「戦略的基礎研究推進事業」平成10年度採択研究課題の概要


1.研究領域「電子・光子等の機能制御」

研究代表者: 青柳 克信
所属・役職: 理化学研究所半導体工学研究室 主任研究員
研究課題名: 量子相関機能のダイナミクス制御
概   要: 量子状態を空間的・時間的相関を保って(ダイナミックに)制御する量子相関機能は、将来の超並列量子コンピューティングへの展開の基礎となる。本研究では、結合量子ドットや量子細線に対象を絞り、そこでのコヒーレントな時間発展制御や協同現象制御など量子相関機能の基本原理・物性を明らかにし、量子ビットや量子相関ゲートの固体デバイスによる実現をめざすことにより量子コンピューティングへの応用の可能性を実験的・理論的に探索する。

研究代表者: 伊原 英雄
所属・役職: 工業技術院電子技術総合研究所材料科学部 超伝導材料ラボリーダ
研究課題名: 最高性能高温超伝導材料の創製
概   要: 独自に発見したCu1234(CuBa2Ca3Cu4O12-y)系高温超伝導材料をベースに高温超伝導材料のC軸方向のコヒーレンス長を長くし、超伝導異方性を低減させる。さらに選択的オーバードーピングにより、超伝導転移温度を下げず、特定CuO2面の超伝導波動関数をd波からs波的に変換し、ab面内の超伝導異方性を下げる。これにより、Cu系で臨界電流密度、不可逆磁界とも最高性能を有する高温超伝導材料を創製することを試みる。

研究代表者: 川原田 洋
所属・役職: 早稲田大学理工学部 教授
研究課題名: 表面吸着原子制御による極微細ダイヤモンドデバイス
概   要: ダイヤモンドのホモおよびヘテロエピタキシャル成長技術、微細加工技術の高精度化により、高電界、高周波でのデバイス動作を検討する。さらに表面吸着原子制御をnmスケールあるいは原子スケールで行い、他の半導体では不可能な超微細FETあるいは新機能デバイスの作製をめざす。表面科学と電子デバイスにおける知的資産の有機的な連携により、将来の情報通信、エネルギー、セキュリティ産業への貢献が期待される。

研究代表者: 平山 祥郎
所属・役職: 日本電信電話(株)基礎研究所 特別研究員
研究課題名: 相関エレクトロニクス
概   要: 理想的な半導体薄膜ならびにナノ構造で現れる強いキャリア相関に着目し、現在物性研究に留まっている半導体における相関効果の研究を、超流動や超伝導に匹敵するインパクトの大きな相関効果に発展させることをめざす。具体的には電子、正孔の相関、結合ドット間のキャリアの相関、これらの相関と電磁波との相互作用を研究し、相関エレクトロニクスの可能性を追究する。

研究代表者: 鳳 紘一郎
所属・役職: 東京大学大規模集積システム設計教育研究センター 教授
研究課題名: 量子スケールデバイスのシステムインテグレーション
概   要: 半導体デバイスに内在するポテンシャル形状を外部より変化させ、その形状に依存して変形する電子エネルギー分布をベクトル出力として観測するボルツマン分布ロジックと、少数電子クラスターを利用した多値メモリ、ならびに共鳴トンネリングを採用した右脳型知的エージェントとを組み合わせて、大量のデータ(複雑な境界値問題など)を高速計算し、しかも特徴を把握して択一的な判断を実時間で下すことのできる、量子スケールインテグレーション・システムの構築をめざす。

2.研究領域「分子複合系の構築と機能」

研究代表者: 小夫家 芳明
所属・役職: 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科 教授
研究課題名: 生体のエネルギー変換・信号伝達機能の全構築
概   要: 超分子科学の手法を用いて、光合成アンテナ光捕集機能・光電荷分離、電子/プロトン共役輸送・酸素の協同的輸送・活性化など生体のエネルギー変換を担う人工システムを構築する。また脳・神経の信号伝達素子であるイオンチャネルが有する諸機能を発現する人工システムを構築する。これら生体の根幹機能の理解をベースに、エネルギーの化学的固定と効率的利用、信号の増幅・制御機能を有する素子の創製をめざす。

研究代表者: 高橋 保
所属・役職: 北海道大学触媒化学研究センター 教授
研究課題名: 次世代物質変換プロセスの開拓
概   要: 次世代の物質変換の化学として、一旦生成した炭素−炭素結合を活性化して、新しい選択性を発現した後に、改めて炭素−炭素を結合させる、という新しい概念に基づいた物質変換の化学の新しい分野を開拓する。この手法を展開することによって、従来の化学では合成することのできなかった有用な物質群の創製をめざす。

