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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 18 銀坦持アクリル繊維を用いた殺菌フィルター及び院内感染防止装置の開発(H14-0085)

企業名 :株式会社 ソダ工業
研究者(研究機関名) :高麗 寛紀(徳島大学 工学部生物工学科 教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 銀の作用を利用した殺菌効果を有するエアフィルターおよび空気清浄機を開発した。病院、福祉施設、幼稚園、食品加工工場等において、殺菌による施設内感染防止、防黴のニーズが急速に高まっている。従来の殺菌技術ではフィルターに捕集したものを殺菌するのみで、通過した空気中から菌を除去する機能を有しない。さらに環境毒性などの新たな問題を発生させている。本課題提案では有害な殺菌剤や紫外線などを使用せず、銀坦持アクリル繊維を用いた殺菌フィルターおよびそのフィルターを搭載した空気清浄機を試作した。過去にこの繊維は主として水中での使用を想定したものであったため、空気中での使用条件においては通気抵抗などの面で問題点があった。そこでまずエアフィルターとしての特性(捕集効率、圧力損失、粉塵保持容量)の最適化を行い、空気清浄機での使用に適したフィルター材性能を実現した。また並行して、本コンセプトの最大の特徴である通過空気中に含まれる菌に対する殺菌性能を試験するための装置を試作した。この装置を用いて殺菌フィルター単体での殺菌性能試験と改良を繰り返し、実験室においてその性能を実証した。さらに、介護老人保健施設などにおける実地試験を行い、実際の使用時に殺菌性能を十分に引き出すための運転条件について検討した。今後、実地試験における殺菌効果の確認・向上を図り、製品化のための開発を行う。本課題が実用化されれば、従来は特定の目的、区域でのみ運用されていた感染防止のための空調システムと同等の機能が安価に提供可能になり、一般の区域での感染リスクを大幅に低下させることができるものと考える。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 実験室における模擬試験で[風量vs殺菌性能]等の諸データを得るとともに、空気清浄機20台を試作して、気流試験等を実施。圧損/集塵等の物理的性能はほぼ達成された。しかし、実地試験の結果は実験室の成果と一致せず、殺菌効果がほとんど見られず、原因は現在のところ特定中である。
知的財産権等の発生
 現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。
企業化開発の可能性
 実地試験の不調の原因が解明されれば開発の可能性がある。
新産業、新事業創出の期待度
 可視光領域の光触媒作用による抗菌/脱臭性能の優れた不織布の市場は大きいので、当初目標が実現すれば新産業創出への波及効果を期待できるが、基本的命題である「殺菌効果」が実証されず、その改善策も特定できていない現状では、新産業創出は困難である。
3 ) 評価のまとめ
 モデル化試験においては、肝心の「殺菌効果」の実証が充分でなく、改善対策案も説得力に乏しい面が有り、企業化は相当の道のりを要する。


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This page updated on May 19, 2004

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