制度概要
各支援メニューの概要 : 産学共同(本格型)

目的、狙い

産学共同(本格型)(以下、「本格型」という)は、社会課題解決等に向けて、大学等の基礎研究成果を、企業と大学等の産学共同研究により可能性検証・実用化検証し、中核技術を構築することが目的です。
具体的には、社会的・経済的なインパクトに繋がることが期待できるイノベーションの創出に向け、科学技術の知見に基づいた、中核となる技術の構築、或いは中核技術の構築に資する成果を得ること(例:中核技術の構築の障壁となる技術的リスクの低減等)を目指します。
本格型による支援終了後には、得られた成果を基に、企業において実用化に向けた研究開発を継続していただくことで、科学技術イノベーションの創出や、SDGs等の国際的な目標達成への貢献、社会的・経済的な波及効果の創出を期待します。自然科学と人文・社会科学の融合による総合知を活用する提案も期待します。
なお、2023年度においても、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、デジタル実装を通じて地域が抱える課題の解決に資する研究開発の提案も期待します。
※1:本格型における技術シーズとは、社会的・経済的・技術的課題に対する解決策の基となる研究成果を示します。原則は特許権等の知的財産権です。
※2:本格型では、要素技術や動作原理の検証などの基礎研究に近い研究開発フェーズから、実用環境でのプロトタイプ作製、生産検証などの応用研究・開発研究までの幅広い研究開発フェーズを支援対象とします。
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支援の概要

産学共同(本格型)では下記の内容にて公募を実施します。
課題提案の要件 提案者 研究開発体制 支援規模 資金タイプ
● 大学等 の研究成果に基づく技術シーズが存在していること。なお、技術シーズとしては、原則として特許権等の知的財産権として確保されていることを期待しますが、既に保有しているか否かに拘わらず、知的財産戦略において競争優位性をどのように確保するのか記載することが必要。
●技術シーズを実用化検証するための、産学共同による具体的な研究開発計画が立案できており、達成すべき目標が明確にされていることが必要。
●企業等に所属する企業責任者と、大学等に所属する研究責任者の連名での課題提案であることが必要。
●企業責任者(プロジェクトリーダー):
日本の法人格を有し、研究開発部門を有する民間企業に常勤していること。

●研究責任者: 技術シーズの創出に関わった(技術シーズが特許等の知的財産権の場合、その発明者)、日本国内の大学等に所属している研究者
●複数の企業、大学等から成る研究チームも可能
●JSTは各機関と個別に委託研究開発契約を締結
●研究チームの全機関で共同研究契約を締結
金額:
上限5,000万円(年額)
※初年度は上限2,500万円
※間接経費を含む、税込
期間:
最長5年度
マッチングファンド
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事業推進体制・研究開発体制

本格型における研究開発は、企業と大学等からなる産学共同研究チームで実施していただきます。また、本格型では企業側の代表者を「企業責任者」、大学等側の代表者を「研究責任者」と称し、企業責任者が産学共同研究チーム全体の代表者(プロジェクトリーダー)となります。
JST は産学共同研究チームの所属機関に研究開発費を支出し、産学共同研究チームに対しPO 等による技術支援を行います。
産学共同(本格型)研究開発実施体制図
※1 JSTは個々の研究開発機関(企業、大学等)と個別に委託研究開発契約を締結
※2 参画機関の間で共同研究契約を締結
※3  マッチングファンド(研究開発費を負担)
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対象分野と各P0について

