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「新しい学問領域の創成を」
「脳を創る」研究は21世紀に開花する大きな夢を育てる。脳の研究は着実に進展しつつあり、その秘密を情報の基本原理として理解し、新しい技術として生かす時代がこようとしている。コンピュータを中心とする情報技術の発展が、これを可能にする基礎を築いた。機はまさに熟さんとしている。
とはいえ、これは容易なことではない。これまでの情報技術は脳の素晴らしさにあこがれを抱きつつも、これを敬遠してそれぞれ別の固有の道を歩んできた。いま、脳型の情報システムの創造に向けて、これらが協力するときがきたのである。このためには、数学、情報科学、物理学など多彩な方法論を駆使し、コンピュータ科学、人工知能、ロボット工学、ハードウェア技術、パターン認識、ニューラルネット、ファジィ、カオスなどなど、多様な分野から脳に向かって攻め込むことが重要である。新しい学問領域がここから生まれてくる。
平成10年度の応募は、昨年度に比べてかなり減少した。これは新しい学問創造の苦しみを表すものともいえよう。しかし、多くの分野に根をおき、それぞれの特色を生かしつつ脳の核心に迫る応募が多数あり、それぞれの創意と意気込みが十分に感じられた。
この中から限られた数を選考するのは至難の技ではある。アドバイザーの間での予備討論、応募者の面接を経て、四つの最終採択課題が決まったわけである。採択にあたっては、研究の豊かな構想とその実現性、具体性などについて留意するとともに、未来の情報処理技術である脳型情報処理システムの創出に向けて、大胆な一歩を踏み出す研究を意識した。研究提案は理論的なものから工学的なものまで広範にわたったが、特定分野に片寄らないよう配慮した。その結果、今回は計算理論、ロボット工学、ニューラルネット、情報処理に関するそれぞれの分野からの方法論をひっさげた、構想力、独創力の高いものを採択できたと考えている。これが「脳を創る」学問の創成につながるものと期待したい。
This page updated on September 25, 1998
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