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科学技術振興機構報 第877号

平成24年4月24日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報課)
URL http://www.jst.go.jp

従来の10分の1の価格での電子回路開発を可能にするベンチャー企業設立
(JST若手研究者ベンチャー創出推進事業の研究開発成果を事業展開)

JST(理事長 中村 道治)は産学連携事業の一環として、大学・公的研究機関などの研究成果をもとにした起業のための研究開発を推進しています。

平成21年度より筑波大学に委託していた研究開発課題「パーソナライズド・ガジェットの開発/販売支援の事業化に関する研究」において、自由に組み合わせできるオーダーメイド型の電子回路基板の開発に成功しました。また、この成果をもとに平成24年4月13日(金)、研究開発に参画したメンバーらが出資して「株式会社SUSUBOX」を設立しました。

従来の電子回路基板の開発では、試作基板を最初から設計・製造すると数十万〜数百万円規模の費用と数ヵ月の期間がかかります。これは、機器メーカーの開発コストの大部分を占める上、初期費用が問題となり、組み込み分野以外のソフトメーカーやデザイン分野など異業種からの参入も困難な状況です。

本研究開発では、メーカーがどのような電子回路を必要としているのか徹底調査し、要求される回路の仕様を満たす基板をあらかじめ製造しておくことで、開発コストの低減と開発期間の短縮を実現しました。また、特殊な配線構造(特許出願済)により、機能の異なる数十種類の基板同士を簡単に接続することが可能で、その組み合わせ数は数万通りに上ります。これにより、顧客のニーズに合った基板を自由に構築できるため、従来のように試作基板を最初から設計・製造する場合と比較して、4分の1〜10分の1の価格で電子回路の開発が行えます。また、開発期間も10分の1〜100分の1と大幅に短縮可能です。

今後の事業としては、5月から受託による基板の製作を行い、画像処理基板やセンサー基板などを数十万円から受注します。今後、さらなる基板品種の拡充や、量産工場への仲介業務などを進めていき、まずは5年後に売上げ1億2千万円を目指します。

今回の企業の設立は、以下の事業の研究開発成果によるものです。

若手研究者ベンチャー創出推進事業

研究開発課題 「パーソナライズド・ガジェットの開発/販売支援の事業化に関する研究」
JST 起業研究員 相部 範之(筑波大学 産学リエゾン共同研究センター 研究員)
研究開発期間 平成21〜24年

若手研究者ベンチャー創出推進事業では、起業意欲のある若手研究者が、大学の起業支援組織(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーなど)から施設の提供やビジネスプラン作成への助言などの支援を受けつつ、自らが関与した研究成果を実用化するための研究開発を行い、ベンチャー企業の創出や事業展開に必要な成果を得ることと、若手研究者の起業家へのキャリアパス形成を促進することを目的としています。

本事業は、現在、「研究成果最適展開支援プログラム(A−STEP)」に発展的に再編しています(詳細情報:http://www.jst.go.jp/a-step/)。

今回の「株式会社SUSUBOX」設立により、JSTの「プレベンチャー事業」、「大学発ベンチャー創出推進」、「若手研究者ベンチャー創出推進事業」および「A−STEP」によって設立したベンチャー企業数は、120社となりました。

<開発の背景>

一般的な電子回路(基板)の開発には、@試作基板を最初から設計・製造する、A大型の試作モデルを用いる、B開発ターゲットに最も近い汎用の評価基板を利用する、という3つの選択肢があります。基板を最初から設計する場合は最終製品に最も近い試作を行えますが、コストと納期がかかります。大型の試作モデルでは納期は最短となりますが、設備への初期投資が大きい上、サイズや消費電力などの面で最終製品からかけ離れたものとなります。汎用の評価基板では初期費用は最も安価ですが、ターゲットに合うものが見つかるとは限りません。そこでこれらを解決し、高い柔軟性を持つ試作システムを安価な評価基板と同等の価格で実現することを目指しました。

<研究開発の内容>

相部研究員は、書き換え可能な集積回路であるFPGA注1)を中心とした数10種類の基板をシステム化した製品「Kariomon System(カリオモンシステム)」(図1)と、簡単に基板を加工できる「超短納期基板製造装置」(図2)を開発しました。「Kariomon System」は、FPGAやMCU注2)が搭載されたメインのモジュール(要素)と、さまざまなI/O(入力/出力)インターフェースが搭載されたサブモジュールから構成されます。サブモジュールは数十種類以上あり、これらの組合せでさまざまなI/Oインターフェースを持つ回路を構成可能です。数万通りの組合せで顧客のニーズに合った基板を構築できるため、従来のように最初から基板を製造する場合に比べて、大幅なコストの低減と開発期間の短縮が可能です。

