ア |
高機能基盤データベース開発事業 |
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(ア) |
高機能基盤物質データベース |
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金属、合金、無機物質、高分子について、測定データとスーパーコンピュータによるシミュレーションデータを編集、整理したものであり、他にあまり類を見ない有用なデータベースである。まだ試験段階であるが、スペクトルデータ等さらに高度なデータを含むことにより一層の発展が期待できる。 |
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内外の機関との協力によりデータを充実させることが重要と思われるが、協力に当たってはイニシアティブをとれる程度にまで本データベースの内容を高めておくべきである。なお過去のデータの蓄積と新しい技術に対応するためにはスタッフの充実も必要になる。 |
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(イ) |
高機能生体データベース |
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事業団が中心となって進めてきたヒトゲノムに関する解析結果のデータベースであり、世界の公開データの約5%を占め、ヒトゲノムプロジェクトのわが国における重要な役割を担っている。 |
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本事業を価値あるものとするためには、ヒトゲノムプロジェクトに参加している内外の研究機関と協力し、研究にとって有用なデータベースとする必要がある。また今後は、遺伝子の個体差と健康状態の関係(多型情報)についてのデータベース作りなどに関しての高度な活動が期待されている。 |
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(ウ) |
スーパーコンピュータシステムの運用 |
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既に非常に混雑しており平均稼働率は80%にも及んでいるため、現有設備の有効利用をはかるとともに、早急なシステムの増強が必要である。 |
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イ |
研究情報流通促進システム開発事業(分散型デジタル・コンテンツ統合システム) |
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インターネット上に分散しているデジタル・コンテンツを集約する技術はいわゆる検索ロボットとして民間で広く開発が進められている。そのような中で事業団が新たなシステムを開発するという以上は民間検索エンジンに対して十分差別化できなければならず、そのためには、辞書を高度化するとともに、このシステムが研究情報の内容を認識し、知的な処理を行ってその結果を発信する必要がある。電子ジャーナル、文献データベース、化合物データベースなどとのリンクも欠かすことができない。 |
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この事業は公的機関の活動の納税者に対する情報開示という側面があり、無料で提供すべきものと考える。 |
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各研究機関のホームページを充実させるための支援も必要である。そのような支援が情報公開の効率的な実施を促進するとともに、本事業の有用性をより高めることになる。 |
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ウ |
電子情報発信・流通促進事業(電子ジャーナル) |
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経済的にも技術的にも基盤の弱い学協会が利用しやすい形で我が国が遅れをとっていた学術雑誌の編集の電子化及び電子ジャーナル化を促進する事業であり、電子ジャーナル化で先んじている外国の支配に我が国の学術出版活動が屈することのないよう先手を打ったことは高く評価される。今後、様々な分野の学会誌に広げるとともに、広く学協会への技術的支援を進めることが重要である。 |
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論文提出から出版にわたる電子ジャーナル化について、国立情報学研究所の方式はソフトを提供し運営は学協会に任す方式であり、事業団の方式は24時間サービスの全天候型である。両者の分担および相互協力については常に調整を図る必要がある。事業団の方式については多くの学協会が利用できるシステムとすることが重要である。我が国の学協会の財政基盤が貧弱であることを考慮すると、このような形での支援は日本的解決方法として有効である。 |
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電子ジャーナルが広く利用されるか否かは、海外の有力ネットワークとのリンクの如何にかかっている。世界的な基準となりつつあるPDF(Portable
Document Format )方式を採用したことにより、海外に向けての情報発信メディアとして可能性を秘めている。また、本事業により電子ジャーナル相互および文献データベースとのリンクを張ることが可能になるが、遡及分の電子化が問題となろう。電子ジャーナルデータの永久保存を保証するシステムも必要である。 |
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我が国の学会誌を国際的に競争力のあるものとしていくためには、投稿から出版までの期間を短縮していかなければならないが、そのためにも本事業は大きな意味がある。そうしないと良い論文が集まらない。 |
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今後はPDFの内容まで含めた全文を任意のキーワードあるいはJICSTシソーラスで検索するような付加機能をもたせたり、逆にJICSTファイルに自動的に抄録情報を吸い上げるシステムなどを開発し、事業団独自の情報資源と有効にリンクさせることが望ましい。 |
