感じさせない成果と実績が生まれている。
 コーディネータの専門や出身が似通っているものの、それがプラスに表われている好例といえる。各コーディネータの精力的尽力と組織的遂行を高く評価する。
 今後は、首都圏の研究シーズおよび地元公設試験研究機関の総合的な活用を図るとともに、岩手県と地域性の似通った地域でのコーディネート活動の模範となる実績を積み重ねていくことを期待する。

(2) 山形県
連携拠点機関 財団法人 山形県企業振興公社
科学技術コーディネータ 石山 浩章(代表)、佐藤 秀夫、今泉 光博、浦山 隆
事業実施期間 平成12年度~
1*事業の進捗状況及び今後の見通し
 産学官の連携を推進するため、県と山形大学の産学連携機関でもあるベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)との人事交流や、VBLへの科学技術コーディネータの配置などの試みについては評価できる。今後は、さらにこれらの取組を実際のコーディネート活動に活かす工夫を重ねていくよう期待する。
 科学技術コーディネータの活動について、ほぼ1年間、代表科学技術コーディネータの不在期間があったこと、また、科学技術コーディネータの異動が相次ぐなどコーディネート活動の推進体制に不安定要因があった。このため、事業化等の成果はその多くがネットワーク型事業時代から引き継いだものである一方、ノウハウやネットワークなどのソフト的な成果は適切に継承されているとは言い難い状況である。
2*事業の成果及び今後の見通し
 研究シーズ・企業ニーズの把握について、あわせて27件というのは十分とは言い難い。今後一層の努力を期待したい。
 また、ネットワーク型時代からのコンセプトである「テクノ・マリッジ」(農業、工業といった業の区分を超えた結集・融合)の具体化に向けた取組については多少の遅れが見られる。特に、シーズが山形大学工学部等一部の研究機関にやや偏り気味であり、活動の広がりが限定的と思われる。今後は、学問分野を越えた技術をベースとする新産業の創出にさらなる努力を期待するともに、山形大学医学部を中心とする医療関係機関のシーズ・ニーズの掘り起こしへも注力を期待する。
 また、育成試験については、平成12年度7件、13年度10件、14年度11件で計28件の実施となっている。これらについては、課題の抽出方法や選考過程、あるいは、課題の内容に応じた予算の配分に一部、適切さを欠くものがあるように見受けられる。今後は、研究シーズ・企業ニーズの把握から課題の抽出、適正な資源の配分、育成試験の実施、成果の評価、試験後のフォローアップまで、効果的なコーディネート活動が行われるよう、これまでの活動方針の今一度の見直しが望まれる。
3*研究成果の実用化・企業化の状況及び今後の見通し
 実用化4件、商品化4件、企業化1件は立派な実績で、今後の活動も期待される。特に、RBセラミックスの実用化については地についた企業化が期待出来るので、今後の研究成果の実用化・企業化に当たっては、「テクノ・マリッジ」を意識した地場産業の振興に寄与する成果が望まれる。
 特許出願の実績は相応であるが、一部の機関への集中も見受けられる。今後は、育成試験からの幅広い成果に期待するとともに、特許出願に関する技術的、手続的支援にも力を入れるよう期待したい。
4*諸事業への橋渡し実績及び今後の見通し
 地域コンソーシアム事業等、他事業への展開支援に加え、県の各種事業化支援制度との連携が意識されており、今後につながる継続的な支援姿勢は認められるが、成果の観点からいうと、育成試験28件のうち、国関係の事業への橋渡しが成功したのは経済産業省の地域コンソーシアム事業1件と不十分である。今後は、採択につながる効果的な申請の手法、戦略を良く研究し、効果的な取り組みを期待する。
5*総合評価
 地域としてのポテンシャルが必ずしも十分ではない中で、山形大学との人事交流を含めた連携、県や連携拠点機関の関連事業との連携など地域の資源を総合的に活用した事業展開を行っていることは評価できる。
 しかし、「テクノ・マリッジ」というユニークなコンセプトを掲げているものの、この実現のために、具体的にどのような取組みを図っていくのか、その戦略について、県、連携拠点機関、各科学技術コーディネータの間に十分なコンセンサスが得られていると思われない。今後は、県の全面的な支援の下、研究シーズ・企業ニーズの発掘から他事業への橋渡しまで、システマティックなコーディネート活動の方策について十分に検討し、事業を推進することを期待したい。
 また、自己報告書でも触れられているとおり「情報メディア」、「医療・福祉」といった分野における活動実績が少ないことから、これらの分野についても必要十分な資源の配分を期待したい。