また「超短納期基板製造装置」は、1.切削型基板製造機による追加工とそのための特殊基板、2.レーザー加工によるレジスト注3)除去、3.レーザー加工による樹脂フィルムハンダマスク注4)、4.レーザー加工によるオンデマンド部品トレイの4つから構成されます。「超短納期基板製造装置」はその場で一部の基板を追加工することにより、「Kariomon System」の組合せだけでは実現できない顧客の要求、例えば独自の回路の追加や、持ち込みの部品実装などに応えます。

従来の基板開発では、最初から設計、製造を行うため、数ヵ月単位での開発期間と数十万〜数百万円規模の費用が掛かりました。しかし、多くの基板では一般的に使用される回路に共通性があります。従って、この共通部分については最初から設計、製造したものを利用できると、再設計が不要となり大幅なコストの削減が行えます。本開発ではこの共通部分を「Kariomon System」としてモジュール化し、さらに「超短納期基板製造装置」により案件ごとに専用部分を追加可能とすることで、従来の4分の1〜10分の1の開発費用、および10分の1〜100分の1の開発期間を実現しました。

<今後の事業展開>

最初の事業として、「Kariomon System」を用いた受託開発を行います。これまで案件ごとに最初から設計、製造してきたフルカスタム基板の受託開発に本手法を適用することで、従来の4分の1〜10分の1程度のコストおよび10分の1〜100分の1の納期で同受託開発サービスを提供できる見通しを得ています。具体的には、FPGAを用いた画像処理基板、ネットワーク評価基板、各種センサー基板などを数十万円から開発可能です。受託は店舗窓口でのみ行い、小規模のものであれば最短2時間程度で構築可能です。「Kariomon System」を用いて受託開発した基板については、1枚基板への再設計サービスや、製造数が1000台/月程度までの受注生産も行う予定です。

<参考図>

図1

図1 モジュラーシステム製品「Kariomon System」

顧客の要求仕様を満たす基板を、あらかじめ用意された数10種類のモジュール基板の組合せによって構築します。図1はメイン基板とサブ基板を各1枚選択した例ですが、同時に複数の基板を組合せることも可能です。

図2

図2 「超短納期基板製造装置」

超短納期基板製造装置は、基板加工機、SMD部品実装装置、N2対応リフロー炉、およびCO2レーザー加工機の4つから構成されます。図2はレーザー加工機を除く3つの主要部で、床面積約2平米の省スペースに収まるため、小規模な店舗内で製造サービスの実施が可能となっています。

<用語解説>

注1) FPGA(Field Programmable Gate Array)
書き換え可能な集積回路のこと。通常工場で製造する必要のある集積回路をマイコンのようにPCによってプログラムできる。ラピッド・プロトタイピングに広く利用されているほか、出荷数量の少ない高性能製品にも搭載される。
注2) MCU(Micro Control Unit)
マイコンとも呼ばれる電子部品で、ソフトウェア・プログラムを実行する集積回路のこと。システム制御の中心的な役割を担い、さまざまなメーカーから販売されている。
注3) レジスト
基板表面の絶縁膜のこと。ほこりや湿気などから基板を保護するほか、ハンダ付けの際にハンダ不良を防ぐ機能もある。通常は感光性レジストとフォトマスクを用いて必要箇所にレジストを形成する。
注4) ハンダマスク
基板表面にハンダを印刷するためのステンシルのこと。通常はメタルマスクと呼ばれるアルミなどの金属製のマスクが用いられる。

参考:<企業概要、ほか>

<本件お問い合わせ先>

株式会社SUSUBOX(ススボックス)
〒305-0005 茨城県つくば市天久保2−9−2 リッチモンド2番街2F FPGA−CAFE
Tel:029-875-6937 Fax:029-875-6938
E-mail:

科学技術振興機構 産学連携展開部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
加藤 豪(カトウ ゴウ)
Tel:03-5214-0016 Fax:03-5214-0017
風間 成介(カザマ シゲユキ)
Tel:03-5214-7995 Fax:03-5214-0017