研究代表者: 橘 和夫
所属・役職: 東京大学大学院理学系研究科 教授
研究課題名: 複合体形成に基づく膜タンパク質の機能制御
概   要: 膜タンパク質は、その膜結合部位がお互いに認識・会合することで機能を発現する。一方、神経毒性などの強力な生理活性を有するポリ環状エーテル系の海洋天然物は、強い生体膜親和性を持つことにより、この貫通部位を認識することで活性を発現することが想定できる。本研究ではこれらの天然物をモデルとした機能制御低分子を用いて、膜タンパク質による細胞膜での情報変換の認識機構に迫る。

研究代表者: 堂免 一成
所属・役職: 東京工業大学資源化学研究所 教授
研究課題名: エネルギー変換機能を有する無機超分子系の構築
概   要: 精密に設計された無機ポリアニオンシートをベースに、ソフトケミカル的手法などを駆使して三次元的な超分子構造を構築し、これまでに達成されたことのない広い波長領域における高効率の光エネルギー変換系の実現をめざす。

研究代表者: 藤木 道也
所属・役職: 日本電信電話(株)基礎研究所 主幹研究員
研究課題名: らせん協調ハイパー高分子の創製と構造・物性・機能の相関
概   要: 熱による高速・可逆のらせん反転光学活性ポリシランに関する知見をもとに、種々の外場に対する高速らせん反転高分子複合材料の創製・構造同定・基本特性制御・理論構築・機構解明・プロトタイプのデバイス作製を行う。外場として、熱、電場、磁場、光、電気化学的酸化還元、光学活性低分子、液晶を用いる。研究により得られる高分子複合材料は、室温高速偏光スイッチ・メモリー、光学異性体分離スイッチカラムなどのユニークな製品への展開が期待される。

3.研究領域「ゲノムの構造と機能」

研究代表者: 石野 史敏
所属・役職: 東京工業大学遺伝子実験施設 助教授
研究課題名: 哺乳類特異的ゲノム機能
概   要: 哺乳類特異的ゲノム機能としてゲノム・インプリンティングをとらえ直し、配偶子形成過程でのゲノム刷り込みの実態の解明と分子機構に関わる因子を同定し、哺乳類をモデルとしたゲノム機能の獲得とその生物群の特殊性の関係の解析へと研究を展開する。また、顕微受精、クローン動物等の哺乳類初期胚操作技術におけるインプリンティングコントロールの重要性を明らかにし、この機能を応用した新しい生殖工学技術の開発をめざす。

研究代表者: 柴田 武彦
所属・役職: 理化学研究所遺伝生化学研究室 主任研究員
研究課題名: 組換えを介したゲノム動態制御
概   要: ゲノムは組換えを介して変化し、また、逆に変異を取り除く。本研究では組換えを介したゲノム動態制御を酵母、鳥細胞で解明する。特にクロマチンの解析に焦点を当て、組換え関連因子・酵素のヒトホモログを鳥の高頻度標的組換えDT40細胞へ導入し、その解析から高等生物ゲノム改変技術の構築をめざす。

研究代表者: 長田 重一
所属・役職: 大阪大学医学部 教授
研究課題名: アポトーシスにおけるゲノム構造変化の分子機構
概   要: アポトーシスでは、カスパーゼと呼ばれるプロテアーゼが活性化され、種々の細胞内分子を切断する。そして、その最終段階で、カスパーゼは特異的なDNase(CAD)を活性化し、染色体DNAを切断する。本研究は、アポトーシスのシグナル伝達機構、特にCADの活性化機構、反応機構、および、アポトーシスにおける染色体DNA切断の役割を解析し、細胞の癌化におけるアポトーシスの関与、癌に対するアポトーシスの治療応用への可能性をさぐる。

研究代表者: 松原 謙一
所属・役職: (財)国際高等研究所 副所長
研究課題名: 器官形成に関わるゲノム情報の解読
概   要: 高等生物の器官形成はゲノムの担う遺伝情報の遂次的発現に基づいて進行する。その過程で動員される数万に及ぶ遺伝子をゲノム手法により同定し、各遺伝子の経時的発現プロフィルを記載して情報発現の制御ネットワークを明らかにする。
 そのデータベースを基盤とし、器官形成、器官再生、薬理作用、疾病要因の問題等を解析する新しい方法論を提供する。

