資料4

開発課題名「低温光共振器を用いた超高安定光源の開発」

一般領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  坪野 公夫【東京大学 大学院理学系研究科 教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  ネオアーク(株)、(独)産業技術総合研究所、高エネルギー加速器研究機構
T.開発の概要
 低温(10K)光共振器を基準にしてレーザー周波数を制御することにより、超高安定なレーザー光源システムを実現する。本課題では、精密計測、光学技術、低温技術の高度な技術を統合することにより、高性能かつ産業応用を視野に入れた汎用機器を開発する。このような先端的なレーザーシステムは、光格子時計、超高分解能分光、高精度ドップラー測距などの先進分野でも強く求められている。
U.開発項目
(1)高安定レーザー技術の確立
 1Hzにおける周波数安定度として100Hz/√Hzを有するプレ安定化レーザーの開発を目標としたが、最終的には、2Hz/√Hzの周波数安定度を達成した。τ=0.1sにおけるアラン分散は3×10-14であった。同プレ安定化レーザー(外部共振器型ダイオードレーザー:波長1,396 nm、出力100 mW)については、参画機関であるネオアーク(株)が製品化し、市販されることとなった。
(2)低温光共振器の開発
 光共振器の低温化に関して、7Kまで冷却することにより、温度安定度のスペクトルとして0.4μK/√Hzを得ることに成功した。いずれも、目標(到達温度:10K、温度安定度:1μK/√Hz以下)を上回る成果である。
(3)高安定レーザーの開発
 低温のシリコン光共振器を基準にしたPDH法によるプレ安定化レーザーの周波数ロックを行った。暫定値ではあるが、誤差信号評価で目標値である1秒でのアラン分散10-16を下回る雑音レベルを実現していると思われる。
V.評 価
 低温光共振器を周波数基準に用いた超高安定化半導体レーザーを開発するという当初の目標を達成することに成功した。冷凍装置の振動などの技術的課題を克服した成果である。本開発で実現したレーザーは実際の応用先の一つである光格子時計への導入のみならず、超高分解分光用レーザー光源としての広範囲な領域での利用も大いに期待できる。汎用性をはかるための工夫をするなど、今後の発展を期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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