JSTについて

理事長挨拶

画像:国立研究開発法人科学技術振興機構 理事長 橋本 和仁

昨年は、国際情勢の緊張が一層高まる中、国内では多くの自然災害に見舞われました。また、生成AI(人工知能)の急速な進化が、社会全体に大きな影響を及ぼし、さまざまな分野に変革をもたらしました。科学技術の持つ可能性を改めて実感するとともに、その恩恵を社会へ還元する責任の大きさを痛感した1年でもありました。このような複雑で多様な課題が顕在化する中、日本が直面する困難を乗り越え、持続的な成長を実現するためには「新たな力」が不可欠です。科学技術・イノベーションは、その「新たな力」の源泉です。JSTは、科学技術政策の中核的な実施機関として、これからもその責任を果たし、社会とともに前進してまいります。

本年は、日本の研究力を一段と高め、世界に発信するために、戦略的創造研究推進事業や先端科学技術を重点支援するプログラムなど、先進的な研究を支援する事業をさらに強化していきます。特に、独創的で挑戦的な研究に取り組む研究者の挑戦を支え、新たな発見や技術開発につながるよう支援を進めます。また、国際頭脳循環のさらなる拡充を目指し、科学技術先進国やASEAN諸国との共同研究事業である「ASPIRE」および「NEXUS」を推進するとともに、新たにインドとの若手研究者招へい事業を開始します。インドは、理工系人材の育成で注目される国であり、その知識と技術の潜在力を生かした日印間の協力を深めることで、両国の未来に資する取り組みを加速してまいります。

さらに、昨年立ち上げた「情報通信科学・イノベーション基盤創出(CRONOS)」では、基盤研究の推進と、概念実証や新しい技術モデルの構築も支援し、また、高度研究人材育成を本格化させていきます。このような取り組みを通じて、科学技術の進展が日本国内のみならず、世界全体の課題解決に寄与することを目指します。

一方で、地政学的な緊張の高まりや、新興技術の社会への影響が広がる中、研究の自由と技術流出などのリスクから研究を守ることを両立させるための努力も不可欠です。JSTは、研究セキュリティーの確保に向け、アカデミアや政府との連携をより一層強化し、最先端の研究や国際共同研究を安全かつ円滑に進められる環境の整備に取り組みます。

また、GX(グリーントランスフォーメーション)技術の推進、大学発スタートアップの創出力強化、若手研究者や研究開発マネジメント人材の育成、大学ファンドを活用した国際卓越研究大学への支援といった多方面の取り組みにも継続的に注力してまいります。これらの活動を通じて、日本の研究基盤をさらに強固にし「日本の研究力復活」という目標を達成すべく、全力を尽くします。

本年も、皆様の変わらぬご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

令和7年1月
国立研究開発法人科学技術振興機構
理事長

橋本 和仁の直筆サイン