研究代表者: 森 浩禎
所属・役職: 奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター 教授
研究課題名: 大腸菌におけるゲノム機能の体系的解析
概   要: これまでの大腸菌ゲノムの全塩基配列に関する研究から、全遺伝子の半数約2,000は機能未知であることが明らかになった。本研究では、システマティックかつ網羅的に、機能未知遺伝子群の機能解析を行うと共に、機能ネットワーク、即ち各遺伝子、各タンパク質の相互作用解明から、大腸菌という一つの生物システム全体の統合像構築を目標とする。

4.研究領域「脳を知る」

研究代表者: 小西 史朗
所属・役職: (株)三菱化学生命科学研究所 室長
研究課題名: 抑制性シナプス可塑性の分子機構の解明とその応用
概   要: 興奮性シナプスだけでなく抑制性シナプスも長期増強などシナプス可塑性を示すことを最近見出した。このような抑制性シナプス可塑性の分子機構を生理・神経形態・分子生物学的手法を統合して究明し、これによってシナプス可塑性研究に未知の新局面を開くことを狙いとしている。また、抑制性シナプス増強機構に基づいた神経疾患の薬物療法など治療応用に直結する試みも実施する。

研究代表者: 清水 孝雄
所属・役職: 東京大学大学院医学系研究科 教授
研究課題名: 脂質メディエーターのdual receptor系と神経機能
概   要: 脳は脂質の宝庫と言われ、実際多くの脂質メディエーターが産生されているが、その生理的意義は明らかになっていない。本研究では、種々の脂質メディエーターの産生、放出、受容体、分解を綿密に解析し、神経系での多彩な作用の分子機構を明らかにすることを目標とする。その中で、特に脂質メディエーターの「dual receptor仮説」を検証し、アミンやペプチドなどの水溶性神経伝達物質と作用機序の違いを明らかにし、神経とグリア機能を調節する上での独自の役割を解明する。

研究代表者: 平良 眞規
所属・役職: 東京大学大学院理学系研究科 助教授
研究課題名: 脳の初期発生制御遺伝子群の体系的収集と機能解析
概   要: 頭部オーガナイザーに発現するホメオボックス遺伝子Xlim-1の標的遺伝子の解析により脳誘導のメカニズムを探る。また、脳の形態形成に関与する遺伝子群を、アフリカツメガエルとマウス胚より体系的に収集する。その中から重要と思われる遺伝子の機能解析をカエルではmRNA微量注入法で、マウスでは遺伝子ノックアウト法などで機能解析を行い、脳の初期発生のメカニズムをさぐる。

研究代表者: 津本 忠治
所属・役職: 大阪大学医学部 教授
研究課題名: 回路網形成における神経活動の関与メカニズム
概   要: 哺乳類の脳内神経回路網の形成は発生初期から中期にかけて遺伝情報に基づいて形成されるプロセスと、中期から後期の入力や神経細胞自身の活動によって修正あるいは精緻化されるプロセスからなる。本研究では後者の神経活動依存性の回路網変化のプロセスを解明し、ひいては生後初期の環境や学習が脳機能を変えるメカニズムを明らかにする。

5.研究領域「脳を守る」

研究代表者: 寺崎 哲也
所属・役職: 東北大学薬学部 教授
研究課題名: 脳関門排出輸送に基づく中枢解毒
概   要: 血液脳関門は異物の侵入から脳を守る『障壁』として働いていることが知られている。この研究では、さらに血液脳関門は不要な老廃物や異物などが脳内に溜まらないよう種々の汲み出しポンプが解毒機構として働いていることを明らかにする。脳機能支援システムとしての血液脳関門の役割を明らかにすると共に、この汲み出しポンプと脳の老化との関連性やポンプを利用した新しいクスリの開発の糸口をさぐる。

研究代表者: 遠山 正彌
所属・役職: 大阪大学大学院医学研究科 教授
研究課題名: 脳虚血により引き起こされる神経細胞死防御法の開発
概   要: 神経細胞は低酸素負荷により容易に死に至り虚血性脳障害を引き起こす。一方、アストロサイトは強い耐性を示す。本研究では、低酸素に耐性を示すことを可能とするタンパク発現の機序が神経細胞には欠如しているが、アストロサイトには備わっているという視点に立ち、これまで新規に単離した三種のストレスタンパクの機能解析を行い、アストロサイトに備わる虚血耐性機序を神経細胞に発現させることにより神経細胞を守ることをめざす。

