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シンポジウム「東京電力福島原子力発電所事故への科学者の役割と責任について」報告
2011年11月26日 日本学術会議講堂

2011年11月26日(土)、日本学術会議と科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)は、日本学術会議講堂にて、シンポジウム「東京電力福島原子力発電所事故への科学者の役割と責任について」を開催しました。

本シンポジウムは、東京電力福島原子力発電所事故という日本の将来に大きな影響を与える未曾有の大事故に対して、今後、科学者および科学者コミュニティがどのような貢献を果たしていけるか、科学者が持つ知識や経験を、分野・組織・世代・国を越えて課題の解決に向けて総合的に発揮できる仕組みをいかに構築していくか、などの視点から科学者の役割と責任について活発な議論を行いました。

吉川弘之氏(JST CRDS センター長)、大西隆氏(日本学術会議 会長、東京大学 教授)の開会挨拶につづき、東電福島原発事故後、内閣府において事故対応を行った広瀬研吉氏(内閣府本府 参与、東海大学 教授、CRDS 上席フェロー)より、事故の全容に関する報告がありました。次に、ケヴィンD.クロウリー(Kevin D. Crowley)氏(米国科学アカデミー(NAS)原子力・放射線研究委員会(NRSB) シニアボードディレクター)の基調講演「東京電力福島原発事故への対応における科学者の役割と責任:米国の見方」では、科学者は政策立案者の意志決定の助けとなるような事柄に対する客観的なデータを提供する役割があること、政府や国民から信頼を得るためには、政府から独立した中立の立場の組織が必要であること、そして調査研究のプロセスには透明性が必要であることなどの指摘がありました。矢川元基氏(東洋大学 教授、原子力安全研究協会 理事長、日本学術会議 連携会員)の基調講演「日本学術会議の対応、科学者の貢献」では、日本学術会議および関係科学者が震災後の津波や福島原発事故に対して行ってきた提言・助言に関する紹介とともに、福島原発事故の状況に関する情報開示プロセスの問題点などの指摘がありました。佐々木康人氏(社団法人 日本アイソトープ協会 常務理事、日本学術会議 連携会員)の基調講演「東電福島原発事故後の放射線防護対策 ―リスクコミュニケーションの担い手は?―」では、放射線防護管理の国際的な枠組み、国際放射線防護委員会(ICRP)の最近の勧告、放射性物質放出後の非常時の対応や汚染の事後処理について、詳細な紹介がありました。

つぎに、東電福島原発事故後、各分野からどのような貢献をしてきたか、また実際の経験を通じて、各分野が協力しつつ科学全体がどう貢献するかという全体協力の観点から、原子力分野[田中知氏(東京大学 教授、日本原子力学会 会長)]、化学分野[岩澤康裕氏(電気通信大学 特任教授、日本化学会 会長、日本学術会議 連携会員)]、土木分野[米田稔氏(京都大学 教授)]、機械分野[白鳥正樹氏(横浜国立大学 特任教授、日本学術会議 連携会員)]、放射線医学分野[草間朋子氏(大分県立看護科学大学 学長)]、経済学分野[黒田昌裕氏(東北公益文科大学 学長、CRDS 上席フェロー)]の専門家より、講演いただきました。

パネルディスカッションは、パネリストとして、ケヴィンD.クロウリー氏、石田寛人氏(金沢学院大学 名誉学長、財団法人原子力安全技術センター 会長)、城山英明氏(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)、田中知氏、保坂直紀氏(読売新聞東京本社科学部 次長)が登壇し、有本建男氏(JST CRDS 副センター長、社会技術研究開発センター センター長)がモデレーターをつとめ、科学者および科学者コミュニティの役割と責任に関する議論が行われました。

本シンポジウムの締めくくりとして、吉川氏からは、基礎研究であっても税金で行われている以上、その研究費には社会の期待が埋め込まれており、科学的知識の構造と社会とのギャップを埋めること自体が科学研究の大きなテーマになり得ること、科学者と政策立案者との関係について今は連続性がないが、役割の与え方により連続的になりうることなどが述べられました。

今後、科学者と社会との関係、科学者と政府・行政との関係、関係科学者の合意した声(Consensus voice)、行動規範の作成などについて、さまざまなステークホルダーを巻き込んだ議論を進めていくこと、そして直面している東電福島原発事故に対して科学者の総力を結集して貢献していくことが必要だと考えられます。

講演内容の詳細については、本シンポジウムのホームページに掲載されている講演資料からご覧いただけます。

詳しい情報は、以下のURLからご覧ください。

日本語版講演資料掲載サイト

英語版講演資料掲載サイト

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