ホームJSTについて情報の公開・個人情報保護機構の評価に関する情報(参考) 科学技術振興事業団(平成14年度まで)の評価結果科学技術振興事業団機関評価報告書1.はじめに平成10年度評価結果(技術移転推進事業)評価報告等概要第2部 評価結果 1.既存個別事業

第2部 評価結果


1.既存個別事業

 

(1)

委託開発事業

ア  総括的事項
本事業は、他に類のない制度で昭和36年より継続して運営、実施してきたことは、高く評価出来る。
 
本事業を通し、多くの中小企業が育ち、また本事業による人材及び技術のネットワークが事業団の発展の基盤、源泉として役立ってきた。
 
イ  成功の定義、リスクの程度
委員会で一番の議論の対象となった事項は、本事業における成功率の高さと実施料収入の低さである。昭和36年度から平成9年度までの委託開発課題(平成9年度末までに終了・中止したものの総数=361件)のうち88%(319件)が委託開発の開始に当たり企業と研究者と事業団が合意した成功基準である「企業とし得る状態」に到達、即ち開発に成功し受託企業は事業団からの開発資金を返済することになったにもかかわらず当該新技術の成果実施契約に至らないものが75件(平成6年度以降のものを除く)、約26%程度発生している。また企業化に至っても現実に製品等の販売を通して事業団のロイヤルティ収入に大きく貢献しているものは必ずしも多くなく、事業団のロイヤルティ収入は多い頃で年間6億円、最近は年間3億円程度となっている。このことはたとえ開発に成功し企業化まで至ったとしても、開発資金の回収に至らないものが多いということを意味している。このため、委員会は事業団の委託開発事業が本当に開発リスクを負担してきたのかという問題に直面した。
 
成功率が極めて高くかつ成功した課題によるトータルとしてのロイヤルティ収入が少ないということは、事業団がハイリスク ハイリターンの課題を必ずしも選定していないのではないか、企業化最小規模における技術的目標の実現に当たり経営的側面の把握がおろそかになって、結果として単なる技術的目標さえクリアすれば成功と認定しているのではないかとの批判が生じることは免れないのではないかと考える。リスクの高い課題を選定することと成功率を高めることは二律背反であり、今後は成功率にこだわらずに、どれだけインパクトのある産業を育成できたかを事業の指標とすべきではないか。むしろ不成功を許容し、リスクに挑戦することを、この事業の基本姿勢とすべきであろう。事業団側から例えば成功率を5割とか7割とするという目標を打ち出すことにより企業の担当者の責任問題についての考え方を含め全体の流れが変わることを期待したい。
 
定量的には表しにくいが、例えば浜松ホトニクス㈱やスタンレー電気㈱をはじめとするユニークな企業が大学等における研究成果をもとに本事業を利用してきたことも紛れのない事実であり、それ自体としても評価すべきであるとの意見も表明された。
 
ウ  企業へのインセンティブ(優先実施期間、実施料率)
委託開発実施企業に対しては、相当の相対的事業優位性の保障が必要であろう。現在、事業団の運用では優先実施期間は3年とされているので、これを延長し5年程度とすることが必要ではないかと考えられる。
 
優先実施期間の延長の他に、委託開発実施企業に対する実施料率についてはそれ以外の企業に対するものに比べ明確なアドバンテージを与えることも効果があろう。更に、企業間においては実施料率を設定して徴収する以外に、一括して徴収する方法(イニシャルペイメント)もかなり普及しているのでそのような可能性も考慮に値しよう。
 
エ  委託開発費に対する担保の設定
平成11年度より資本金10億円以下の企業にあっては担保を1/2に半減し、残りの1/2は開発実施により生まれた知的所有権等に設定することができることに制度を改善したとのことであり、このこと自体は評価すべきであるが、最終的には担保を設定することなく本事業の実施主体となることが可能となるよう、引き続き努力してほしい。
 