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論文提出から出版まで、また出版後の引用検索など、学協会により様々なスタイル、習慣、作法があり、これらに統一的に対応することは困難であるので、できるだけ柔軟なシステムにするとともに、学協会にメリットを与えつつ論文のフォーマットの標準化を事業団が中心となって進めてほしい。また、各学協会ごとにロイヤルティ、複写料を決められるシステムとすることが望まれる。 |
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事業団の事業の評価としては前述の点を指摘した。ただし、我が国の学協会発行の論文誌が有する課題は電子ジャーナルや事業団のセンター機能の提供だけでは解決しえない問題点を含んでおり、それぞれの学会が学会誌のあり方を含めて真摯に自己点検を行うとともに、国としては、刊行物助成のための科学研究費補助金の充実などを図る必要があると思われる。 |
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現在のところ、民間が発行する科学技術関係の雑誌は対象に入っていないが学術的なものについては事業団が対応する可能性も考えられる。 |
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学会誌の電子化の離陸を図ることを目的とする本事業はそもそも民間ベースでできるのではないかとの意見もあるので、ある程度軌道に乗ったら民間に委譲するなり、適当な料金を設定するなりして、民業とのバランスを考慮すべきである。この事業は、国際会議などの開催にあたってのプロシーディングス(予稿集・報告集)の発行と重なる面があるが、コンベンション事業についてはすでに民業が立ち上がっており、民間に任すのが適当であろう。 |
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エ |
新産業創出総合データベース構築事業(ReaD等) |
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かなり多くのアクセスがあり、広く利用されていることは評価できる。
この種の情報公開は、国の機関の公開性を高める意味で必要なことであるが、研究者の個人情報の開示と裏腹の関係にあり、企業の営業活動に利用されるなど不適切な使用により被害を受けることもあり得る。網羅的で有効なデータベースとするためにできるだけ多くの研究者からデータを集めるためには、当該研究者の承諾を得た上で公開するだけではなく、個人データの不適切な利用を防ぐ工夫が望まれる。
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・ |
公的な研究機関の研究者や研究活動のデータベースは種々あり、研究者は毎年数種のデータの提出や入力を求められうんざりしている。他省庁や大学関係も含めて、どれか一つ、例えばこのReaDに統合すべきである。 |
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オ |
研究情報流通高度化事業(省際ネットワーク) |
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省際研究情報ネットワーク(IMnet:Inter-Ministry Research Information
Network)を、省庁の壁を越えた情報インフラとして構築し、運営していることは高く評価される。今後とも、日進月歩のネットワーク技術を採り入れ、より高度なネットワークにすべきである。 |
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現在のサービスを今後とも継続し、増加するニーズに応えるよう一層の強化を望む。アジア太平洋高度研究情報ネットワーク(APAN:Asia-Pacific
Advanced Network)や TransPACプロジェクトなどの国際的な共同プロジェクトを積極的に進めるべきである。 |
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学術情報ネットワーク(SINET:Science Information Network) やギガビットネットワーク
(JGN:Japan Gigabit Network)、商用ネットワークなどとの緊密な相互運用を進めるとともに、全国にアクセスポイントを増設し、地方自治体の公的試験研究機関等との接続も推進すべきである。 |
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カ |
研究情報国際流通促進事業 |
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この事業は、本来国がイニシアチブをもって情報発信すべき内容であり、これまで採算性を必要とする予算で行なわれてきたことは不適切である。現在は一般会計事業として継承され、これまでのデータも統合されるとのことで、今後の発展が期待される。 |
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APEC諸国のニーズについて充分把握することが必要である。また、一部では既に利用されているが、機械翻訳システムの活用が有効であろう。 |
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キ |
共通事項 |
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一般会計事業(公募型事業を除く)は、データベース、ウェブ、計算サーバ、ネットワーク、電子出版支援など多くの異なる事業を含んでいる。それぞれ、さまざまな経緯を経て事業団の事業に取り入れられたものであり、個別的には積極的な意義が認められる。しかし、あまりにも多様であるために、全体としては事業団がこの分野で何を目標に活動しているかが不明確になっている。 |
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委員会としては、事業団が多様な事業を整理し直して、より明確な形で再構成することを提案する。もちろん、各事業毎の予算の執行目的との整合性を考えると、実際には難しい面もあるが、外部に対して活動を情報提供する時は、予算の論理ではなく、利用者の視点に立った展開をすべきであろう。 |
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データベース、学会誌の電子化、検索エンジンすべてを含めると新しいビジョンが見えてくるはずである。そのような新しいビジョンを描き事業を進めていけば、ある時点で質的な変化を起こすことができよう。 |
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