第1分野(ICT・電子デバイス)
PO:石井 真 (元 ソニーLSIデザイン株式会社 代表取締役社長)
新型コロナウィルスの感染拡大はオンラインコミュニケーションの普及を加速し、5Gの普及、進展によってメタバース社会の到来を予感させる時代となってきました。一方、人口問題、格差問題など地球規模で顕在化している様々な問題の解決に向けてSDGsに代表されるグローバルな取り組みの重要性が増しています。AI技術の急速な発展に象徴されるようにICT技術の進化スピードは目覚ましく、その技術革新が我々をとりまくさまざまな社会課題の解決に大きな役割を果たすとともに、新たな産業、雇用を生み、我々の未来をより豊かで快適なものにしていくことが期待されます。ICT分野の高度化と社会・産業への効率的な実装は、日本産業の国際競争力強化の視点からも急務であり、本分野の研究開発には大きな期待が掛かっています。
当該分野では、IoT/センサー/高速・広域通信/クラウド/AI/深層学習/自動運転/ロボット/xR/セキュリティ/量子コンピュータなど、社会や産業への影響の大きなテーマをキーワードとして掲げ、併せてこれらの技術を実現するキーデバイス全般にわたる提案を対象とします。ICTに関する技術開発およびその応用においては、該当技術の産業化を加速するためのビジネスモデル、標準化といった視点での検討も併せてお願いします。自然科学と人文・社会科学の融合による総合知を活用した新たな視点での取り組み提案にも期待しています。
第2分野(ものづくり)
PO:葛本 昌樹(三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 開発戦略部 技術統轄)
我が国の発展の礎を築いたのはものづくりの力であり、現在でも社会、産業の基盤となっています。先人たちの地道な努力により積み上げられてきた技術力ではありますが、一部では国際的な競争力を失いつつあるのが現状です。課題を発展的に解決し、社会を先導する競争力のあるものづくり基盤を構築するために、最新の科学技術を取り入れた革新的な製造技術の研究開発と、それに基づく新たな生産加工システムの構築、それによる国際的にも高い競争力を有する工業製品群を実現することが期待されています。
このような背景のもと、当分野では社会・産業の基盤となるものづくり、中核的な製造技術に関するさまざまな研究開発の提案を広く対象とします。
ものづくりに関する技術の発展及び産業基盤の強化においては、今までの経験則に頼る開発に終始せず、革新的な製造技術を提案し、かつ科学的にメカニズムを解明して、科学に裏打ちされた確かな基盤技術とする必要があると考えます。
当該分野では、ものづくりの基盤をなす中核的な製造技術群にブレークスルーをもたらす新たな加工法、また関連する高度な計測/自動化/システム化技術と加工機械/工具/金型、さらには超精密/高機能高付加価値/低環境負荷の製造技術と工業製品、などをキーワードとして、広く生産技術及びそれに関連する提案を扱います。なお既存のものづくり技術の活用を指向するデジタル技術ではなく、ものづくり基盤に新たなブレークスルーをもたらすハードウェア開発を指向した提案が望まれます。
本分野では、プロトタイプの開発やスケールアップ試験など、技術移転に向けて、企業が主導的な役割を担えるように、委託費を適切に配分した提案を優先します。また、シーズ技術の社会実装を円滑に進めるため、提案時に、産学共同で事業化を見据えた研究開発方針と知財戦略が策定されていることを求めます。特に、有効なシーズ特許を保有しているか、それに代わる知財戦略を策定していることは重視します。
第3分野(機能材料)
PO:杉本 諭(東北大学大学院工学研究科 教授)
持続可能社会の構築に向けて、地球温暖化の大きな要因とされる温室効果ガスの削減を目指すカーボンニュートラルや省エネルギーが叫ばれています。同時に、様々な製品を製造または使用する過程において、利用する資源の有効活用や省資源からリサイクルまでに及ぶ資源循環の重要性が増しています。一方で、国家間の対立が増加し、ウイズコロナの時代に入って国内回帰やデジタル実装を通じた地域活性化が求められている中、我が国の世界における競争的優位性の確保は必須とされています。
このような背景のもと、材料は、その機能や性能を発揮させることによって、それらが使われる製品の小型化や省資源化、省エネルギーや高効率化などの実現に貢献できることから、社会の発展に対して大きな役割を担っています。当分野では、これらの材料に関する様々な研究開発の提案を広く対象とします。
