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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 17 切削バイト用高純度cBN原料微粉末の合成技術の開発(H14-0083)

企業名 :トーメイダイヤ株式会社
研究者(研究機関名) :谷口 尚(独立行政法人 物質・材料研究機構 物質研究所超高圧グループ 主席研究員)

1 ) モデル化の概要および成果
 触媒を含まないcBN粒子は、cBN本来の硬さを有していることから、鉄系材料の高速切削加工用刃具の焼結原料として、大きな需要が見込まれている。この焼結原料用高純度cBN超微粒子を原料のhBNの衝撃破砕により得られる多数の格子欠陥を有するhBN粉末(a-BN)の高温・静的超高圧力処理により合成する新規プロセスの実用化を目指した。
 衝撃破砕により、格子欠陥の導入と同時にhBNがナノサイズのa-BN超微粉になることを、TEM観察ならびに比表面積値測定によって確認した。
 研究レベルではあるが、衝撃破砕したhBN粉末は、5.5GPa, 1800℃のHPHT処理によってほぼ100% cBNに転換することが物質・材料研究機構における実験によって確かめられた。このことからサブミクロンサイズの微粉が孤立粒子の形で得られないという課題が残っているものの、本技術がナノサイズのcBN微粉製造方法として大きな可能性を有していることが予想される。
 本事業における粉砕方法によって、比表面積値が300m2/gを超える微粉a-BNが得られ、ナノサイズcBN微粉合成の可能性もある。得られたcBNは高温領域におけるナノサイズの伝熱材料として、また鉄系材料用の超精密研磨剤としての新たな用途展開も期待できる。
※hBN:六方晶窒化ホウ素、cBN:立方晶窒化ホウ素、a-BN:非晶質窒化ホウ素、HPHT処理:高温高圧処理

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 実験は概ね計画通りに行われたが、hBNからcBNへの変換率が低く、当初目標の大量合成は未達成である。市販品に比した優位性は今後の研究に期待したい。
知的財産権等の発生
 研究成果の構成によっては、知的財産権に結びつく可能性もある。
企業化開発の可能性
 企業化には変換率を向上させる必要がある。また、市販品との性能の優位性確立に向けてのさらなる研究が求められる。
新産業、新事業創出の期待度
 精密加工に関する要求度は強く、重要であり、地道ではあるが期待される領域である。新事業創出には現行品と比べての性能の優位性の確立が必要である。
3 ) 評価のまとめ
 実験は概ね計画通りに実行されたが、hBNからcBNへの変換率が低く、目標量のcBNの合成は未達成である。企業化には変換率の向上とともに、市販品に比べての性能の優位性確立が必要である。精密加工に関する要求度は強く、地道ではあるが期待される領域であり、今後の研究が期待される。


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This page updated on May 19, 2004

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