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資料4

開発課題名「暗視野X線タイコグラフィ法の開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成26年12月〜平成30年3月

チームリーダー :  高橋 幸生【大阪大学 大学院工学研究科 附属超精密科学研究センター 准教授】
中核機関 :  大阪大学
T.開発の概要
 X線タイコグラフィは、高い空間分解能を有するX線位相イメージング法であり、さまざまなバイオイメージング・構造物性研究への応用が期待されている。本研究開発では、目的の空間分解能・感度を達成するために必要な回折強度のダイナミックレンジを大幅に圧縮する新手法「暗視野X線タイコグラフィ法」を開発し、世界最高の空間分解能・感度を有するX線タイコグラフィを実証する。
U.開発項目
(1)高分解能・高感度暗視野X線タイコグラフィ法の確立
 暗視野X線タイコグラフィ専用の光学架台、X線集光用の多軸調整機構、試料チャンバー、試料ステージを開発し、ハイブリッド型ピクセルアレイ検出器(EIGER 1M)を導入して測定専用装置を完成させた。
 位相検出感度はタンタルテストパターンの測定をSPring-8にて実施し、0.0017ラジアン以下の位相感度を達成した。2次元分解能10ナノメートル以下の目標に対しては、同じくタンタルテストパターンのSPring-8における測定で位相像のピクセル分解能8.1ナノメートルを達成した。
(2)暗視野X線タイコグラフィ法の応用および普及・促進
 混合状態再構成アルゴリズムやクラマース・クロニッヒの関係式を導入したタイコグラフィ位相回復計算ソフトの開発を行い、タイコグラフィで可視化される試料の複素透過関数の信頼性を向上させることに成功した。実際に磁性細菌MO-1のナノ構造観察、酸素吸蔵放出材料のナノスケール化学状態分析に応用し、それぞれ論文発表、プレスリリースと成果発表を行った。
V.評 価
 本課題は、放射光のコヒーレント成分を利用した暗視野X線タイコグラフィ法の開発である。
 開発は順調に進捗し、特に高速かつ高感度なハイブリッド型ピクセルアレイ検出器の導入後は一層の進展をもたらした。生物試料や材料試料の観察へ適応し、中でも自動車の排ガス浄化触媒材料の化学状態を可視化した成果は高く評価できる。
 今後は、コヒーレント成分を多く含む新しい放射光施設への導入も期待でき、多くの専門家の協力のもと、本装置の応用展開を進めて欲しい。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。 [S]