材料が使われる製品の高性能化には、用いられる材料の機能や特性の向上が不可欠であり、そのためには物理、化学などの科学に基づいた知見やそれらを可能にするプロセスなどの技術シーズの向上が必要です。当該分野では、具体的なデバイスやシステムなどの応用製品を考え、その性能向上によって社会的・経済的インパクトを与えることを視野に入れて、新しい材料の開発や材料特性の向上を目指す研究、すなわち、既存材料を凌駕する新しい材料の開発や既存材料でも材料特性の向上に果敢に挑戦する研究の提案を期待します。また、これらの実現のため、マテリアルDXの利用、資源循環に資する新たなプロセス技術、特性やマルチスケールで組織・結合形態を評価できる先進的解析技術などを併用する研究開発の提案も歓迎します。
第4分野(アグリ・バイオ)
PO:木野 邦器(早稲田大学 理工学術院 教授)
地球規模で起きているさまざまな課題が現実の脅威となる中、カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に向けた技術開発が積極的に進められていますが、昨今の地政学的な情勢変化や世界的な人口増大などの社会不安を背景に、食料や資源・エネルギー供給における戦略的なサプライチェーンの構築など経済安全保障の強化や、自然災害や感染症拡大に対する強靭な社会システム構築への取り組みが加速化しています。
バイオテクノロジーは、SDGsに掲げられた17の目標のうち10以上の課題解決に貢献すると考えられており、「持続的な経済成長」と「社会課題の解決」の両立を目指すバイオエコノミー社会を推進する技術として期待されており、我が国では、「世界最先端のバイオエコノミー社会の実現」を「新しい資本主義に向けたバイオ戦略の目標」と位置づけています。Society 5.0の実現を目指す「第6期科学技術・イノベーション基本計画」では、産業基盤となる汎用性の高いバイオ技術の開発とその効果的な社会実装の重要性と必要性を掲げ、一方で、IoTやAIなど異分野との連携による新たな可能性の創出と循環型経済社会の実現にも期待が寄せられています。
このような背景のもと、当分野ではアグリ・バイオ産業の基盤となる技術開発や関連分野の研究を産学共同によって推進していただける提案を広く対象とします。明確な目標設定によって提案の基軸となる技術シーズの可能性と実用化検証を確実に行うことのできる具体的な研究開発計画を期待しています。
アグリ・バイオ産業では、その周辺技術の最近の開発スピードは極めて速く、遺伝子解析技術やゲノム編集技術によるタンパク質の改変、新品種の作出、高機能酵素や人工代謝系の導入など合成生物学的な手法によって、微生物をはじめとする動植物の改良と育種された生物による物質生産に新たな展開と大きな可能性が示されています。さらに、化石資源からの脱却を目指したバイオリファイナリー技術への転換、バイオマス資源の増産や安定確保、化学品などにおける原材料生産から分離・回収・再利用、エネルギー生産、さらには健康社会の増進と幅広く、従来の農林水産業の枠を超えたバイオエコノミー社会を牽引する産業技術として、その技術革新に大きな期待が寄せられています。
また、提案する開発研究が目標とするアウトプットやアウトカムには、学術的価値や経済的価値の創出に加え、環境への配慮、倫理的・法的・社会的問題への対応による社会的価値の創出、IoT、AIとの融合による技術、検出・解析技術やトレーサビリティによる品質管理、新たな評価手法となっているLife Cycle Assessment (LCA)の導入など、社会実装を見据えたアグリ・バイオ分野に関わる周辺技術などを包括していることも重要であり、エコシステムの構築に向けた異分野連携の取り組みも重要な視点となります。
また、生物の多様性や生存戦略に学ぶ新たな技術の開発や、複雑系あるいは共生系に着目した生物間コミュニケーションなど生態系ネットワークに見いだされる新奇な生物機能やその制御技術にも、新たな可能性が拡がっていると思います。
当該分野では、植物工場/生物農薬・機能性飼料/多収品種・耐病性品種、機能性食品/食の安全・安心/品質管理・保証、機能性素材/高機能生体分子/生物機能の活用/バイオミメティクス/生分解性、光合成、健康、環境、生物データベース、細胞解析、増殖計測、バイオ製造プロセスなどをキーワードに、バイオエコノミー社会を牽引するアグリ・バイオ産業の基盤となりうる技術に関連するテーマを広く対象とします。
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独立行政法人 科学技術振興機構