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科学技術振興機構報 第526号

平成20年6月17日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報課)
URL http://www.jst.go.jp

画像歪を解消した「小動物用高解像度・定量SPECT装置」を開発

(JST大学発ベンチャー創出推進により企業を設立)

 JST(理事長 北澤 宏一)は産学連携事業の一環として、大学・公的研究機関などの研究成果をもとにした起業のための研究開発を推進しています。
 平成17年度に開始した研究開発課題「高解像度分子機能イメージング装置」では、高解像度かつ定量性がある小動物用SPECT注1)装置の試作に成功しました。また、この成果をもとに平成20年5月2日、メンバーらが出資して「株式会社 プロスペクト」を設立しました。
 SPECTは、脳・心筋の血流量やがんの骨転移などをイメージングする画像診断装置です。PET注2)よりも設備投資が低く抑えられ、装置を使う際に用いる放射性医薬品(トレーサー)の種類が多くある反面、PETに比べて「解像度が劣る(低解像度)」ことや、「定量性が劣る(画像の歪み)」ことが問題点とされていました。
 本研究開発チームでは、拡大撮像可能なピンホールSPECTにおける画像歪の問題を、撮像軌道の改良と立体的画像再構成理論を導入することで解決しました。今後は、ヒト用新規高解像度・定量SPECT装置と関連ソフトウェアの開発・実用化を目指します。特に、獣医療分野において核医学検査注3)が認可される動きがあることから、中小動物(イヌ・ネコ)用の検査装置までを視野に入れた製品化開発を進め、事業化後3年で2億6000万円の売り上げを目指します。
 今回の「株式会社 プロスペクト」設立により、プレベンチャー企業および大学発ベンチャー創出推進によって設立したベンチャー企業数は、69社となりました。

 今回の企業の設立は、以下の事業の研究開発成果によるものです。
 独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進
研究開発課題 「高解像度分子機能イメージング装置」
開発代表者 飯田 秀博(国立循環器病センター研究所 放射線医学部部長)
起業家 武蔵 康文
研究開発期間 平成17〜19年
 独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進では、大学・公的研究機関などの研究成果をもとにした起業および事業展開に必要な研究開発を推進することにより、イノベーションの原動力となるような強い成長力を有する大学発ベンチャーが創出され、これを通じて大学などの研究成果の社会・経済への還元を推進することを目的としています。

<開発の背景>

 SPECTは、脳・心筋の血流量や癌の骨転移などをイメージングする画像診断装置です。PETと同様に放射性医薬品(トレーサー)を静脈より注射して、その医薬品が発する放射線を検出し、トレーサーの体内分布画像を得ることで、臓器や組織の血流や代謝といった生理機能が評価できるため、脳や心臓の疾患および癌などの診断に活用されています。
 PETとSPECTは用いる放射性医薬品の違いにより、その用途は異なっています。PETは主にがんの早期診断に有効性を発揮しており、SPECTは脳・心臓の血流量の診断に用いられ、脳梗塞や心筋梗塞の診断や早期発見に役立てられています。がん・心疾患・脳血管疾患が死因の6割以上を占めている近年の日本においては今後、高齢化社会が進む中につれて脳梗塞や心筋梗塞の患者数はさらに増加し、今後もこれらの検査装置のニーズは高まっていくと考えられています。現在、SPECTはPETよりも設備投資が低く抑えられることや、使用可能なトレーサーが多いことから、国内においてはPETの10倍以上の台数が導入され、日々の診療に役立てられています。しかし、PETに比べて「解像度が劣る(低解像度)」ことや、「定量性が劣る(画像の歪み)」ことが問題点とされていました。

<研究開発の内容>

 本研究開発チームは、「複数検出器で得られた撮像データを立体的に画像再構成するプログラム」と「画像処理システム一式」を開発しました。具体的には、拡大撮像可能なピンホールSPECTにおける画像歪の問題を、撮像軌道の改良と立体的画像再構成理論を導入することで解決し、高解像度かつ定量性能を持つ小動物用SPECTの試作に成功しました。さらに、歪みのない正確な画像を再構成できるプログラムを開発したことで、ヒトのような大きな被写体であっても高解像度かつ定量性能を持つSPECTが実現可能であることも明らかとなりました。今後は撮像対象を拡大(イヌ・ネコなどの中小動物からヒト)して、製品化開発を進める予定です。

<今後の事業展開>

 株式会社 プロスペクトでは、既存SPECTの弱みであった「低解像度」や「画像の歪み」といった問題点を解消した新規高解像度SPECTを開発し、事業化します。すでにラットなどに利用可能な「小動物用高解像度SPECT」の試作による技術的蓄積があるため、それらをもとに「ヒト用高解像度SPECTの事業化」を目指します。
 最終的な目標はヒト用臨床SPECTの開発ですが、開発の過程で試作する「中小動物(イヌ・ネコ)用高解像度SPECT」を効果的にプロモーションに活用していきます。具体的には、今後ペット向けの核医学検査が認可される方向であることから、当事業で開発した中小動物(イヌ・ネコ)用高解像度SPECTを「ペット向け核医学検査市場」に投入することで、新SPECTの特徴をプロモーションし、ヒト用SPECT製品化のためのパートナー企業を募る計画です。ヒト用臨床SPECTの事業化に当たっては大手医療装置メーカーとの連携が必要なため、当面はマーケティングやアライアンス活動に注力していきます。

<製品例・実施例>

1.中小動物用高解像度SPECT
 放射性薬剤を投与された実験小動物から比較的大きな被写体(イヌやネコ)を対象に体内放射能濃度分布を正確に画像化する高解像度SPECTです。心筋および脳血流量、血管反応性の評価が可能です。さらに血流量を自動で算出できるソフトウェアを組み込んでいるため、「核医学検査の読影経験がない獣医師でも活用可能な装置」であることが大きな特徴です。

2.ヒト用部位特化型高解像度SPECT
 ヒトの脳や心臓(心筋)を対象に体内の放射性薬剤の分布を非侵襲的に撮像するための高解像度SPECTです。局所の空間解像度を既存装置の5倍以上上昇させたうえ、定量的な画像撮像が可能となっている点が特徴で、心筋および脳血流量、血管反応性の評価が可能です。脳の微細構造領域や血管プラークなどの超高解像度イメージングを実現します。


<用語説明>
参考:<企業概要・事業形態>

<お問い合わせ先>

株式会社 プロスペクト
〒564-0053 大阪府吹田市江の木町13番9号 第6マイダビル505
吉田 洋一(ヨシダ ヨウイチ)
Tel: 06-6339-0076 Fax: 06-6339-0076
E-mail:

独立行政法人 科学技術振興機構 産学連携事業部 技術展開部 新規事業創出課
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中村 武広(ナカムラ タケヒロ)、浅野 保(アサノ タモツ)
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