(3) 神奈川県
連携拠点機関 財団法人 神奈川高度技術支援財団
科学技術コーディネータ 廣田 穣(代表)、前田 敏弘、宮川 政義、陳 善忠
事業実施期間 平成12年度~
1*事業の進捗状況及び今後の見通し
 連携拠点機関である(財)神奈川高度技術支援財団(KTF)をはじめ、(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)などのインフラシステムを持っていることや、大学をはじめとする研究機関の集積に恵まれていることにより、地域のポテンシャルを十分に生かした取り組みがなされている。特に、KTFの役割分担が明確で業務に専念できる点は他地域と比べて特徴が出ている。また、各科学技術コーディネータもそれぞれ特徴を出して活動しているといえよう。
 豊富なシーズに支えられ事業の進捗状況はほぼ順調であり、今後も引き続き相応の期待ができるが、多くの研究機関との連携については、ネットワークをより一層広げる努力が必要と思われる。
2*事業の成果及び今後の見通し
 多くの大学と産業に恵まれており、それらのシーズ・ニーズの取りまとめと掘り起こしがなされ、今後も活発な活動が期待される。特許出願も積極的である。ただし、神奈川県の産業規模に鑑みるとニーズ調査が少々不足気味であること、科学技術コーディネータが実際の目で確かめシーズ・ニーズのマッチングを強化する必要があること、は今後の課題である。
 育成試験は34件実施されており、多くの大学のバランスを取ろうという意識が見られる。しかしながら試験研究テーマや大学等への恣意的な選択・配慮が懸念されるので、今後の展開にあたっては、「リエゾン協議会」の役割を再検討するとともに、成果の自己評価を適切に実施することが必要と思われる。
3*研究成果の実用化・企業化の状況及び今後の見通し
 特許取得を重視し、企業を強く意識した積極的な活動を行なってきたことは評価できる。また、シーズ・ニーズの資源量を生かしているので、必ず一定量のアウトプットがなされるものと期待したい。実用化・企業化に対し、学・大企業・中小企業の3体間の技術移転システムが神奈川県の特徴といえる。
 今後は、県内中小企業の各種情報に強い公設試との積極的なコンタクトを行なうとともに、実用化・企業化への連携にあたっては、中小企業の育成を念頭に置くとともに、大企業とも一層の連携を深める必要がある。
4*諸事業への橋渡し実績及び今後の見通し
 産学連携に熱心な有力研究機関も多く、各機関及び研究者の積極的な動きにも支えられ、相応の実績が出ていると認められる。
 コーディネータの力は十分にあると認められるので、企業ニーズをより能動的に把握する組織的な対応を図ることによって、今後の更なるマッチングの成果を期待したい。
5*総合評価
 KTFの存在とそれを中心とした組織と本事業が関連した概念・構想、特にこの専門機関と専門員の存在は評価できる。コーディネート活動そのものは、多数の企業と大学が存在するという地域の特性を考慮し、上手く行なわれていると思われる。ただし、4人のコーディネータでは産業規模から不十分な点もあり、これを補完する人材として、公設試の職員に支援を仰ぐなどの工夫が必要であろう。
 大学および産業の両者の質・量ともに高い地域において、本事業の役割や位置づけおよび貢献度を常に評価すること、中小企業の育成に注力すること、将来にわたって持続するインフラを構築することを重視して、事業を推進していくことを期待する。

(4) 静岡県
連携拠点機関 財団法人 しずおか産業創造機構
科学技術コーディネータ 吉田 勝治(代表)、大隅 安次、八十 昌夫、横井 勝之
事業実施期間 平成12年度~
1*事業の進捗状況及び今後の見通し
 地域の新産業創出という面で多少不安もあるが、全体的にみると、事業自体はほぼ計画どおり遂行されており、十分とは言えないまでも、積極的な運営状況も随所に見られ、目標達成に向けて概ね妥当な進捗状況と評価できる。
 当事業の活動範囲が全県的というイメージでなく、ファルマバレー構想などにより東部・中部に焦点を当てている印象であり、有機・生物・医療関連が進歩しているが、浜松地区を中心としたネットワーク構築型(平成8年度~平成11年度実施)との継続性も重視した今後の事業展開に期待する。
2*事業の成果及び今後の見通し
 シーズ・ニーズ調査及びマッチング、それぞれの活動状況は理解できるが、そのコーディネート手法は、積極的かつ細やかであるとは言えない。
 そのため研究成果に偏りが有り、また数もやや少ないように感じられ、ネットワーク構築型からの継続性の強みを活かした産業創出基盤の確立には至っていない。
 今後、より能動的なコーディネート活動を行い、ニーズ・シーズマッチングの最適化による地域の新技術・新産業創出を期待する。
3*研究成果の実用化・企業化の状況及び今後の見通し
 事業化としてインパクトはさほど大きくないが、実用化2件、商品化1件など一定の成果を生んでいることは評価できる。しかし、静岡県の産学官ポテンシャルからは、より多くの成果創出が期待できる。
 研究成果の実用化のためには、ニーズの存在を前提としたうえで、良いシーズを集めることが最も大切である。そのためには公募に頼らず、大学等を頻繁に訪れ、研究者から本音を聞くことが大切であり、事後のフォローアップも積極的に行うようなコーディネート活動が求められる。
4*諸事業への橋渡し実績及び今後の見通し
 成果物の実力は不明であるが、橋渡し実績が3件とはやや少ないと感じられる。しかしRSPから直接の橋渡しではないが、国の各種産学官連携事業を新規で立ち上げるなど、県としての積極的な科学技術政策姿勢は高く評価できる。また、県単独での助成事業制度を含め産学官連携強化の方向性が打ち出されているなど、活発な展開を図っているので今後に期待する。
5*総合評価
 全体として十分満足がいくコーディネート活動には至っていない。待ちの姿勢でなく、大学等の研究シーズから実用化・産業化が生まれる基盤形成のため、頻繁に大学等に通い、研究者との人間関係を築き、研究者の意識改革を行うようなアクティブな活動を期待する。
 静岡県は、地域結集型共同研究事業、知的クラスター創成事業、都市エリア産学官連携促進事業など、国の産学官連携事業を多く実施しているので、それら事業間の連携を図ることにより、より多くの成果を期待する。また、全県で実施中の他事業のコーディネータも含めた会議は非常に良い企画であり、今後のインフラとなるので継続を期待する。

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This page updated on March 18, 2003

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