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モデル化の概要および成果 |
グルクロン酸転移酵素(UGT1)遺伝子の変異を検査手段とする薬物代謝検査キットを試作する。UGT1をコードする遺伝子の変異の例としては、一塩基変異やプロモーター領域でのTA配列の挿入数の変異が知られている。本開発では特に日本人(東洋人)に特異的な変異であるエキソン5領域中のTyr486Asp変異、及び他のエキソン中でGly71Arg、Pro229Gln、Arg367Glyの変異、並びにプロモーター領域のTA配列の挿入数の変異を検査するキットを開発した。本開発の結果、人工ミスマッチを導入したプライマーを用いるプライマー伸長法により、エキソン5領域中のTyr486Asp変異を特異的にしかも簡便に検査できるキットの開発・試作に成功した。開発した検査方法は、既存の方法と比較しても操作性、性能共に優れたもので、臨床応用できるものであることが判った。同様な手段を適用することにより、他の部位の変異検査キットの開発も可能であり、引き続き開発中である。
※TA配列・・・RNAポリメラーゼが転写を開始する部位から5'側数百塩基にある領域。あらゆる生物に一定の相同性が見られる。転写開始位置を正しく決めるのに重要である。
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2 ) |
事後評価 |
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モデル化目標の達成度
本来の相補塩基とは異なる人工ミスマッチを導入した特異性の高いプライマーを用い、グルクロン酸転移酵素エキソン5領域変異検出キットの試作に成功しており、他の試作キットにも目処がついた様子である。 |
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知的財産権等の発生
特許1件出願済み。 |
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企業化開発の可能性
本検査キットでの臨床応用可能な性能を確認することにより、一塩基変異の検査方法として広く応用できそうである。自動化によって企業化の可能性は高いと思われる。 |
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新産業、新事業創出の期待度
独自の遺伝子変異検査法の開発が図られ、今後多くの遺伝子の変異検査に応用できるようになれば、テーラーメイド医療への貢献も期待できる。 |
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3 ) |
評価のまとめ |
本試作品キットの評価は、臨床検査全例で直接シーケンス法での結果と一致し、高い信頼性が得られているが、更に抽出精製したゲノムの前処理方法の改善、高感度検出方法の採用、医療現場での自動化装置の開発等、今後の成果に期待する。また、プロモーター領域や他のエキソン領域での変異検査キットの早期開発にも期待したい。 |