報告書 > 評価結果(2)研究開発課題の個別評価

研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 6 炎症性腸疾患での「白血球-血小板複合体」検査薬の開発(H14-0035)

企業名 :株式会社 日本抗体研究所
研究者(研究機関名) :日比 紀文(慶應義塾大学 医学部内科学 教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患(IBD)は、腸管に原因不明の炎症を繰り返す難病で、厚生労働省から特性疾患に指定されている。IBDの治療では強い副作用を有するステロイド系抗炎症剤などの薬剤治療や、厳しい食事制限を伴う食事療法、または患部を切除する外科的治療などが実施されている。しかし、これらの治療法は根本治療ではなく、症状を軽減する対症的な治療法であることから、患者は生涯にわたり疾患と向き合っていかねばならない。IBD治療では副作用が少なく安全性と有効性の高い治療法の確立が切望されており、さらに適切な治療法を選択するための患者病状を的確に反映する指標が重要となってきている。本モデル化においてはIBD患者の末梢血に、白血球(好中球や単球)と血小板が結合した「白血球-血小板複合体」が増加することに着目し、測定試薬の開発とIBDの新たな病態・炎症マーカーとしての「白血球-血小板複合体」の有用性について調査を試みた。その結果、IBD患者の末梢血には、健常者に比べて、白血球-血小板複合体が明らかに増加していることが確認され、薬剤投与の少ない患者の症状との関連性も示唆されるデータが得られた。「白血球-血小板複合体」は、動脈硬化や敗血症などの血管への障害が観察される疾患の患者末梢血でも増加していることが報告されており、他の疾患における適用も考えられる。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 キット作製に必要な抗体の組合せの決定と炎症性腸疾患患者の血液に白血球・血小板複合体の増加を確認しており、モデル化の目標は、ほぼ達成されたと考えられる。
知的財産権等の発生
 現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。
企業化開発の可能性
 採血条件および採血後の血液保存条件の最適化が図れれば、炎症性腸疾患患者用検査薬としての新市場は期待できそうである。
新産業、新事業創出の期待度
 炎症の如何なる要因によって白血球-血小板複合体の増加が制御されるかが判明すれば、他の炎症性疾患にも応用の可能性がある。また、血管障害による循環器系疾患にも応用が期待される。
3 ) 評価のまとめ
 炎症性腸疾患の検査薬としての基本的な構成はできたと考えられるが、キット化するには更に若干の条件検討が必要である。


一覧に戻る 次へ

目次に戻る


This page updated on May 19, 2004

Copyright©2004 Japan Science and Technology Agency.