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発生現象の数理モデル化に関する国際シンポジウム開催報告
−2010年06月23日(水) 京都国際会議場−

発生現象の数理モデル化に関する国際シンポジウム開催報告_1 
発生現象の数理モデル化に関する国際シンポジウム開催報告_2 

さきがけ研究課題「上皮組織の形づくりを理解する」(さきがけ研究者:京都大学大学院医学研究科准教授 三浦 岳)において、平成22年6月23日に「After Turing: Toward novel mathematical modeling of biological forms」と題する国際シンポジウムを京都国際会議場で開催しました(参加人数:120名)。本シンポジウムは、日本発生生物学会とAsia-pacific developmental biology network の合同年会と共催で行われました。

冒頭の主催者の趣旨説明に続いて、計6件の招待講演(海外2件、国内4件)を実施しました。

・大阪大学の近藤滋先生は導入としてTuring の定式化したモデルの概略を説明し、自らの行っている魚の縞模様に関する実験データを提示しました。

・北海道大学の堀川一樹先生は、体節形成と粘菌の構造形成に関する発表を行いました。

・Calgary 大学の Przemyslaw Prusinkiewicz 先生は、植物のshoot 形成時の自己組織化モデルとその応用によって多様な葉の形状を理解する、という趣旨の発表を行いました。発生生物学会は動物の研究者が多く、植物の形態形成の研究が受け入れられるかどうか不安が大きかったのですが、蓋を開けてみると現象の本質をとらえた単純なモデルで植物の多彩な形態を非常にうまく再現しており、今後の動物の発生生物学研究に如何に数理モデルを応用するかの手本となると思われました。

・CRG Barcelona の James Sharpe 先生は、四肢の発生時の軟骨原基の自発的パターン形成のモデルを発表しました。実測データに基づいた変化する形状の上で数値計算を行う興味深い発表で、以前出版されていない新規データであり、会場の注目を集めました。

・九州大学の巌佐庸先生は、九州大学で行っているグループの発生現象のモデル化(体節形成,腎臓の枝分かれ形成)の研究をまとめた発表を行いました。

・兵庫大学の本多久夫先生は、彼が定式化し、最近非常に多方面で応用されている vertex model の成立の歴史を概観し、現在の応用について述べました。

近年、発生生物学分野では、これまでの分子生物学一辺倒の研究戦略の行き詰まりから、定量生物、メカニックス、数理モデリング等、当さきがけ領域と近い思想の様々な分野の研究者を取り込む試みが行われています。今回のシンポジウム開催はこの流れに沿って行われ、発生学と数理生物学の融合分野の新たな発展の基盤となるものでした。今回のシンポジウムでは、生命モデル領域と生命システム領域が協力してオーガナイズを行い、周辺分野の若手研究者を積極的に取り込むことによって海外演者との実質的な共同研究の種を多く提供することで、今後の分野の発展に大きく貢献するものと思われます。