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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 5 MgB超伝導線材の開発(H14-0034)

企業名 :株式会社 東京ワイヤー製作所
研究者(研究機関名) :腰塚 直己(財団法人 国際超電導産業技術研究センター 超電導工学研究所盛岡研究所 所長代理)

1 ) モデル化の概要および成果
 2001年初頭に発見された超伝導体MgB1)を用いた線材化の研究は、Bi系やY系の酸化物系高温超伝導体と比較して、結晶粒界における弱結合や結晶粒の配向化に留意する必要が少なく、製法が比較的簡単であることから、原料粉末を金属管に詰込んで成形加工する粉末封管(Powder-In-Tube:PIT)法を主流として、世界的に行われている。従来の超伝導材料であるNb系は、臨界温度Tcが低いため(NbTi=9K、Nb3Sn=18K)、冷却に高価な液体ヘリウム(4.2K)を用いなければならないが、MgBは臨界温度Tc=39Kと高いので、臨界電流特性に優れた線材を開発することによって、冷凍機や液体水素によって容易に達成できる20Kという動作温度で比較的強い磁界(1~2T)を発生するマグネットや低磁界で大電流を流せる導体が実現可能となる。本課題ではMg、BあるいはMgB粉末に、超電導工学研究所の研究2)により明らかになった焼結助材として有効なTiを添加し、その原料粉末を金型で固形状に圧粉成形を行い、銅、ステンレス鋼などの金属管に封管した試料をPIT法で線材化を行うと共に、工程途中に中間熱処理工程を設け、塑性加工と熱処理を繰り返し行った。その結果、銅、ステンレス鋼のそれぞれのシースで温度20K、自己磁界で臨界電流密度Jc=124~212kA/cm2(4.2K、0Tで400kA/cm2)の特性を有するMgB2線材10mを作製した。安定化材として優れているが従来は困難と言われていた銅を用いて高い特性を持つMgB2線材を開発できた。今後、この成果を実用化に結び付けたい。
1) J.Nagamatsu et al.: Nature 410, 63 (2001)    
2) Y.Zhao et al.: Appl.Phys.Lett. 79,1155 (2001)


2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 超伝導特性を有するMgB2線材10mの製作に成功しており、当初目標を達成している。
知的財産権等の発生
 一般的な生産方式であるが、細かな工夫には知的財産権等の発生が期待できる。権利化は困難であっても、生産技術としてのノウハウは確保できよう。
企業化開発の可能性
 100mに長尺化すると企業化できるとしているが、企業化には長尺化、多芯化、超伝導コイル化が必要であり、製造法の開発にはかなりのブレークスルーと努力が必要と思われる。
新産業、新事業創出の期待度
 超電導は期待できる分野であり、高性能、低コストが達成されれば、新事業創出の期待度は大きい。品質・コスト面で競合する他の超電導線材メーカーに対する競争力が求められる。
3 ) 評価のまとめ
 目標である超伝導特性を有するMgB線材10mの製作は達成された。企業化には長尺化、多芯化、超伝導コイル化が必要であり、製造法開発にかなりのブレークスルーと努力が必要と思われ、時間が掛かりそうである。超電導は期待できる分野であり、高性能低価格が実現出来れば、新事業創出の期待は大きい。課題解決に向けての迅速な取組みが望まれる。


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This page updated on May 19, 2004

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