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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 1 遺伝子導入による新規機能花卉園芸植物の開発(H14-0002)

企業名 :株式会社 赤平花卉園芸振興公社
研究者(研究機関名) :堀川 洋(帯広畜産大学 畜産学部 作物科学講座 教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 国内外の洋ラン生産業者にとって、糸状菌病害による生産ロスは育成株中の40~50%を占めている。病害防除の農薬投入量は単位面積あたり水稲の約10倍であるが、その効果は充分でないため根本的解決策として耐病性品種の開発が要望されている。しかしコチョウランの近縁種に遺伝子がないため、従来の交配育種法では品種改良が行えなかった。
 そこで、病害菌糸の細胞壁を構成しているキチン質を分解するキチナーゼ酵素遺伝子をパーティクルガン法を用いてコチョウラン細胞に導入し、堀川等の開発した磁力選抜法(特開:2000‐232879)を用いて遺伝子導入細胞を高率に選抜することによって、耐病性コチョウランの作出を試みた。遺伝子導入には、プロトコーム(ラン植物特有の幼植物体)、未熟種子、PLB(プロトコーム様小球体)を用いた。その結果、試作した幼植物をPCR分析することで、キチナーゼ遺伝子が導入された個体を確認した。その他、本技術の花粉への応用や遺伝子導入細胞の種類、遺伝子導入時のパラメータについての検討も行い、実用化(商品化)へ向けて必要な成果を得ることができた。糸状菌耐性コチョウランは国内外の生産者ニーズに応えるものである。
 最近、ニーズの多様化により商品の寿命が短くなっているが、現状では多大な開発コストをかけることができない。今回のモデル化技術は、短期間に効率よく遺伝子組換え園芸品種を作出することが可能であり、従来の品種改良法を刷新するものである。将来、国内外の園芸業界をリードできるよう、さらに研究開発を進めて行く。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 キチナーゼ遺伝子を導入したコチョウランの耐病性実証試験の実施までには至っていないが、PLBに対しては当該遺伝子の導入が確認され、また花粉に当該遺伝子を導入し、受粉により得られた種子にも遺伝子が導入されており、今後の開発の基盤整備は、ほぼ達成されたと考えられる。
知的財産権等の発生
 現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。
企業化開発の可能性
 コチョウランに導入された前記遺伝子が目標通り発現し、耐病性が確認できれば企業化の可能性はある。報告者が有力視している花粉ベクターと遺伝子導入細胞の磁力選抜法との併用が他の方法より優位性があることを期待する。
新産業、新事業創出の期待度
 この技術が将来幅広い植物で標準化されれば、ある程度の事業規模に発展する可能性はある。
3 ) 評価のまとめ
 コチョウランのキチナーゼ遺伝子導入は、PLB、花粉および受粉種子に対して成功しており、モデル化は完結していないが、目標に沿った成果は得られている。導入された遺伝子の発現と、導入個体の耐病性が確認できれば企業化の可能性がある。


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This page updated on May 19, 2004

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