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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 31 ナノインデンテーション用・超微小硬さ基準片の試作(H14-0138)

企業名 :株式会社 山本科学工具研究社
研究者(研究機関名) :宮原 健介(独立行政法人 物質・材料研究機構  材料基盤情報ステーション疲労研究グループ主任研究員)

1 ) モデル化の概要および成果
 ナノインデンテーションでは、通常の硬さ試験と同様に圧子(針)を試料に押し込み、硬さの測定を行う。このときの深さは1μm以下と非常に小さいため、複雑な組織を持つ材料の各組織単体も評価の対象にすることができる。ただし、磨耗等による圧子先端の鈍化の影響を受けやすくなるため、その影響の補正に「基準」となる試料が必要になる。この基準片には、ばらつきの少ない、均一性に優れている性質が求められる。
 各種高純度金属単結晶の代表的な結晶面、(100)、(110)、(111)、について研究を行い、その結果選定されたタングステン単結晶(100)面による試作基準片は、面内の回転角度に対する依存性や個々の試験片のばらつきが少なく、非常に均一な特性を有していることが実証され、硬さのばらつきは目標の5%以下の4%以内に収まることができた。この結果から試作基準片は通常のマクロ硬さ基準片と同等の均一性をナノ領域で持っていることになる。また、3ヶ月間特性が変化しないことを確認した。
 ナノインデンテーション規格としては、漸く2002年10月にISO14577が制定された。深さ測定方式による硬さ試験では、マクロ硬さ試験においてさえも試験機ごとの食違いが生じやすいため、今後は、代表的な複数のナノインデンテーション試験機により、妥当性が十分確認された基準値を有する基準片の量産化研究を目指す。この課題は本試験方法並びにナノテクノロジー信頼性向上の鍵となっており、成功すれば実用化が大きく期待できる。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 目標はほぼ達成された。基準片に求められる均一性、経時変化、測定値の変動幅を製品レベルで満足する製作条件が特定できた。
知的財産権等の発生
 現在まで発生なし。今後の取得に期待したい。
企業化開発の可能性
 商品化、企業化の見通しが得られつつあり、継続研究による製品化が期待される。
新産業、新事業創出の期待度
 製品化により、ナノ材料開発等、ユーザー側に新産業、新事業創出の可能性がある。
3 ) 評価のまとめ
 目標はほぼ達成された。基準片に求められる均一性、経時変化、測定値の変動幅を製品レベルで満足する製作条件を特定でき、商品化、企業化の見通しが得られつつある。製品化により、ナノ材料開発等、ユーザー側に新産業、新事業創出の可能性がある。


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This page updated on May 19, 2004

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