「戦略的基礎研究推進事業」平成10年度
採択研究代表者および研究課題一覧


6.研究領域「脳を創る」
研究代表者氏名 研究者所属及び役職 研究課題名
ナガオ ソウイチ
永雄 総一
自治医科大学
医学部
助教授
運動の学習制御における小脳機能の解明
ナカムラ ヨシヒコ
中村 仁彦
東京大学
大学院工学系研究科
教授
自律行動単位の力学的結合による脳型情報処理機械の開発
フカイ  トモキ
深井 朋樹
東海大学
工学部
助教授
時間的情報処理の神経基盤のモデル化
ホンダ マサアキ
誉田 雅彰
日本電信電話(株)
基礎研究所
主幹研究員
発声力学に基づくタスクプラニング機構の構築
(アイウエオ順)

総評 研究統括  甘利 俊一
  「新しい学問領域の創成を」

 「脳を創る」研究は21世紀に開花する大きな夢を育てる。脳の研究は着実に進展しつつあり、その秘密を情報の基本原理として理解し、新しい技術として生かす時代がこようとしている。コンピュータを中心とする情報技術の発展が、これを可能にする基礎を築いた。機はまさに熟さんとしている。
 とはいえ、これは容易なことではない。これまでの情報技術は脳の素晴らしさにあこがれを抱きつつも、これを敬遠してそれぞれ別の固有の道を歩んできた。いま、脳型の情報システムの創造に向けて、これらが協力するときがきたのである。このためには、数学、情報科学、物理学など多彩な方法論を駆使し、コンピュータ科学、人工知能、ロボット工学、ハードウェア技術、パターン認識、ニューラルネット、ファジィ、カオスなどなど、多様な分野から脳に向かって攻め込むことが重要である。新しい学問領域がここから生まれてくる。
 平成10年度の応募は、昨年度に比べてかなり減少した。これは新しい学問創造の苦しみを表すものともいえよう。しかし、多くの分野に根をおき、それぞれの特色を生かしつつ脳の核心に迫る応募が多数あり、それぞれの創意と意気込みが十分に感じられた。
 この中から限られた数を選考するのは至難の技ではある。アドバイザーの間での予備討論、応募者の面接を経て、四つの最終採択課題が決まったわけである。採択にあたっては、研究の豊かな構想とその実現性、具体性などについて留意するとともに、未来の情報処理技術である脳型情報処理システムの創出に向けて、大胆な一歩を踏み出す研究を意識した。研究提案は理論的なものから工学的なものまで広範にわたったが、特定分野に片寄らないよう配慮した。その結果、今回は計算理論、ロボット工学、ニューラルネット、情報処理に関するそれぞれの分野からの方法論をひっさげた、構想力、独創力の高いものを採択できたと考えている。これが「脳を創る」学問の創成につながるものと期待したい。


This page updated on September 25, 1998

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