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酵母エピジェネティクス国際会議開催報告
2013年09月02日〜04日 福井県グランディア芳泉

さきがけ研究領域「エピジェネティクスの制御と生命機能」の3名の研究者(さきがけ研究者:沖昌也 福井大学大学院 工学研究科 准教授、飯田哲史 国立遺伝学研究所 細胞遺伝研究部門 助教、田上英明 名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科 准教授)のオーガナイズにより、酵母エピジェネティクス国際会議が開催されました。シンポジウム発表者は、講演者33名(うち海外研究者14名)、ポスター発表者17で、口頭発表は10セッションからなり、活発な議論が行われ、シンポジウムは成功裏に終了しました。参加者総数は119名でした。

本シンポジウムでは、エピジェネティックス研究における酵母モデルの非常に高い有用性がいたるところで示されました。現在日本国内外では、ヒトなどの多細胞生物におけるエピジェネティックス研究が盛んになっていますが、先進的な分子機構モデルの提示には酵母などのシンプルなモデル生物研究の研究推進が必要不可欠であることが強調されていました。

米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の Pillus博士は、酵母からヒトまで高度に保存されている複合体の解析において、酵母でしか実現できない詳細かつ大胆な研究のアプローチを紹介しました。高度な遺伝学的解析による予想外の発見について、遺伝子領域におけるヒストン修飾を介した制御について、活発な議論がなされました。

台湾・中央研究院のKao博士が、ヒストンH2Bのユビキチン化を介してDNA複製フォークを安定に保ち、チェックポイントの活性化が正常に促進されるメカニズムについて発表され、活発な議論がなされました。

全体概要としては、初日は、ヘテロクロマチンとncRNAに関する講演、2日目はテロメア、セントロメア、染色体バウンダリー構造、tRNA遺伝子やコンデンシン分子、核膜孔複合体について議論されました。3日目はストワーズ研究所のWorkman博士が転写と共役したクロマチンダイナミクスについて講演されました。その後、酵母を用いたエピジェネティクス研究の新分野について、数理モデルとの融合や酵母の形態変化機構について議論されました。

海外招待講演者の多くの講演トピックが異なるにも関わらず、ノンコーディングRNAの発現や機能に関するものが多かったのは非常に興味深い傾向でした。これまで、mRNAに注目した遺伝子発現の研究領域では、様々なヒストン修飾の発見とその制御の研究がおこなわれてきました。現在では遺伝子コード領域にみられるヒストン修飾やクロマチンリモデリングが、ノンコーディングRNAの流れ込みや遺伝子コード領域内のプロモーター活性の抑制に関与することが明らかになってきています。この傾向は、クロマチン・エピジェネティックス研究が転写後直ちに分解されるノンコーディングRNA機能や役割の解明に移行していることを示していると考えられます。

シンポジウムの最後には、酵母のエピジェネティックス研究の現在・未来についてパネルディスカッションが行われ、各国の酵母研究の状況や、学生獲得や、研究費獲得の現状と展望について活発な議論が行われました。解析技術の発達によりマウスやヒト細胞などを用いた研究が各段に行いやすくなり、酵母をモデルとして用いる研究提案に対して、研究費の獲得が難しい傾向が強くなっていることが議論されました。しかし、研究者を目指す学生の教育を行ううえで、酵母を利用することは極めて有用であり、また、研究活動にとっても酵母を用いて高度な遺伝子組み換え技術や詳細な解析を行うことで、全く新しい研究が展開できる可能性があります。他の生物に比べ酵母の有用性の高さが認知されるよう学会や著名研究者などに働きかけていく必要があるという議論が行われました。

3日間を通して、非常に質の高いレクチャーと研究議論がなされ、セッションは終始大盛況のもと本会議は閉幕となりました。