課題名 | 日本側 研究代表者 |
所属・役職 | 課題概要 | |
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EU側 研究代表者 |
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1 | 軽元素・分子系高温超伝導への多面的アプローチ | 岩佐 義宏 | 東京大学 大学院工学系研究科 教授 |
本研究の目的は、将来の低環境負荷超伝導材料の開発のため、軽元素・分子系材料における超伝導の物質科学を飛躍的に進展させ、臨界温度を上昇させることである。 日本とEUそれぞれがターゲット別に合成した新物質を用いて、日本側を中心に物性の外場制御、EU側を中心に種々の精密物性測定を行い、双方で理論・モデリング構築に取り組む。 双方の研究チームが相互補完的に取り組むことにより、軽元素・分子系材料における多様な電子相と、超伝導の発現機構を明らかにし、高温超伝導実現に資する学理の構築が期待される。 |
プラシーデス・コスマス | (イギリス) ダーラム大学 化学科 教授 |
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2 | 鉄系超伝導体における材料ポテンシャルの開拓 | 下山 淳一 | 東京大学 大学院工学系研究科 准教授 |
本研究の目的は、鉄系超伝導体の超伝導特性、特に臨界電流特性の決定因子を解明し、その改善により材料物質としてのポテンシャルを高めることである。 日本とEUの各研究機関で得られた多様な系の試料を共有し、効率的に高品質試料合成や先進物性評価、超伝導特性の向上と制御、粒界の制御と粒界特性の評価およびモデリングを推進する。特に、日本側は局所物性評価、EU側は理論モデル構築、比較評価を中心に担当する。 双方の研究チームが相互補完的に取り組むことにより、鉄系超伝導体の高磁場発生磁石、大容量ケーブル、電子デバイスなどへの実用材料化に貢献することが期待される。 |
マリナ・プッティ | (イタリア) イタリア学術会議 准教授 |
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3 | 鉄系超伝導体デバイスの物理的・工学的基盤の構築 | 生田 博志 | 名古屋大学 大学院工学研究科 教授 |
本研究の目的は、鉄系超伝導体の高品位薄膜という成果に基づき、デバイス応用に向けた物理的・技術的基盤を構築することである。 日本側は主にMBE法、EU側は主にPLD法で鉄系薄膜作成を行う。試料の評価、基礎物性測定、接合作製などにおいても日本とEUの各グループが強みを持つ独自手法を網羅的に適用する。 双方の研究チームが相互補完的に取り組むことにより、ギャップや対称性など重要な物理量解明が加速され、鉄系超伝導体のデバイス応用が飛躍的に進展することが期待される。 |
飯田 和昌 | (ドイツ) ドレスデン・ライプニッツ固体・材料研究所 上席研究員 |
超伝導体は将来のエネルギー問題などの解決に貢献することが期待される物質ですが、本プログラムでは、超伝導体の物質探索の面から広く応用の基礎に至るまでの広範な研究テーマについて、日本と欧州の研究者が協力して行う共同研究を募集しました。途中、米国で開催された応用超伝導会議のおりに、共同研究相手を見つけるためのワークショップを開催するなどし、結果的に19件の応募がありました。内容的には新奇物質探索、デバイス応用の基礎、パワー応用の基礎など、多岐にわたっており、これらについて、日本側と欧州側でそれぞれ別個に書面での評価を行いました。評価の重点は、研究内容がプログラムの趣旨に適合しているか、3年という期間内で実行できる研究計画となっているか、日欧で対等かつ効率的に行う共同研究の体制がとられているか、などに置かれました。しかし、研究のアプローチがはっきりしていて個性があふれた研究が多く、広範な研究課題の中で単一に評価をすることの難しさを感じました。選考にあたっては、日本側と欧州側で行った評価の結果を総合して国内で12課題のヒアリングを実施し、それらの情報をもって最終的な欧州側との合同選考会議に臨み、採択する3課題を決定いたしました。ただし、当初、双方での評価が割れた課題もあり、その課題に関する評価を直接ぶつけあい、両者が納得するまで議論して合意に至りました。
最終的に採択された課題はいずれも優れた着眼点で展開される研究で、共同研究の成果が期待されます。また、分野もそれぞれ新奇物質の探索、デバイス応用の基礎、パワー応用の基礎とバランスが取れたものとなっており、本プログラムの趣旨を生かせたものと思います。なお、材料的には鉄ヒ素系超伝導体と二ホウ化マグネシウム(MgB2)に代表されるような軽元素超伝導体で占められ、最近の研究の方向性がうかがわれます。