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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 32 急冷凝固結晶制御法による高機能・複合機能化金属系センサ・アクチュエータ材料の開発(H14-0140)

企業名 :株式会社 東栄科学産業
研究者(研究機関名) :古屋 泰文(弘前大学 理工学部知能機械システム工学科 教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 工業製品における省エネ・高効率・小型軽量化等の要求に応えるため、従来材料の持つ機能だけでなく材料自体が持つ機能を高め、複雑化・多機能化する機械システムに応用していく必要がある。
 本研究では、形状記憶・磁歪・超弾性等の機能を有する金属系材料を高周波溶解し、高速回転するロールに噴射接触させることで、アモルファスから微結晶・柱状晶にいたる結晶性の制御を行い、材料特性と結晶性の関連を多角的に検討した。
 この結果、以下のことがわかった。急冷法による材料は、ロール接触部では微結晶組織をもち、非接触側に柱状晶をもつとき優れた特性を示す。TiNiCu系急冷材においてCu=8%以上の添加が可能となり、Cu=10%で最も強度が増加し、変態幅もシャープになり応答速度の速いセンサ・アクチュエータ材料となる。NiAlMn系急冷材は、600K以上で大きな変形が得られ、1000MPaを超える強度をもつとともにFeの添加で大きな延性が確保でき、高温型形状記憶合金としてセンサ・アクチュエータ材料となる。FePd系急冷材は、室温・10kOeにおいて最大磁歪がえられ、15MPaの応力負荷下で最大磁歪量を示すことから低応力下でのセンサ・アクチュエータ材料となる。
 急冷凝固結晶制御法は、機能性材料の特性向上に非常に有効であることが実証されたが、現在のところ材料形状がリボン・ファイバー・粉体に限られている。今後は、急冷材料のバルク化を行い実用性のあるセンサ・アクチュエータの開発に取り組んでいく。また、試作に用いた急冷材料作製装置・複合機能材料作製装置の販売も検討していく。
※Oe(エルステッド):磁界の単位

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 形状記憶合金、超磁歪合金、急冷凝固・薄膜作製装置とも目標達成度は高い。
知的財産権等の発生
 新たな特許出願が期待できる。
企業化開発の可能性
 製造装置の販売と、開発材料の応用製品の販売を目指しており、今後の展開如何にもよるがその可能性はあると思われる。
新産業、新事業創出の期待度
 応答速度の速いセンサ・アクチュエータ材料が提供できれば、新産業創出の可能性はあるが、この分野はかなり以前より大手の何社かが検討してきた分野でもある。今後の展開に期待する。
3 ) 評価のまとめ
 この分野はかなり以前より大手の何社かが検討してきた分野でもあるため、応用面やマーケットを絞った開発を行う必要があるように思われるが、応答速度の速いセンサ・アクチュエータ材料の提供ができれば、新産業創出の可能性がある。


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This page updated on May 19, 2004

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