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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 35 高感度尿蛋白質定量装置の開発(H14-0149)

企業名 :株式会社 常光
研究者(研究機関名) :芝 紀代子(東京医科歯科大学 保健衛生学部 教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 本試作は、住民健診や学童検診で実施していた尿蛋白質の測定を従来より高感度に測定する装置の開発に関するものである。従来法は、蛋白のうち、アルブミンだけの測定でグロブリンを測っておらず、早期腎疾患などの検出には感度不足やグロブリン領域の検出不足が指摘されていた。今回、高感度銀染色法を用いることで、出現する尿蛋白質の全体が感度良く迅速に測定できる装置を開発することができた。本装置は概ね2種類の部分から成り立っており、その1つはドットブロットパターンを自動作成する部分、もう1つはそのパターンの濃度を定量するデンシトメーターで構成されている。試作品の性能は測定範囲(アルブミン+グロブリン);5~400mg/L 処理能力;42検体/h 精度;CV3.5~9.2%などが達成できた。検体検査として尿を用いる測定は、簡便でかつ採血のように痛みを伴うことがないという良い面がある。最近、早期発見と早期治療開始による疾病の予防が重要となりつつあり、特に尿蛋白質の微量定量は、糖尿病や高血圧による腎疾患の早期発見、感染症等から来るIgA腎症の予防、多発性骨髄腫などの癌の早期発見に役立つものと思われる。なお、デンシトメーターは画像処理機能を有しEIA測定システムにも応用できる点もあり本目的以外にも需要が期待できる。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 銀染色法による微量尿蛋白の定量装置の試作は、臨床試験による検出結果も含め、ほぼ完成したと考えられる。
知的財産権等の発生
 現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。
企業化開発の可能性
 本モデルはドットブロットパターンを自動作成する部分とそのパターンの濃度を測定するデンシトメーター部分で構成されている。デンシトメーターは完成度が高く、事業化の可能性が非常に高いと考えている。
新産業、新事業創出の期待度
 従来は検出不可能であった尿中の微量尿蛋白質と疾患との関係が解明され、本装置により児童健診や住民健診における尿検査の位置付けが変わる可能性がある。
3 ) 評価のまとめ
 モデル化の目標である装置の試作と装置の機能評価はほぼ目標どおり達成された。検診の二次検査はよいとして、一次検査に使用する場合は高感度すぎるために起こる種々の課題を解決する必要があるかもしれない。


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This page updated on May 19, 2004

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