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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 3 高圧下で穴があいても漏れない遮水シートと製造法の開発(H14-0005)

企業名 :鹿島エレクトロ産業株式会社
研究者(研究機関名) :長屋 幸助(群馬大学 工学部機械システム工学科 教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 産業廃棄物最終処分場では廃棄物に含まれる危険物質が雨水等により漏れ出す恐れがある。そこで現在、対策として穴が開かないシートを用いて地面と廃棄物の間に遮水層を作っている。しかし、この方法では万一穴が開いた場合、漏水を完全に遮断できないという問題点がある。そこで、粘土層を用いた自己修復機能を有する処分場も提案されているが、工事に費用がかかり、修復までの時間がかかっていた。本開発では、仮にシートが破れても自己修復を瞬時に行う水の漏れない自己修復遮水シートの開発とその製造法の確立を目的とする。敷設工事には従来工法が使用でき、経済的である。具体的には、ゴムシートに高分子吸収体(吸水ポリマー)を挟み込み、その膨張機能に注目し、その圧力により穴の部分を短時間で修復する。このシートが実用化された場合、建築資材やトンネル工事など漏水の関係する様々な場所においても用いることができると考える。
 研究室レベルではこのシートを手作業で作っていたが、生産性および生産コストの面において大きな問題があり実用的でない。そこで、高生産性、低コスト化を実現するために、このシートの生産ラインを提案した。生産ラインは作業台、連続接着装置、冷却装置、切断機、巻取り装置からなり、作業台においてセッティングされた材料が連続接着装置で、加圧および加熱され遮水シートが作成される。この作成されたシートが冷却装置を通り冷却され、その後切断機で端面および幅を整形され巻取り装置によって巻き取られる。このとき各装置において加熱温度、圧着圧、送り速度、巻取り速度およびシートの幅は調整可能となっている。
 以上のような遮水シートの開発およびその製造方法を確立することに成功した。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 遮水シートの製作というモデル化の目標はほぼ達成された。基礎研究成果から予想される結果が得られた。しかし、今後の商品化には、これまで以上の開発努力が必要と感じる。
知的財産権等の発生
 新たな知的所有権は発生しなかったが、これは順調に予想通りの結果が得られたためで、実用化が更に近づけば、新たな特許も出てくるであろう。
企業化開発の可能性
 企業化の可能性は近づいているが、今後実用化試験により、運転条件や生産体制の最適化を図るとともに、ユーザーからのサンプル提供依頼に応じ、実用化への問題解決へ進むべきと考える。
新産業、新事業創出の期待度
 現在すでに数社からのサンプル提供依頼がきており、「廃棄物最終処分地」のみならず、屋上防水、池、プール、風呂場の水回りの防水シートとして広い用途でのニーズがあり、新産業創出が期待できる。
3 ) 評価のまとめ
 当初から本課題は、シートと格子上下面間の煩雑な接着の廉価で確実な量産達成を前提として評価したものであり、接着にミシン掛けが必要であるとすれば、未解決の問題が残っているといえる。実用化に向けて問題点の集約とその対策のための研究を続け、商品を完成させることを望む。


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This page updated on May 19, 2004

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