研究代表者: 長嶋 和郎
所属・役職: 北海道大学医学部 教授
研究課題名: ウイルス性脳障害の発症機構の解明と治療法の開発
概   要: ウイルスによる脳炎・脳症は多くの場合致死的であるが、治療法は確立されていない。本研究は脳炎・脳症を発症させるウイルスの神経向性のメカニズムを明らかにする。さらに神経細胞に特異的に発現するウイルスベクターを用いて、各々のウイルスに特異的な抑制因子を用いた遺伝子治療法を開発し、脳炎・脳症の根本的な治療法の確立を目的とする。

研究代表者: 中別府 雄作
所属・役職: 九州大学生体防御医学研究所 教授
研究課題名: 活性酸素による脳・神経細胞の障害とその防御機構
概   要: 脳・神経細胞の生存と機能保持には核ゲノム情報の維持が必須であり、さらに脳機能に必須なエネルギー供給にはミトコンドリアDNAの維持が重要である。本研究では核やミトコンドリアDNAの酸化障害は神経細胞死を引き起こし、脳の老化や神経変性疾患の原因の1つとなるという仮説に基づき、その分子実態と防御機構を明らかにし、さらに障害を受けた脳の機能回復をめざして、神経前駆細胞からの神経細胞供給のメカニズムをさぐる。

6.研究領域「脳を創る」

研究代表者: 永雄 総一
所属・役職: 自治医科大学医学部 助教授
研究課題名: 運動の学習制御における小脳機能の解明
概   要: 小脳の機能に関して、運動学習が小脳回路のシナプス伝達可塑性に起因するという仮説を、随意運動などの高次機能を含めた学習パラダイムを含む系を用いて実験的に検証するとともに、神経計算論的理論付けを行う。さらに小脳の学習機構に基づく運動の作業記憶形成の神経モデルを開発し、人間の運動に近い動きのできる機械を作製する。

研究代表者: 中村 仁彦
所属・役職: 東京大学大学院工学系研究科 教授
研究課題名: 自律行動単位の力学的結合による脳型情報処理機械の開発
概   要: 人間の感覚器と筋肉が遺伝と脳神経系の可塑性によって獲得した協応構造に変えて、工学的に設計した自律行動単位を機械に付与することを試みる。さらにこれらを結合して多様な行動を生成したり、結合を変化させる非線形力学系を構成することで、意識や記憶などの脳高次機能、アフォーダンスなどの認知心理学の論点と情報処理の関係を実証的に研究する。これにより、近い将来現実となるヒューマノイドロボットの知能化の基盤を構築する。

研究代表者: 深井 朋樹
所属・役職: 東海大学工学部 助教授
研究課題名: 時間的情報処理の神経基盤のモデル化
概   要: 時間的な情報の処理は運動、言語、思考などの脳の高次機能を支える柱である。サルの大脳前頭皮質や大脳基底核から多細胞同時記録などを行い、そのデータをもとに、シナプス、ニューロン、そのネットワークまで、さまざまなレベルでの時間的情報処理の神経基盤をモデル化する。それにより、将来の高度で柔軟なニューロ・コンピューティング実現への道を開く。

研究代表者: 誉田 雅彰
所属・役職: 日本電信電話(株) 基礎研究所 主幹研究員
研究課題名: 発声力学に基づくタスクプラニング機構の構築
概   要: 音声の発声動作は発声器官の運動にとどまらず、声道の形成や流体音響現象などいくつかの階層をもった動作である。本研究では発声系の生理物理モデルを基に階層性を持つ発声系の運動指令生成のメカニズムを計算論的視点から明らかにするとともに、人間の発声動作を模擬する発声機械の構築を通して、脳の音声生成処理機構に基づく新たな音声情報処理システムの可能性をさぐる。

7.研究領域「地球変動のメカニズム」

研究代表者: 浅野 透
所属・役職: 京都大学生態学研究センター 教授
研究課題名: 熱帯林の林冠における生態圏−気圏相互作用のメカニズムの解明
概   要: 地球規模の環境変動は、熱帯林の一斉開花や自然撹乱を通じて森林生態系の維持に大きな影響を与える。一方、その結果として生ずる炭素・水収支の時間的空間的変動が大気へフィードバックされる。この研究では、熱帯林の林冠アクセスシステムと広域の生態プロセスの把握手法を開発することにより、気候変動を介在したこれらの生態圏−気圏相互作用のメカニズムを解明する。

研究代表者: 植松 光夫
所属・役職: 東京大学海洋研究所 助教授
研究課題名: 海洋大気エアロゾル組成の変動と影響予測
概   要: 大気中のエアロゾルの組成や量の変化が太陽光の地上に降り注ぐ量や、雲の性質を変えて、地球上の気温を変化させたり、海の生物活動を刺激したりする。本研究では人為的な影響が増え続ける北太平洋を対象に、洋上のエアロゾルが自然界に与える効果を非破壊多種同時自動分析などの新しい観測手段を駆使して総合的な調査を行い、地球の環境変動の将来を予測しようとするものである。

