JSTについて

理事長挨拶

画像:国立研究開発法人科学技術振興機構 理事長 橋本 和仁

昨年は、第2次トランプ政権の誕生を受けて国際情勢が大きく変動しました。低コストかつ高性能を実現したといわれるDeepSeek-R1を中国のAIスタートアップ企業が発表しゲームチェンジを起こすなど、科学技術・イノベーションにおいても国際的な競争環境を一変させるような大きな変化がありました。このように、先端科学技術の基礎・基盤研究の成果が社会を変えるほどの影響をもたらすとともに、その社会実装までの期間が急激に短くなり、近年、それがさらに加速しています。複雑で多様な課題が顕在化する中、日本が直面する課題を解決し、持続的な成長を実現していくためには、科学技術・イノベーションの発展は不可欠です。JSTは、科学技術・イノベーション政策の中核的な実施機関として、これからもその責任を果たし、社会とともに前進してまいります。

本年は、日本の研究力の復活を最重要課題と位置付け、最先端の基礎・基盤研究の成果を創出するだけでなく、国際頭脳循環のさらなる拡充に取り組み、世界に日本のプレゼンスを示していきます。具体的には、研究開発戦略センター(CRDS)の機能強化を図り、トップ研究者で構成される委員会にて、基礎・基盤研究において注力すべき先端領域の特定に取り組みます。これを活用して戦略的創造研究推進事業や先端科学技術を重点支援するプログラムなどを促進し、特に独創的で挑戦的な研究に取り組む研究者の活動を支え、新たな発見や技術開発につながるよう支援に努めます。

また、科学技術先進国やASEAN諸国との共同研究事業を推進するとともに、成長するインドとの研究交流基盤の形成および拡大を目的として、昨年、インドの若手研究者を対象とした招へいプログラムを立ち上げました。本プログラムでは、日印の研究室レベルでの共同研究を通じて、博士後期課程学生やポスドク研究者を日本に迎え入れています。2026年度には本事業を大幅に拡充し、より多くの若手研究者を招へいすることで、日印間の頭脳循環を促進し、共同研究を一層活性化していく予定です。

一方で、研究成果が社会経済に与える影響の拡大や国際共同研究の重要性の増大、さらに地政学的緊張の高まりといった状況から、研究セキュリティーの確保は、国際共同研究を推進するためにも対処すべき喫緊の課題です。研究者や研究成果を適切に保護しつつ、開かれた研究環境を守るため、日本の先頭に立って研究セキュリティー確保への取り組み(JST-TRUST)を実施していきます。

また、AI for Science(科学の加速に向けたAI)やGX(グリーントランスフォーメーション)技術の推進、革新的な情報通信技術の創出と研究人材育成の推進、大学発スタートアップの創出力強化、若手研究者や研究開発マネジメント人材、科学技術政策フェローの育成、大学ファンドを活用した国際卓越研究大学への支援といった多方面の取り組みにも引き続き注力してまいります。

本年も、皆さまの変わらぬご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

令和8年1月
国立研究開発法人科学技術振興機構
理事長

橋本 和仁の直筆サイン