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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 30 免疫クロマトグラフィーによるエビのホワイトスポットウィルスの簡易検出方法の開発(H14-0137)

企業名 :株式会社 エンバイオテック・ラボラトリーズ
研究者(研究機関名) :松村 正利(筑波大学 応用生物化学系 生物プロセス工学バイオシステム研究科長・教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 世界中で年間約80万トンが養殖されている食用エビでは、1993年頃からウイルス性(ホワイトスポットウイルス:WSSV)の感染症が世界的に広がり甚大な被害を受けている。従来のWSSV診断法としては、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)が主に用いられてきたが、高度な技術や設備を必要とするため、実際の現場での使用に耐えうる新たな診断法が求められていた。本課題では、これまで困難とされてきた同ウイルスのエンベロープ(外殻)を認識するモノクローナル抗体の開発に成功した筑波大学・松村教授の研究成果に基づき、特別な装置を必要とせず養殖現場での使用が可能な試験紙型の免疫クロマトグラフィーの確立に成功した。実証試験として、従来法であるPCR法との比較を行った結果、WSSVに感染した死亡エビ個体においては、試験に供した全ての検体において、また、WSSV感染生存個体においては、ウイルス濃度が非常に低い個体を除いて、PCR法との高い相同性が確認され、計画当初の目的を達成することが出来た。
 本技術が実用化されれば、アジア、中南米などを中心とするエビの養殖現場において、WSSVへの感染状況を簡易に把握できるため、迅速に対策を講じることが可能となり被害の防止に繋がる。一方、わが国は、米国につぐ養殖エビの消費国であり、輸入に関連した商社の流通ルートが確立されている。これらの商社のルートを活用して、わが国からエビの生産国などへ製品輸出を目指すものであり、わが国の海外に対する社会的な貢献度向上に寄与していきたい。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 エビ養殖の現場で、ホワイトスポットウイルス感染エビを簡便に高感度で識別できる"免疫クロマトグラフィー"は完成されており、目標は達成できたと評価できる。
知的財産権等の発生
 現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。
企業化開発の可能性
 エビ養殖は、途上国の重要輸出産業であり、誰にでも簡便に取り扱える実用性の高い本キットは、既に商社などと連携して東南アジアなどで実証試験を開始しており、企業化の可能性は極めて大である。
新産業、新事業創出の期待度
 将来、東南アジア、中南米などの広い市場を考えれば、かなり大きな新産業に発展する可能性がある。
3 ) 評価のまとめ
 エビ養殖の現場で、WSSV感染エビを簡便に高感度で識別できる"免疫クロマトグラフィー"は完成されており、モデル化は順調に進捗した。本キットは、既に商社などと連携して東南アジアなどで実証試験を開始しており、企業化の可能性は極めて大である。本課題は目標を達成したと考えられる。


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This page updated on May 19, 2004

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