資料4

開発課題名「誘電スペクトロサイトメーターの開発」

一般領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成21年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  大森 真二【ソニー(株) メディカル事業ユニット研究開発部門 医用技術研究部 統括課長】
サブリーダー :  水谷 修紀【東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 教授】
中核機関 :  ソニー(株)
参画機関 :  東京医科歯科大学、京都大学
T.開発の概要
 再生医学において、標的細胞をラベルフリーで分析・採取できる装置は国内外に現存しない。本開発は、マイクロ流路中を高速で流れる細胞の誘電スペクトルを瞬時に分析して標的細胞のみを採取する誘電スペクトロサイトメーターの実現を目指す。これにより、標的細胞を染色せず生きたまま採取する単一細胞分析技術の装置化が可能となり、将来的に再生医学の先端研究分野に大きく寄与することが期待される。
U.開発項目
(1)マイクロ流路中における細胞操作技術の確立
 レール型電極構造を採用することにより、マイクロ流路内で毎秒200〜300個の細胞分取を達成し、最終目標を上回った。流動条件を最適化することで、更に分取速度を向上させることが可能である。また、流路素子の狭窄部加工寸法において標準偏差6%の精度を達成し、最終目標を上回った。
(2)超高速多点周波数誘電アナライザーの完成
 測定周波数点16(0.1〜20MHz)、キャパシタンス分解能 ≤ 5 x10-16F、コンダクタンス分解能 ≤ 3x10-9S、サンプリング速度25,000/秒の分析性能を達成した。また、細胞膜キャパシタンス、細胞質誘電率、細胞径をリアルタイムで算出し、それらを元に分取判定でき、最終目標を達成した。
(3)試作装置の医学的評価
 試料調製〜誘電測定、解析までの医学的評価プロトコルを8種確定し、最終目標を上回った。しかし、装置開発の最終調整や臨床評価の手続き等に少し時間を要し、残念ながら開発期間中に医学的評価を終えることは出来なかった。
V.評 価
 コールターカウンターの原理を基に、高度な微細加工技術と情報処理技術を活用して抜本的に発展させた 単一細胞の細胞分析・分取装置を開発した。マイクロ流路中の細胞操作技術を確立し、超高速多点周波数誘電アナライザーを完成し、FACS(蛍光抗体法)には多少劣るが無標識での細胞分取が可能な装置を開発した。医学的評価に関しては、有用な応用事例への目処が立った段階であり、多くの疾患で細胞の医学的性質とβ帯緩和周波数の相関を調べる等、従来法では達成出来ない応用事例に向けて更なる探求を続けるなど、今後の実用化に向けた取り組みに期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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