研究代表者: 小池 俊雄
所属・役職: 長岡技術科学大学工学部 助教授
研究課題名: 大気−陸域相互作用のモデル化と衛星観測手法の開発
概   要: 地表面−大気相互作用の実態を計測し、プロセスを理解し、モデル化することは、気候および水資源の変動の予測精度を向上する上で不可欠である。本研究では、衛星による包括的な地球観測システムの利用可能性とモデル性能の発展動向を踏まえて、衛星による広域の水・エネルギー循環の観測手法を確立するとともに、陸面の多様性を踏まえた普遍的な大気−陸域相互作用モデルを開発する。

研究代表者: 吉崎 正憲
所属・役職: 気象研究所予報研究部 室長
研究課題名: メソ対流系の構造と発生・発達のメカニズムの解明
概   要: 大気中の水やエネルギーの循環過程として、あるいは災害をもたらすような顕著な降水現象として、水平数100kmスケールのメソ対流系は重要である。この研究では、日本で見られるメソ対流系の実態を観測して、数値実験などによって発生・発達・維持のメカニズムを解明する。その成果をもとに、大気大循環モデルの降水スキームの改善を行い、またメソ対流系予測システムの構築をめざす。

8.研究領域「資源循環・エネルギーミニマム型システム技術」

研究代表者: 小久見 善八
所属・役職: 京都大学大学院工学研究科 教授
研究課題名: エネルギーの効率的変換をめざした界面イオン移動の解明
概   要: エネルギー利用効率が高くて環境に優しい二次電池、燃料電池などの電気化学的エネルギー変換・貯蔵のさらなる高効率化には界面イオン移動反応の解明が不可欠である。本研究ではこれまで見過ごされてきたイオンの固体界面移動を解明し、電気化学的エネルギー変換反応の飛躍的高効率化をはかり、エネルギー消費のミニマム化に資する。

研究代表者: 小名 俊博
所属・役職: 王子製紙(株)森林資源研究所 次席研究員
研究課題名: 高リサイクル性を有する森林資源の開発
概   要: リサイクルによるパルプ繊維の劣化と損失を原料から改善するため、高リサイクル性かつ高成長性を有した樹木を迅速に同定・選抜する技術を開発し、選抜木の交雑育種(植林)を実施すると共に、この発生機構を解析する。これにより、効率的な森林資源のリサイクルと省エネルギーを達成し、資源循環型社会構築の実現をめざす。生産性の高い森林資源を創出することにより、CO2固定量を増加させることが見込める。

研究代表者: 福田 正己
所属・役職: 北海道大学低温科学研究所 教授
研究課題名: 温暖化ガスにかかわる永久凍土攪乱の抑制技術
概   要: 北アジアを中心とする永久凍土地域で、森林火災やパイプライン建設などによる影響を受け、永久凍土の大規模融解が進行している。そのために永久凍土地域が温暖化効果ガスの主要な供給源になりつつある。そこで二酸化炭素とメタンガスの発生量を観測により定量的に把握し、併せてその発生量の抑制技術を開発し、温暖化防止への具体的な対応策の確立をめざす。

研究代表者: 馬越 淳
所属・役職: 農業生物資源研究所生物工学部 室長
研究課題名: エネルギーミニマム型高分子形成システム技術の開発
概   要: 生物はエネルギーを極めて有効に用いてその構成成分である高分子の製造を行っている。本研究では、生物が作る天然高分子の構造形成メカニズムを解明し、これをもとに、タンパク質、セルロース、キチン等の低エネルギー型合成方法の探索、精密分子配列制御法の検討などを行うことにより、エネルギーミニマム型の機能性高分子生産システム技術の基礎を構築することを目的とする。

研究代表者: 山田 興一
所属・役職: 東京大学大学院工学系研究科 教授
研究課題名: 乾燥地植林による炭素固定システムの構築
概   要: 未利用乾燥地の大規模植林による炭素固定システムを確立するため、水、塩、土、地形、樹種、エネルギーを組み込んだモデルを作り、全球的に適用可能なシミュレーターを構築する。年降水量200mm程度の西豪州で、現地研究者との連携により、上記構築のためのデータを取得し、樹種選択、植林域のゾーニング、水の有効利用、土壌改良、広域・局所水移動制御による持続可能な緑化手法を提案・実証する。

This page updated on September 25, 1998

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