オ  テーマの発掘
民間における健全な競争に委ねるべき技術と事業団が支援する技術を仕分ける基準を明確にし、それをテーマ選択に生かす努力が求められる。
 
マーケットのニーズを踏まえてテーマを磨き上げるプロセスを強化すべきであり、事業団の行う研究会の体制を拡充強化する必要がある。
 
カ  事務手続きの簡素化
科学技術庁との許認可事務を簡素化(規制の撤廃を含む)するとともに、事業団内部における事務も簡素化することが求められる。
 
 

(2)

研究成果普及事業

ア  総括的事項
本事業は、シーズとニーズの両面を理解し結びつける仲介者の役割を適切に果たしてきた。
 
イ  開発あっせん件数の減少(略)
 
ウ  「仲介者ネットワーク」の確保
平成9年度に実用化促進の観点から開発あっせん事業の全面的見直しを行い、外部人材により課題のスクリーニング、評価を行うとともに、事業団職員の他、外部人材により実用化を希望する企業を探し、実用化を促進させることにした。
 
事業団では推進体制の整備を行いつつあるが、過去に国の主導した様々な技術移転事業において、技術移転における人的仲介の不十分さから期待される成果に至らなかった事業が少なからずあるので、仕組みは出来ているのに人的体制が不十分ということにならないよう、十分な「仲介者ネットワーク」を確保する必要がある。仲介者を依頼するにあたっては報酬等の面でインセンティブのわくようなシステムを早急に設計することが不可欠であることを事業団では認識してほしい。
 
 

(3)

特許化支援事業

ア  総括的事項
本事業は、事業団における一連の事業を活性化させる効果が期待できる。
 
大学、国公立試験研究機関等の研究者の研究スタイルを従来の論文主義から、社会のニーズを踏まえたものへと誘導する上で極めて有意義な事業である。
 
技術移転機関(TLO)も整備されつつあるが、我が国全体としてみれば権利化推進体制は依然として弱体であるので、本事業を事業団が実施していく十分な意味がある。
 
イ  特許主任調査員の資質、インセンティブ
特許主任調査員には、マーケットを睨み、調査員自身のアイデアも付加し、より積極的、戦略的に出願することが期待されるとともに、調査員の手を経て、更に実用化を目指す専門的な部門に上手につないでいくバックアップシステムが必要であろう。
 
特許主任調査員については、若手の人材でも処遇できるような道を開くことと、自らのアイデアによって付加価値が生まれたときは、適切な報酬が得られるようなインセンティブを与える仕組みを考慮すべきであろう。
 
ウ  特許主任調査員の規模
特に特許出願が多い大学、国公立試験研究機関等の近隣に重点的に配置するなど特許主任調査員の重点化も必要と思われる。またどの程度まで拡大・増員することが妥当であるかについてはニーズに基づいて長期的計画を作る必要があろう。
 
エ  知的所有権研修
研究者自身の特許出願能力の育成を図ることが重要である。
 
少なくとも当面5年程度は講師の派遣などを積極的に行い、大学においてみえはじめた変化の兆しを大きな流れへと変える突破口としての役割を演じなければならない。
 
 

(4)

独創的研究成果育成事業

ア  総括的事項
開発段階への“橋渡し事業"として大きな意義が認められる。
 
前段階の「特許化支援事業」、後段階の「委託開発事業」、「開発あっせん事業」との連携が必要と考えられる。前後の段階を通してみることの出来る役割を担った人材を育成し、配置することが必要である。
 
イ  公募にあたっての資格要件
申請企業の資格要件「資本金10億円以下」を撤廃し、課題選定の過程において中堅中小企業に配慮するという運営を行った方が、有効な事業展開を可能とするものと思われる。
 
ウ  2年間にわたる事業の執行の必要性
開発期間についてはテーマ、内容によってフレキシブルに対応すべきであり、少なくとも2年間にわたる実施が可能な事業とすべきである。
 


This page updated on June 21, 1999

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